折りたたみスマートフォンは、実用性はもとより、ハードウェアでは画面の耐久性やヒンジ構造、重さ・厚さといった課題との戦いが続いている。
そんな中、OPPOが送り出した最新モデル「Find N5」は、これまでの常識を覆す「薄さ」を武器にした革新的な端末だった。今回は実際に手にしてから4ヶ月使っての印象やスペック、日常での使い勝手をレビューしていく。
折りたたんで「8mm台」の衝撃。世界最薄の折りたたみスマホを試す
OPPO Find N5最大の魅力は、何と言ってもその薄さだ。閉じた状態で8.93mm、開いた状態では最薄部4.21mmという数字は、従来の折りたたみスマホの常識を大きく更新してきた。スペックは以下の通り
SoC: Snapdragon 8 Gen Elite
メモリ: 12/16GB(グローバル向けは12GB)
ストレージ: 256/512GB/1TB(グローバル向けは512GB)
ディスプレイ
カバーディスプレイ: 6.62型 2616×1140
メインディスプレイ: 8.12型 2480×2248
ピーク輝度: 2450ニト(カバーディスプレイ)2200ニト(メインディスプレイ) 120Hzリフレッシュレート対応
カメラ
メインカメラ: 5000万画素
超広角カメラ: 800万画素
3倍望遠カメラ: 5000万画素
フロントカメラ:800万画素(どちらのディスプレイも共通)
バッテリー: 5600mAh
80W急速充電、50Wワイヤレス充電
重量: 229g
OPPO Find N5を手に取ると「本当に折りたたみか?」と思うほどスリム。閉じた状態で8.93mm、開いた状態では最薄部4.21mmの薄型ボディはポケットへの収まりも良く、バッグの中でもかさばらない。発売当時は世界初の8mm台を達成した最薄の折りたたみスマホだっただけはある。




競合する折りたたみスマホと比較するとサイズ感は全く別物。一般的なスマートフォンとも「薄さ」で十分勝負できるところまで進化してきた印象だ。229gの重量もこの手のスマホとしては比較的軽量で、長時間片手で持ち続けても疲れにくく、薄さがそのまま日常の使い勝手向上に役立っていると感じた。
背面の仕上げも上質。背面はマット加工のガラスにより指紋や皮脂がつきにくい。ヒンジも小型化され、開閉は従来のFind N3と比較しても滑らか。ヒンジを任意の角度で固定する「フレックスモード」も安定しており、動画視聴やビデオ会議など幅広い使い方ができる。
メインディスプレイは8.12型。8型サイズの多い競合よりも一回り大きく、展開するとよりタブレットライクに使うことができる。開けば超軽量タブレット端末という印象。閉じてもヒンジ側の厚みを抑えており、端末の重心もセンターよりなことからホールド感も悪くない。

気になる画面の折り目は従来モデルよりも改善。角度によってはわずかに見えるものの、動画やゲーム中に気になることは少なく、指でなぞった感触もフラットに近い。画面自体も低反射処理によって晴天下でも視認性は良好だった。

カバーディスプレイは6.62型で通常のスマホと変わらないサイズ感で利用できる。実はこちらも競合する機種より少しだけ大きい。本機種はどちらもディスプレイも120Hzのリフレッシュレートに対応しておりで滑らかな表示が可能だ。

優秀なパフォーマンスとバッテリー持ち。IPX6、IPX9対応の防水性能がうれしい
OPPO Find N5が搭載するSnapdragon 8 Eliteは現行最高クラスの性能を誇り、メモリは16GBストレージも512GBと十分。中国版では256〜1TBまで選ぶことができる。
フラグシップなだけあってウェブブラウジングやSNS、動画編集など一般的な操作では一切のストレスがない。発売当初は唯一のSnapdragon 8 Elite採用の折りたたみスマホでもあったことから、注目度は高い。今現在でもGalaxy Z Fold7とHONOR Magic V5のみだ。
実のところFind N5のプロセッサは「7コア仕様」という通常よりもパフォーマンスに劣る構成ではあるものの、AI性能やカメラ性能に影響のあるISP性能は最新のものをそのまま利用できる。これでも基本性能は十分に高く、画面分割や複数アプリの同時利用も軽快にこなす。


一方で、3DゲームなどGPU負荷が高い処理では薄型ゆえに熱対策(サーマルスロットリング)による制御が入り、長時間遊ぶとフレームレートが落ちることがある。必要十分な性能を備えているものの、長時間ゲームを快適に遊びたいヘビーユーザーは注意が必要だ。


OPPO Find N5のバッテリー容量は5,600mAhと大容量。競合は4000mAh台が多い中、圧倒的な大容量を誇る。本機種ではシリコンカーボンバッテリーを採用することで、大容量と薄型化を両立できている。ゲームなどをしない日常用途なら1〜1.5日は安心して利用できた。
大容量バッテリーを載せたスマホには絶対欲しい急速充電も80W有線、50Wワイヤレスに対応するなど、かなり高性能。大容量バッテリーでも短時間でより多くの電気を溜め込める。発熱制御もしっかりしており、夏場の長時間利用後でも速度が落ちることなく充電できた。

本体スピーカーはクリアな音質ながら、薄型化の影響で低音の厚みは控えめだ。音楽鑑賞や動画視聴には十分だが、迫力を求める人はイヤホン利用がおすすめ。ワイヤレスはハイレゾコーデック対応で、音質面の不満は少ない。
防水は浸水のIPX8に加え、噴水流の規格であるIPX6とIPX9も取得しており、折りたたみとしてはトップクラスの防水性能を持つ。ただし防塵は非対応なので砂やほこりが多い環境での使用は注意したい。
折りたたみでも高いカメラ性能。ハッセルブラッドチューニングが光る
カメラはメインと3倍望遠にそれぞれ5000万画素の仕様とした。メインカメラには1/1.56型の大型センサーを採用。望遠カメラはペリスコープ方式を採用し、ズーム性能を高めた。
望遠カメラは最短撮影距離10cmのテレマクロ撮影もこなすなど、今まで以上に多彩な表現が可能だ。ハッセルブラッドによるチューニングもアピールポイントだ。







メインカメラは風景から後述の料理まであらゆる場面で綺麗に撮れる。大型センサーを採用していることもあり、2倍望遠も難なくこなせる。



望遠カメラは3倍望遠。テレマクロにも撮影するなど、普段使いでも使い勝手がよいカメラ構成に進化した。







ただし、前作のFind N3と比較するとカメラハードウェアは引けを取る。Xperiaと同様の2層式トランジスタ積層画素センサーを取りやめたことに加え、超広角カメラは800万画素に留まっている。カメラ性能だけなら前作のほうがハードウェア的には優位な仕上がりだった。
また、フロントカメラも全て800万画素であり、高画質な自撮りを求めるユーザーにも向かない。アウトカメラをうまく使うと良さそうだ。



超広角カメラはフラグシップスマホとしては解像感がやや物足りない。ほかのカメラと比べて性能が大きく劣るため、夜景撮影は明るく仕上がるが、細部のディテール復元やノイズ処理は他社最上位機種に一歩譲る場面がある。
Find N5はOPPO AIによる編集機能も備える。通常のスマートフォンと比較して、大画面を活かして編集しやすい点はうれしい

圧倒的な薄さ。OPPO Find N5はこれからの「標準」となる折りたたみスマホ
今回、OPPO Find N5を触ってみて、折りたたみスマホにおける技術の進歩をまざまざと感じさせられた。重さという意味では後発のGalaxy Z Fold7などが210g台という異次元を見せつけたが、それまでのOPPO Find N5は一度でも触ったらその感覚が体に染みつくほどの鮮烈な体験だった。
筆者としても、久しぶりにフィーリングで衝撃を受けたスマートフォンだった。はじめて触った時は、思わず笑いが飛び出る薄さ。そして、画面を展開したらその薄さをまざまざと実感する。
一方で、全く不満がなかったわけでもなかった。特にボタン配置は薄型設計の関係か、かなり本体上部に寄った構造となった。このため、電源ボタンや音量ボタンが操作しにくく、持ちかたを工夫する必要があった。この辺りはGalaxy、HONORが適切な位置に配置しているので、Find N5の惜しいところとしてあげたい。


これ以外には本体が薄すぎるため、本体を開きにくいという弊害もある。これはGalaxy Z Fold7、vivo X Fold 5、HONOR Magic V5をはじめとした厚さ8mm台の機種に共通して言えることだ。
競合のGalaxy Z Fold7もカメラ性能、画面性能などで進化点は大きいものの、バッテリー容量や急速充電性能、ペリスコープ望遠を含めたカメラ性能など依然として中華勢に引けを取る部分はある。後発のvivoやHONORはGalaxyほど軽量化できなくても大容量バッテリーやカメラ性能で差別化を図っている。
正直なところ、あそこまで薄くて軽量、大画面のGalaxy Z Fold7が出た以上、OPPO Find N5はあえて選ぶスマートフォンにはなる。それでも一回り大きな画面や急速充電性能、ハッセルブラッドコラボの高いカメラ性能という特徴を備えており、

筆者もこの機種に触れてから改めてHONOR Magic V5やvivo X Fold5といったこれからを牽引する折りたたみスマートフォンを触ってきた。それでも、OPPO Find N5の「閉じた時は世界初の8mm台」を超える衝撃には至らなかった。他の機種の存在を過去のものにしたといっても良い。
OPPO Find N5を筆頭にこれからの標準とも言える「折りたたみスマホ3.0」の時代が来たのかもしれない。

