最新のPixel 10 Pro Foldでも改善せず。Tensor G5が示すゲーミング性能の限界

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 Google Pixelシリーズは高性能なカメラやキャッチーなAI機能などで、高い評価を得てきた一方、ゲーミング性能においては常に課題を抱えている。特に最新のPixel 10シリーズでは、独自のSoC(Tensor G5)とPowerVR GPUまわりの最適化不足が顕著で、ゲームベンダーから「動作を保証できない」「正常に動作しない」と公表されている。

 今回、遅れて10月9日に発売となったPixel 10 Pro Foldによって再度浮き彫りになったこの問題。もう一度おさらいしておこう。

目次

Pixel 10シリーズがゲームに「不向き」な理由。特殊GPUと最適化不足がネック

 Pixel 10シリーズでゲームが不向きという声を見かける理由に、Tensor G5で採用したPowerVR GPUという選択が裏目に出ているようだ。Pixel 10シリーズに採用されるTensor G5は、従来のARM Mali系GPUではなく、昨今のスマートフォン市場で採用例の少ないImagination PowerVR系GPUを新たに採用した。

 採用したGPUは現行モデルの「PowerVR DXT48-1536」となっており、理論値性能はFP32の条件で1.5TFLOPSの性能を持つ。数値的には特別高いわけでもないが、昨今の8万円前後で販売されているミッドレンジスマホくらいの性能は持ち合わせているようだ。

 それでもゲームに不向きな状態となっている理由にGPUドライバーの最適化不足があるとされる。これにより、Googleもゲーム向け最適化が間に合わず、描画負荷の高いシーンでフレームレートが急落したり、処理落ちする理由と考える。特にGPUの定格クロックが保守的な設定にされており、現時点ではパフォーマンスを引き出し切れていないとされている。

独自プロセッサ「Tensor G5」を採用する

 もうひとつはアプリ、コンテンツ側の対応遅れもある。高負荷な3D表現を多用するゲームはUnityやUnreal Engineをはじめとした主要ゲームエンジンで開発されていることが多い。これらを用いて開発されているコンテンツの多くがQualcomm Adreno GPU前提で最適化されてる。まだ採用数のあるARM Maliならさておき、事実上Pixel 10シリーズ意外のハイエンド帯に採用例のないらPowerVRの対応はさらに後回しとなっている。

 また、原神はPowerVR GPUへの非対応を正式に表明しており、学園アイドルマスターも現状発生している描画エラーについて「Pixel 10シリーズ以外の環境なら発生しない」と表明するなど、ゲームベンダー側の対応もかなり後手になっている。

学マスはPixel 10では正常に描写できない場面があると公表している

発売から2ヶ月、アップデート後も改善せず。フレームレート低下が続く現状

 今回はPixel 10 Pro Foldと同じSoCを採用するPixel 10 Proでいくつかゲームを実際に遊んでみた。例えば『原神』は高画質 60fps設定でもわずか15分で30fps前後まで急落した。マップを駆け回る序盤こそ最高画質でも50fps前後を保っていたが、10分もすると30fps以下まで一気に低下する。冷却性能で劣る小型筐体では厳しいようだ。

 また、複数のエフェクトが重なる戦闘では操作と画面の反応がずれる。元素爆発(必殺技)といった高負荷なシーンが重なる場面では、端末がフリーズするような挙動もみられた。

原神は画質を落とさないと厳しかった。『これが新基準のプロレベル。』なのだろうか

 崩壊スターレイルは明らかに不安定と感じた。Pixel 9では高画質設定でも40〜45fpsを維持できた条件でも、Pixel 10 Proは30fpsを割り込むシーンが見られた。
 戦闘シーンでは明らかに動作が重たい場面があり、この部分だけはミッドレンジスマートフォンと大差ない動作感にまでパフォーマンスが低下する。特にキャストリスというキャラクターの必殺技はかなり処理が重たく、処理落ちで音声にノイズが入ることもあった。

そのまさにキャストリスの必殺技。フレームレートが30を下回る

 正直なところ、Pixel 10 Proにも発売以降幾度かパフォーマンスやセキュリティ改善のアップデートが提供されているものの、ゲームパフォーマンスは一向に改善していない。

 今回、後出しとなったPixel 10 Pro Foldでも「ゲームがまともに動かない」という意見が噴出していることから、Google側のドライバ最適化もされていないことがわかる。

26万円のスマホとしては厳しい。Pixelが目指すべき“最低限の完成度”とは

 Pixel 10 Pro Foldの販売価格は26万7840円からの設定。これはGalaxy Z Fold7などのSnapdragon 8 Eliteを搭載する折りたたみスマホと並ぶ。このラインは利用者が「あらゆる用途で妥協のない性能」を期待する水準だ。

 たとえGoogleがPixelをゲーミングに不向きなスマホとして打ち出していても、「ゲームが不向きでも最低限は動く」ことはプレミアムな高価格帯スマホの当然の責務である。

 ましてや20万を超える折りたたみスマホも各社「ハイエンド性能」をアピールしており、冷却性能などで劣っても基本的に性能が低いということは許されない。いくらPixel 10 Pro Foldが世界初のIP68等級の防水防塵を備えていても、ここを付加価値を感じられる方は少ないと考える。

 仮に性能が低くても卓越したユーザー体験を求めるなら、中国国内のファーウェイくらいの大きな付加価値がないと性能不足を補うことは難しいと考える。

性能が低くても卓越したユーザー体験でデメリットをプラスにするファーウェイのスマートフォン

 Googleには発売時点から最低ラインをクリアするチューニングはもちろん、新GPU向けドライバーの迅速な最適化を確実に行った上で製品を出してほしいと感じた。ましてや8月に先行してPixel 10シリーズを発売しているのだから、よりプレミアムなPixel 10 Pro Foldの発売までには対応して欲しい部分もあった。

 最後になるが、ユーザーはPixel 10シリーズという端末に高額な代金を支払っている。「アップデートでいずれ改善するはず」ではなく、初期状態から安心して選べる完成度こそが求められていると考える。

Pixel 10 Pro Foldは決して安いスマホじゃない
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