「スマホ代、また上がった」円安・ドル高・人民元高が重なる今、値上げが止まらない理由

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 スマートフォンを買い替えようとして、価格を見て驚いた経験はないだろうか。数年前なら10万円台だったフラッグシップが、今や15万円を超え、20万円に届こうとしている。

 よく「円安のせい」という説明は聞くが、実際のところどれほどの影響があるのか。そして今後の値上げは本当に避けられないのか、あらためて整理しておきたい。

目次

ドル建て取引が生む「静かな値上げの圧力」

 2026年3月16日時点でドル円レートは159.6円前後で推移している。160円にタッチしそうな状況で、1年前の140円台半ばと比較すると、1ドルの購入に必要な円が約15円増えた計算だ。

 スマートフォンのコスト構造において、最も重要なのはSoCなどの半導体部品の調達価格だ。QualcommのSnapdragonシリーズをはじめ、主要な半導体製品はドル建てで取引される。例えばメーカーが100ドルで仕入れていたチップが、為替だけで14500円から15960円(約1500円アップ)になる。

 これが積み重なれば、スマートフォン1台あたりの原価ベースでのコスト増は数千円規模に達する。これは「台数で勝負」するミッドレンジも影響を避けられない。

 さらにここへ、製造プロセスそのものの高コスト化が重なる。次世代フラッグシップに採用を見込む2nmプロセスのチップは、現行の3〜4nmと比べてウェハあたりの製造コストが大幅に上昇すると言われており、TSMCをはじめとするファウンドリーが設備投資を回収するために単価を引き上げることは既定路線だ。

Snapdragonの8シリーズはより高価になると予測される


 加えて、AI機能の搭載が加速したことで、大容量・高速メモリ(LPDDR5XやHBM)の需要が急騰しており、スマホ向けも含めてメモリ価格の押し上げ要因になっている。端的に言えば、円安とは別軸でも「部品コスト」が膨らみ続けている。

 メーカーはその分をすぐ価格に転嫁するわけではなく、ある程度は自社の利益率を削ったり、為替予約(ヘッジ)でリスクを軽減したりする。しかし円安が一時的なものでなく「構造的な現象」として定着してしまうと、ヘッジ期間が終わるたびに値上げの波が押し寄せてくる。現状はまさにそのサイクルに入っている。

見落とされがちな「人民元高のリスク」

 ドル円だけを見ていると、もう一方の重要なコスト軸を見落とすことになる。それが中国の人民元(CNY)だ。

 2026年3月16日時点で1人民元は約23.1円で取引されている。過去1年でCNY/JPYは12.8%上昇しており、円に対して人民元が大幅に強くなっている。

 これがスマートフォン市場に直撃する理由は明快だ。XiaomiやOPPOをはじめとする中国メーカーは、製造コストを人民元ベースで管理している。円安・人民元高が進むと、日本向けに製品を輸出するコストが実質的に上がる。これまで「コスパが高い」と評価されてきた中国スマホの競争力は、為替という見えないコストによって静かに削られている。

 筆者は中国スマホを頻繁に取り上げるが、正直に言えば「この価格水準は長続きしない」と感じている。4万円台で十分な性能を実現していたミドルレンジが、今後は6万円台に届いても不思議ではない。

 既に中国国内向け製品でも性能向上とともに後継機種の価格も100元単位で値上げする例は少なくなく、安価でも発売から期間限定の価格設定としている例も多い。

アッパーミドルのvivo S50シリーズも3700元(8万5000円)値上げへ。ジリジリと上がっている

 また、中国メーカー以外でも、スマートフォン本体や部品を中国で製造、組み立てすることは少なくない。以前は人件費が安価な製造先とされてきた中国も、物価上昇・人件費の高騰によって以前ほどの強みは生かせなくなっている。ここで対人民元とも為替的に不利となれば、値上げは避けられないだろう。

それでは、スマホの値上げは「確実」なのか

 スマホの値上げについて、短期的には各社が価格競争を維持するために価格を維持する可能性もある。特に中国メーカーは日本市場でのシェア獲得を目指しており、値上げによってユーザー離れが起きることを恐れている。

 実際、XiaomiはフラグシップのXiaomi 17 Ultraの日本向け価格を昨年の同型機から値上げしたものの、19万9800円とぎりぎり20万円以下に抑えた。なお、グローバル発表時に明かされたEU向け価格は据え置きの1499ユーロだった。

日本向けは値上げとなったが、欧州向けは据え置きだ

 しかし中長期的に見ると、スマートフォンの値上げは避けられないと筆者は考える。理由は三つある。

 第一に、円安は構造的な問題だ。日米の金利差が正常に縮まらない限り、ドル円が急激に円高に戻ることは考えにくい。

 第二に、人件費・物流費・関税コストも年々上昇しており、為替だけで説明できるコスト増ではなくなっている。特に物流コストは中東情勢の悪化による燃料費高騰の関係で、今後も上昇すると見込まれる。

 第三に、Appleやサムスン、Googleのスマートフォンが日本向け価格を実質的に引き上げ続けているという既成事実が、市場全体の価格感覚を押し上げている。

 特にGalaxy S26シリーズの価格は印象的で、最上位のUltraは標準構成でも初の20万円の大台を超え、21万円台の設定としてきた。背景には為替変動に加え、メモリ高騰による製造コスト増があるとしている。

Galaxy S26 Ultraは直販価格で21万円台と高価になった

消費者はスマホを選び方を考える必要が出てきそう。今できることとは

 スマートフォンの値上げはこのままの状況が続く場合、簡単に止めることはできない。一方で、スマートフォンの買い方は変えられる。

 まず見直したいのが、「最新世代にこだわらない」という選択肢だ。現在のスマートフォンは処理性能・カメラ・バッテリー寿命いずれも成熟の域に達しており、一世代前のフラッグシップでも日常用途で不満を感じる場面はほとんどない。

 例えば2024年モデルのSnapdragon 8 Gen 3世代の端末は今なお十分すぎる性能を持ち、値下がりした旧モデルを狙うことは賢明な選択と言えるだろう。近年の機種はソフトウェアアップデートも長期化されており、以前ほど型落ちを買って損をする場面も少なくなってきている。

 また、メーカーも最新機能を使える廉価な選択肢を用意している。AppleはiPhone 17e、サムスンはFEシリーズ、Xiaomiはオンライン販売が主のPOCOブランドがそのラインだ。

iPhone 17eは9万9800円と最新iPhoneながら10万円以下に抑えてきた。なお、米国向け価格は599ドル

 また、国内の通信キャリアが提供する残価設定型の購入プログラムも見逃せない。2年後の下取り価格をあらかじめ設定しておき、その分を差し引いた金額だけを分割払いする仕組みで、高額なフラッグシップでも月々の負担を抑えられる。為替や部品コスト高騰で本体価格が上がり続けるなかで、こうしたプログラムを活用することは現実的な対応策のひとつだ。

ソフトバンクのiPhone 17e。直販よりも高価だが、MNPで乗り換えた場合、2年間はかなりお得に利用できる

 スマートフォンの価格は、もはや性能や機能だけで決まらない。円の価値、人件費や輸送コスト、半導体の製造コスト、AIがもたらすメモリ需要。そのすべてが値札に折り込まれることを、消費者の我々は頭の片隅に入れなければならない。

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