初音ミクの名を冠したガジェットは、これまで数多く登場してきた。しかし、その多くは外観や壁紙といった見た目重視、いわゆる「側だけ」に留まり、中身や機能を含めたファンアイテムとして使い込める製品は決して多くなかった。
そんな中で登場したのが、HiByと初音ミクがコラボレーションした音楽プレイヤー「HiBy M500 Hatsune Miku Edition」だ。本機は、筐体デザインだけでなく、起動画面や操作UI、何気ない音声コンテンツに至るまで初音ミク仕様で作り込まれており、「コラボモデル」の枠を大きく超えた完成度をもっている。
ありがたいことに筆者がガジェットライターであると同時にミク廃ということもあってか、メーカー様よりご厚意でご提供いただくことになった。本記事では、10年以上ミク関連ガジェットを追い続けてきた筆者の視点から、HiBy M500 Hatsune Miku Editionの魅力と実力を詳しくレビューしていく。
初音ミクとコラボレーションしたHiBy M500 Hatsune Miku Edition。納得の仕上がりに10年来のミクファンも感心
HiBy M500 Hatsune Miku Editionの大切な要素。初音ミクとのコラボ要素を残しておく。コラボモデルといってもその作りこみは抜かりなく、外見、内面のソフトウェア共にファンが納得する仕上がりだ。
キャラクターのメインビジュアルはTID氏が担当。Weiboでは35万人以上のフォロワーを持つイラストレーターであり、初音ミク関連では15周年企画のPOPPRO(ポッププロ)とフィギュアを手掛けるフリューのハイブランドF:NEXがコラボした「真夏花火」のイラストを担当。これを基にした精巧なフィギュアが受注生産で販売されていたこともあり、日本のミクファンにも知られる海外イラストレーターだ。






そんな初音ミクとのコラボレーションモデルである本機種。外見のカラーリングは初音ミクのイメージカラーである浅黄色をまとい、ボタン類は髪留めのピンクをあしらった。パット見ただけで「初音ミク」とわかるカラーリングだ。


ちなみに背面のメインビジュアルはガラスパネルのに下にデザインされている。使っていて塗装が剥がれることもないので、マニアしては安心して使える要素だ。
さて、特筆すべきは中身のソフトウェアだ。コラボモデルは外観やパッケージにだけキャラクターの絵柄を描いた、いわゆる「側だけ」が多い中、HiBy M500はソフトウェアもしっかり作り込んでいる。
まず、ブートアニメーションにはHIBY DIGITAL×HATSUNE MIKUの文字とメインビジュアルイラストが表示される。起動させた時点で手が込んでると思わせる。黒背景に浅葱色でシルエットラインを描き、瞳が光る様子はかつてドコモが販売していたXperia feat.HATSUNE MIKU SO-04D(通称:ミクスペリア)のブートアニメーションのオマージュすら感じられる。

ホーム画面の壁紙はもちろんメインビジュアル。アプリアイコンのカスタマイズ、設定画面のテーマ反映もしっかり作り込まれている。HiBy Musicアプリはシークバーが「ネギ」になっているなど、ファンならクスッとくる小ネタが多く仕込まれている。


ホーム画面には初音ミクの「ちびキャラ」が配置されている。タップすると音楽を楽しんだり、布団に入ったり、前転したり、グータッチしたりと可愛さにあふれている。これもミクスペリア の「しゃべってコンシェルジュ」に近いものを感じさせる。(Xperia feat.HATSUNE MIKU SO-04では画面のコンシェルジュが通常は羊のところ、初音ミクだった)



また、音声コンテンツも充実。起動画面では初音ミクさんの音声で「音楽のステージへようこそ。まもなく開演いたします」と発する。起動時はびっくりすることだろう。
それ以外にはイヤホンの認識、取り外し時、音量を大きめにする時(ボリュームリミッター)、本体の充電開始時、シャットダウン時も音声が収録されている。特にイヤホンを外した時の「あれ?今、スピーカーから音が出てますよ〜」という音声は印象的だった。こちらはSNSでも5000いいね以上の反応をいただき、関心の高さを感じた。
イヤホンを外したことに気づかずに大音量でスピーカーで再生してしまう「誤爆」に気づくことができる。ディスプレイにも表記が出るのでミュート時でもわかる。しかも、これらの音声は日本語、英語、中国語のそれぞれの「ミクさんの声」で収録されているという力の入れっぷり。近年の初音ミクNTのチューンでかなり自然にしゃべってくれる。


これらのカスタマイズには10年以上の初音ミクのファン(ミク廃)である筆者も大満足。随所からコラボ先への愛とリスペクトを感じ、ただのコラボモデルではないことを実感させられた。
かつてXperiaと初音ミクのコラボモデル「Xperia feat.HATSUNE MIKU SO-04D」のほか、Xiaomiと初音ミクの5000台限定コラボスマホ「小米 Mi6X 初音未来限定版」もわざわざ輸入して使っていた筆者のようなミク廃ガジェットオタクにはあの時の楽しさを呼び起こす製品だ。




HiBy M500 Hatsune Miku Editionの機能面をチェック。ストリーミング再生対応は便利、ボタン操作は押しやすいがちょっと過敏か
HiBy M500 Hatsune Miku Editionは2025年に発表された同社の普及価格帯の音楽プレイヤーだ。250ドル前後の価格設定で、HiBy R4の後継に当たるポジションとなる。特徴としてデュアルDACのサウンドハードウェア、大画面かつAndroid OS採用による操作性の向上、各種ストリーミングサービスを利用できる点をアピールした。
本体の質感はポップな印象。カセットデッキをオマージュしたボタン類に、回転式のロータリーボリュームを備える。ボリュームは100段階のロータリーボリュームを採用する。
OSにAndroid 14を採用する。そのため、基本的な操作はスマートフォンの感覚で利用できる。Google Playストアからアプリをダウンロードできるため、アプリは容易に追加できる。
プロセッサはQualcomm製のSnapdragon 680を採用。今となっては5~6年落ちくらいのミッドレンジスマートフォン向けのチップセットだが、今でもSnapdragon 665が主流の音楽プレイヤーの中では高性能に分類される。メモリは4GB、ストレージは64GBを採用する。ストレージはSDカードで増設することが前提のため、容量は控えめだ。
ホーム画面の変遷、ブラウザやゲームアプリなどの操作はスマートフォンと比較すると劣ってしまう。音楽プレイヤーとしても操作は軽快とはいかないが、音楽再生に限れば十分な性能だ。ストリーミングアプリでも処理落ち等はなく、比較的重いApple Musicもある程度快適に動かすことができる。

ディスプレイは5型のHD解像度のものを採用。スマートフォンと比較するとコントラスト比や画面解像度で劣るものの、アルバムアートワークなどの描写には問題ない。

バッテリーは専用設計で容量は3100mAhと標準レベル。公称値では最も消費電力の大きいバランス端子のハイゲインモードで11.5時間としている。モバイル向けDACやアンプ構成とはいえ、スマートフォンのように利用すると電池消費は早め。1日2時間のオフライン使用なら4~5日はもつ構成だ。
このほか、ワイヤレスオーディオはLDACコーデックのほか、HiBy独自のUATにも対応。UATは対応機種は少ないものの、最大1.2Mbpsで伝送可能なコーデックだ。
気になった点は操作ボタン系の過敏さ。かなり柔らかいクリック感でポケットで誤作動しやすいので、ホールド(ボタン操作無効)設定しておくとよさそう。


キレのいい低域と伸びていくボーカル。初めての音楽プレイヤーとして十分な性能を確保
HiBy M500 Hatsune Miku EditionはHiByのハイレゾ対応の音楽プレイヤーらしく、サウンドハードウェアに抜かりはない。DACにはシーラス・ロジック製のCS43198を各チャンネルごとにデュアルで採用。32bit/768kHzまでのPCMとDSD512に対応する。
アンプ部には「SGM8261」を4基採用する。クリアで解像感重視のチューニングに仕上げた。このあたりは実売5万円前後の音楽プレイヤーとしてが標準的な装備だ。
出力端子は3.5mmと4.4mmバランスの二系統。ハイゲインモードも備えており、ある程度のヘッドホン(初音ミクコラボで出たものは。ヤマハのHP-P1はきついかも)もしっかりドライブできる。初めての音楽プレイヤーとしても十分すぎる拡張性を備える。

サウンドに関しては、価格を考えれば納得の仕上がり。メーカーのうたい文句通り解像感重視でソリッドかつ生き生きとしたサウンドだ。ボーカロイド音楽、日本のアニメカルチャーの音楽にフォーカスを当てたチューニングなのか、ややドンシャリ系の印象を受けた。
そして何よりも出力レベルがスマートフォンとは段違いであり、スマホやワイヤレスイヤホンからは「音が変わった」と分かりやすい部分だ。さすがにソニーのWM-ZX707や1AM2を使っている身からしたら劣るかもしれないが、スマートフォンなどで今まで使ってきたイヤホンでも「おっ」となるくらいの変化になるはずだ。
そして、バランス接続に切り替えるとサウンドステージがグッと広がり、低域がよりソリッドになる。バランスド・アーマチュア型のイヤホンやハイブリッド型と呼ばれるイヤホンであれば、こちらの方が相性の良い機種も多いだろう。これについては、音源や使うイヤホンやヘッドホンに合わせて使い分けると良いだろう。
本体スピーカー、カメラに、4G通信といった変わり種機能も備えるHiBy M500 Hatsune Miku Edition
HiBy M500 Hatsune Miku Editionが他のDAPと異なる要素として、カジュアルニーズを考慮した要素を多く持ち合わせる。それが本体ステレオスピーカー、デュアルマイク、背面カメラ、FMラジオ機能、4G通信機能だ。
これだけ出されると「これはスマートフォンなのでは」と思われるかもしれないが、要素的にはかなり近いものがある。
特にマイクやスピーカーはDAPだと省かれやすい要素だが、M500ではしっかり備えている。イヤホンを接続しなくても音楽を楽しむことができる。
カメラについては写真撮影よりもQRコードのスキャンで使用することを想定している。QRコードでのデータの引き継ぎやアカウント連携が可能な場合は便利に使える。写真も数年前のスマホのような写りでどこかノスタルジーな表現ができる。一応、オートフォーカスを備え、フルHD画質での動画撮影も可能
ちなみにイメージセンサーはOV13855(1/3.06型)、レンズもf2.0とエントリー帯スマホレベルなのだが、一部では Xperia feat.HATSUNE MIKU SO-04D(IMX135 1/3.06型 f2.0)と同じくらい性能がいいのでは?とささやかれている。



また、後日発売予定の「4G版」が備える4G通信機能もDAPとしては極めて珍しく、Amazon Musicなどのストリーミングアプリを外出先でも手軽に楽しめる。このような点からもDAPというよりはスマートフォンなどに近い属性を備えている。
ちなみに4G通信機能はかつて同社の「R8SS」が対応していたこともあり、メーカとしてセルラー通信機能を実装するノウハウ自体は持ち合わせている。
HiBy M500 Hatsune Miku Edition今日からあなたもみっくみくにしてあげる♪
HiBy M500 Hatsune Miku Editionは初音ミクコラボモデルとしてはもちろん、他社の「コラボモデル」と比較しても豪華かつ意欲的な製品だった。ベースモデルのない新型商品をまずコラボで出すという勢いもすごいが、外観、中身ともにミクファンにとっては満足度の高い仕上がりになっていると感じた。
きっと開発チームの中には日本のマジカルミライやSNOW MIKUといったイベントにも足を運ぶような筋金入りのミクファンがいるのだろう。
もしくは、Xperia feat.HATSUNE MIKU SO-04D や小米 Mi6X 初音未来限定特装版といったミクファンの記憶に残り続けるコレクターズガジェットに思いをはせつつ、後継機が出ないことにしびれを切らした筆者のようなマニアでもいるのだろう。
ソニーやXiaomiが後継機を出さないのなら「それなら自分たちで最高のミクコラボモデルを作ってやる」という熱意すら感じる製品だ。クリエイティブ思想の強いファンが多いミク廃なら、こんなことをしても驚かないのだが。
それでも他社の製品と比較しても「コラボ先への愛とリスペクト」を感じる製品と感じた。標準モデルにキャラクタービジュアルをつけただけ、壁紙を変えただけ、ちょっと特典をつけて価格は2倍といった「冷める」様子を感じさせない。HiBy M500 Hatsune Miku Editionはコラボガジェットとしてのお手本だ。

それはさておき、サウンドについても価格相応の性能は持ち合わせており、バランス接続やAndroid OSによるストリーミング対応といった点も押さえた。SDカードにも対応するので、好きな音楽はいくらでも詰め込める。
このほかに他社のDAPにはないステレオスピーカー、背面カメラ、4G通信機能(4G版のみ)を備えるなど、他社の製品ともしっかり差別化できているように感じた。

日本向けを担当する代理店ミックスウェーブの公式ストアで6万0880円の設定だが、カート追加時に10%オフになるため5万4800円前後の設定となる。発売は1月下旬以降を予定しているとのこと。現在は初回特典を封入した300台を売り切り、特典のない2次販売待ちとなっている。価格に関してもコラボモデルとしてはかなり良心的だ。

みなさまもこの音を手にとって、より良い音で生活の質を上げて、「みっくみくにされる」のはいかがだろうか。
商品提供:HiBy Digital
協力:ミックスウェーブ株式会社



