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ソニーのXperia 10 VIIは高い!キャリアでは「ミドルレンジ」なのに8万円超えの理由を紐解く

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 ソニーの最新スマートフォン「Xperia 10 VII」が登場した。直販モデルの価格は74,800円(税込)。もともとXperia 10シリーズは「中価格帯」を担うミッドレンジモデルとして位置付けられてきたが、この価格設定はすでに“お手頃”とは言いがたい水準だ。さらにキャリア版となると、ドコモで82,720円、ソフトバンクでは88,560円と、実質的にハイエンドスマホに迫る価格帯となっている。

目次

Xperia 10 VIIはスペックで見劣りする「高級ミッドレンジスマホ」なのか

 7.5万円と高価になったXperia 10 VIIだが、価格に見合うだけの中身が備わっているかどうかも重要だ。Xperia 10 VIIの主なスペックは以下のとおり

SoC:Snapdragon 6 Gen 3
メモリ:8GB
ストレージ:128GB(microSDカード対応)

ディスプレイ:6.1型有機EL
FHD+解像度(19.5:9比率)
120Hzリフレッシュレート

カメラ:5000万画素(1/1.56型)、超広角:1200万画素、インカメラ:1200万画素

バッテリー:5000mAh

アップデート保証:OS4回、セキュリティ6年間

デザインの刷新など、大きな転換点を迎えたXperia 10 VII

 確かにmicroSDカード対応やイヤホンジャック搭載といった「日本市場で根強いニーズ」に応える仕様は強みだ。しかし、競合の多い2025年のスマホ市場において、Snapdragon 6 Gen 3プロセッサ、メモリ8GB、ストレージ128GBの構成は明らかに見劣りする。

 たとえば、同価格帯で販売されている海外メーカーのスマホを見れば、MediaTek Dimensity 8350やSnapdragon 8s Gen 4を搭載し、メモリも12GB、ストレージ256GB以上を標準とするモデルが数多く存在する。

 競合するスマートフォンは日系だとFCNTのarrows Alpha(8万8800円)となる。こちらはXperiaより高価になるが、より高性能なDimensity 8350 Extremeプロセッサを採用し、ストレージ容量は4倍の512GBに加えSDカードにも対応。

 カメラはメイン、超広角共に5000万画素とXperiaよりも高性能な上に。IP69等級のより高い防水防塵性能、対衝撃性能を備える。セキュリティアップデートも5年間行われる。

 後述するキャリア版の価格設定を踏まえると、国内メーカーということもあり、最もライバルに近い端末だと考える。

Xperia 10 VIIのライバルはarrows Alphaが有力だ

 唯一ソフトウェアアップデートの提供期間についてはXperia 10 VIIがOSアップデートを4回、6年間のセキュリティアップデートを提供する点で優位。それでも、競合よりも低い性能の機種を長く使い続けることは、今後のユーザー体験的を踏まえても厳しいと考える。

 中国勢ではXiaomiやOPPOもより高性能な端末を5〜6万円台で展開している中、Xperia 10 VIIのスペック明らかにワンランク落ちる。この価格に対するギャップはユーザーにとって大きな違和感となるはずだ。

Xperiaは今回、カメラ性能を大きく進化させたが、競合他社も進化を続けている

8万円台とさらに高価なキャリア版。実質価格のお得感も薄い

 直販モデルも7万円台と高価になったが、キャリア版は8万円の大台を超えてきた。ドコモで82,720円、ソフトバンクでは88,560円と、実質的にハイエンドスマホに迫る価格設定だ。そんなキャリアモデルの価格が高額化する背景には、いくつかの要因が考えられる。

 まず、通信バンドやキャリア仕様の対応といった技術的な調整だ。キャリア固有の機能に合わせるための開発コストは確かに存在する。これに合わせる関係から、日本での発売が海外から1ヶ月程度遅れているものと思われる。

 それだけで1〜1.5万円もの差を説明するのは難しい。大きいのは流通構造の違いだろう。キャリア販売では販売店への手数料やプロモーションコスト、そして分割払い・返却プログラムといった“実質価格”を演出するための仕組みが存在する。

 その結果、表向きの本体価格は高めに設定される傾向がある。高価格を提示してから割引で下げるほうが「お得感」を演出しやすいという戦略的な理由もありそうだ。

 ドコモは2年後にキャリアへ返却することで実質負担額は5万7640円、ソフトバンクでは1年後に返却することで実質5万5560円としている。

 それでもお得感はiPhoneやGalaxy、Pixelシリーズよりも薄く、ソフトバンクでは実質価格でもPixel 10などより高価な設定となっている。

ドコモ向けは8万2720円だが、キャリアへの返却前提で5万円台で利用できる

 比較のため海外市場を見てみると、香港での公式価格はHK$3,299(約6.5万円)に設定されており、これに日本の消費税を加味しても7万2000円ほどで日本よりも安い。

香港では3299香港ドル。香港ではHONORやXiaomiなどの競合がよりひしめくので、厳しい価格設定だ

長期のOSアップデートで“高級志向”を演出しているものの、今後の動作感には不安も

 もともと、Xperiaは供給地域が限られる機種であり、日本以外では台湾、香港が主戦場だ。これはサムスンやXiaomiと比較すると生産数が少ないことから「大量仕入れによる原価を抑える」部分でどうしても原価圧縮ができていないとされている。

 加えてイヤホンジャックやSDカードスロット、ノッチレスディスプレイといった今となっては少数派が備える要素を持ち合わせていることもあり、競合と比較して「高コスト体質」なスマートフォンであることは確かであり、それが端末価格に反映されている部分も大きい。

 ソニーはこうした性能面での見劣り、高コスト体質で価格を抑えられないマイナス分を、OS Xアップデートを含めた「長期サポート」という付加価値で補おうとしている。OSアップデートを4回、セキュリティ更新を6年間提供することは、確かに安心感のある訴求だ。ミドルレンジ機でここまでのサポート期間を掲げるメーカーは多くなく、長期的に使いたいユーザーにとっては魅力的な要素となる。

 しかし、長期のOSアップデートはあくまで「安心して使い続けられる」ことの保証であり、性能不足そのものを覆すものではない。Xperia 1シリーズのようなハイエンド機なら5年後でもまだ安心して使えると思うが、ミッドレンジの性能で5年後も快適かと問われると厳しいものと思われる。

 今後は生成AIを用いたサービスが当たり前になり、当たり前のようにオンデバイスAIが使われることになることを考えると、プロセッサのAI性能の低い機種を長く使うのは厳しさを感じられる。

Pixelをはじめ、オンデバイスAIを用いたサービスをアピールするスマートフォンも登場している

Xperiaユーザーなら“高級ミドル”を選んでくれるか

 Xperia 10 VIIは、SDカードやイヤホンジャック対応という既存ユーザーに応える要素や、6年ものセキュリティアップデートという長期サポートといったユニークな魅力を備えている。

 しかし、競合が激しいミドルレンジのスマートフォン市場では7万円オーバーの価格でSnapdragon 6 Gen 3プロセッサ、8GB/128GBという構成は明らかに物足りない。しかも日本価格は香港より高く、キャリア版ではさらに割高だ。

 結果として、「中身は4〜5万円クラス、価格はハイエンドに近い」というアンバランスな立ち位置に置かれている。ソニーの戦略は安心して使える「高級志向のミドルレンジ」を打ち出すことかもしれないが、既存ユーザーがその路線を受け入れるかどうかは未知数だ。

 国内ブランドではFCNT(旧富士通)のarrowsが存在感を示しており、レノボ傘下に入ったことで性能的にも、価格的にもかなり攻めた設定の機種を展開するようになった。

 今後登場が見込まれるAQUOSのミッドレンジモデルも日本で存在感を示す注目モデルであり、これらの機種と真っ当に勝負できるとは思えないのが現状である。

 デザインやコンセプトの刷新で新たな客層へのアピールを行うXperiaだが、フラグシップのXperia 1 VIIをはじめ競合製品と比較すると高価な価格設定であることは否めない。今のままでは、Xperiaブランドを支持する層以外に広がりを見せるのは難しいだろう。

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