市場競争が過熱するワイヤレスイヤホン市場。各社が音質やノイズキャンセリング、接続性といった要素で差別化を図る中、スマートフォンメーカーとして知られるファーウェイが投入したインナーイヤー型のフラッグシップモデルがHuawei FreeBuds 6だ。
インナーイヤー型という制約のあるカテゴリーでありながら、高音質と快適性を両立させるべく、ドライバー構成からコーデック、装着性に至るまで大幅なアップデートが施されている。本稿では、その外観や仕様を確認しつつ、実際の使用感を詳しく見ていきたい。
異例のハイブリッドドライバーを採用!インナーイヤー型の常識を覆すフラッグシップ
市場競争が激化する完全左右独立型イヤホン市場では、今年も各社からハイエンドモデルや意欲的な新製品が相次いで投入され、注目度はますます高まっている。そんな中、スマートフォンメーカーとしてお馴染みのファーウェイが満を持して投入したインナーイヤー型のフラッグシップモデルがHuawei FreeBuds 6だ。
ケースはよく見かけるシンプルな構成。今回試用したカラーはパープルで、ケースは艶消し仕上げとなっている。ケースサイズはやや大きめだが、その分Qi規格のワイヤレス充電にも対応している。

本体の収まりも良好。形状はいわゆるAirPods系のインナーイヤー型だが、ケースを卵型に近いフォルムへと改良したことで、イヤホン本体を取り出しやすくなっている点は好印象だ。

FreeBuds 6対応コーデックはSBC/AACに加え、LDAC、そしてファーウェイ独自のL2HCに対応する。LDACでは最大24bitの/96kHzのハイレゾ相当再生が可能な一方、低遅延を売りとするaptX系コーデックには非対応となる。
コーデック面でトレンドを押さえつつ、オーディオハードウェアにも妥協はない。高域には新たにマイクロ平面ドライバーを採用し、高域の再現性を大きく向上させたという。低域には11mmの大型ダイナミックドライバーを搭載し、デュアルマグネット構造と音圧強化技術によって16Hzからの低域再生を可能にしている。
インナーイヤー型では異例のハイブリッド構成となり、ダイナミックドライバーを低域再生に重点を置くチューニングとした。構造上、低域再生が不利とされるインナーイヤー型で、どのようなサウンドを聴かせてくれるのかは気になるところだ。
さらに、新型チップセットの採用により、最大2.3Mbpsの伝送が可能なL2HC 4.0にも対応する。対応端末間ではより高音質な再生が可能となるが、日本では対応スマートフォンが販売されていない点は惜しい。
サウンドチューニングは、2012年から研究を続けてきたファーウェイの音響ラボの成果が反映されている。もちろんグラフィックイコライザーも備えており、ユーザー好みに音質調整できる柔軟性も確保されている。
インナーイヤー型では最高音質。AirPodsを余裕で超えるサウンドに驚く
新型ドライバーの追加、さらに低域再生も強化されて音にも妥協はないと触れ込みのFreeBuds 6を早速聴いてみることにする。今回の試聴曲はこちら
フルーツパンチ/スリーズブーケ
Superlative/秦谷美鈴
トワラー/MILLIONSTARS Team7th
スロウリグレット/田所あずさ
試聴環境はスマートフォンにHuawei Pura Xを使用し、L2HC 4.0の環境で試聴する。ストリーミング環境もスマホ単独で24bit/96kHzの再生が可能で、FreeBuds 6の性能を最大限に引き出せるハードウェアを備える機種だ。
今回は大体の逸般的な誤家庭では標準装備のPura X、Huawei MusicのUltra HD Audioを用いて試聴した。L2HC 4.0コーデックはMate 60シリーズ以降、原則としてAndroid OSを廃止したファーウェイスマホで利用できる



実際に聴いてみると、FreeBuds 6は従来モデルから確かな進化を遂げたサウンドクオリティを備えていることが分かる。インナーイヤー型ならではの抜けの良い高域、平面ドライバーを用いた滑らかで解像感の高いボーカル表現、そして想像以上に厚みと量感を持った低域が特徴で、音質面ではAirPodsなどの定番モデルから一段上に位置する印象だ。
高域は自然な伸びを重視したチューニングで、安価なインナーイヤー型にありがちなシャリつきや耳障りな強調感はなく、開放感のあるサウンドを楽しめる。中高音域のつながりも良好で、長時間聴いても疲れにくいバランスだ。
まず「スロウリグレット」を再生すると、透き通るようなボーカル表現と高域の伸びやかさが印象的。音が詰まったり、過度に濃密になることはなく、ハイレゾ再生を意識した余裕のある鳴り方だと感じる。続いて「Superlative」や「フルーツパンチ」に切り替えると、インナーイヤー型とは思えない低域のレスポンスと沈み込みに驚かされる。
低音がしっかりと主張しながらも、ボーカルや中域を侵食せず、解像感を保ったまま鳴らし切る点は高く評価したい。特にフルーツパンチのベースラインの表現に関してはインナーイヤー型では随一の高いレベルを楽しめる。空間表現にも窮屈さはなく、サウンドステージは比較的広めだ。
さらに「トワラー」では、冒頭の静かなパートにおけるボーカルとアコースティックギターの表現が心地よく、サビでドラムスとベースが加わる場面では重厚感のある低域がリズミカルに楽曲を支える。過度なリアルさや生々しさはないものの、「聴かせる」要素は十分に備えている。
インナーイヤー型ではAirPodsがトップクラスとされているが、音だけでは優に超えており、同じラインで勝負することは困難だ。空間オーディオコンテンツの再生のほか、ヘッドトラッキングによる仮想空間定位にも対応する。
この音の良さはコーデック環境への依存度が高く、LDACやL2HC環境でこそ真価を発揮する。とくにL2HC 4.0対応機種と組み合わせた際のボーカルの滑らかさや低域の量感、レスポンスは従来モデルからの進化を強く実感できた。インナーイヤー型ながら音質への妥協は少なく、ワイヤレスでも有線に迫るクオリティを狙った意欲作と評価したい。
インナーイヤー型でもノイズキャンセリングが売りのFreeBuds 6。通話性能や操作性も強化
さて、音質についてはこのあたりにして、ここからはノイズキャンセリングやマイク品質など、実用面をチェックしていこう。今回のFreeBuds 6で特に進化を感じたのが、インナーイヤー型としては驚くレベルまで高められたノイズキャンセリング性能だ。
さすがにFreeBuds Pro 4のような密閉型モデルと比べれば遮音性は一歩譲るものの、ANCをオンにすると周囲の雑踏や電車の走行音が明確に和らぎ、移動中でも快適に音楽を楽しめる。それでいて耳元を強く圧迫する感覚はなく、密閉型イヤホンで感じがちな息苦しさがない点は、インナーイヤー型ならではのメリットと言える。
通話音質も良好だ。3基のマイクに加え、AIアルゴリズムによるノイズリダクションを組み合わせることで、騒がしい環境でも声をクリアに届けてくれる。VPU(Voice Pickup Unit)の配置も最適化されており、従来モデルよりも声の輪郭がはっきりした印象を受けた。
音以外の機能面も抜かりない。IP54相当の防水・防塵性能に加え、2台の端末と同時接続できるマルチポイント接続に対応する。例えば、私用スマートフォンで音楽を再生しつつ、仕事用端末の着信を待ち受けるといった使い方も可能だ。高音質再生を売りにするイヤホンでマルチポイントに対応するモデルは意外と少なく、この点でもFreeBuds 6は貴重な存在だ。
対応端末同士であればLDACコーデックも利用でき、最新のファーウェイ製スマートフォンとの組み合わせでは「スーパーデバイス」によるシームレスな切り替え、L2HC 4.0による高音質再生も可能。イヤホンのOSはHarmonyOS 5.0を採用している。

バッテリーはANCオフで単体約6時間、ケース併用で最大36時間。ANCオン時でも単体約4時間、ケース込みで最大27時間と、実使用でも公称値に近い持続時間を確認できた。
また、イヤホン外側に設けられた特徴的な窪みは、耳の珠間切痕にフィットする構造となっており、インナーイヤー型ながら耳から落ちにくい。フィット感の向上は、低域再生やノイズキャンセリング性能の底上げにも大きく寄与している。

インナーイヤー型ではトップクラスの高音質!ノイズキャンセリングも備えて2万円は破格?
今回のHuawei FreeBuds 6は、インナーイヤー型とは思えない力強い低域再生に加え、高いノイズキャンセリング性能も備えた意欲作だ。単なる音作りの変化ではなく、ハードウェアの地道な改良やコーデックの強化といった積み重ねによる「進化」が随所に感じられ、ワイヤレスイヤホンの新たな到達点を示す1台と言っていい。
「インナーイヤー型では、もうこれ以上は無理だと思っていた。Huawei FreeBuds 6を聴くまでは。」という領域に持って行ったイヤホンだと思う。もちろんLDACでも十分高音質で楽しめるが、L2HC 4.0とこのイヤホンに最適化されたHuawei Musicの組み合わせは一度聴いたらもうLDACには戻れなくなる。
それでいて価格は2万円と安く、1万6000円前後の価格になることも珍しくない。実は本場の中国では999元(約2.2万円)で販売されている商品なので、日本向けは破格レベルで安いのだ。こんなものを出されたら、正直競合する製品はお手上げレベルと感じてしまう。
完全ワイヤレスイヤホンは出荷数が多い分、部材コストを抑えやすいという側面があるが、それ以上に自社で処理アルゴリズムやハードウェアを開発している点が、この完成度と価格を両立できた理由だろう。研究開発に継続的に投資し、グローバル規模で展開できる販路とブランド力を持つファーウェイだからこそ実現できた製品だ。
ファーウェイは米国制裁の影響でスマートフォン展開は制限を受けているものの、ウェアラブルやオーディオ分野は堅調で、日本市場でも存在感を高めている。スマホメーカーが本気で作り込んだ完全ワイヤレスイヤホンとして、音質・機能性を含めた総合的な完成度は非常に高い。セール時には価格面の魅力もさらに増すため、インナーイヤー型で音にこだわりたい人は一度チェックしておきたいモデルだ。

