パソコンと言っても一筋に多くのジャンルの製品が存在する。今回はGeekomのミニPC「AE7」を提供いただいたのでレビューしていきたい。
小さくてもゲーミングノートPC並の性能を確保。拡張性と小型軽量を両立したミニPC
今回提供いただいた製品は「ミニPC」と呼ばれるジャンルの製品だ。従来の省スペース型PCよりもコンパクトながら各種カスタマイズが容易な点をアピールしたもので、コンシューマー向けのみならず、法人向けや各種組み込み機器向けにも採用される製品だ。Intelが展開していたベアボーンキット「NUC」が著名な事から、このジャンルのPCのことをNUCと称することもある。
今回の「AE7」もどちらかと言えば、Intel NUCの考え方にそった仕様の小型PCであり、一般にはデスクトップPCの特徴としている高い拡張性とコンパクトなサイズを両立した製品だ。
一方で、ミニPCは性能が高くないと思われがちだが、その点は心配ご無用。AE7ではゲーミングノートパソコンにも採用される高性能プロセッサを搭載することで、高い性能を確保。大型の冷却機構を採用して、コンパクトなボディながらもしっかり冷却が行えるものとなっている。スペックは以下の通り
CPU
AMD Ryzen 9 7940HS
メモリ:32GB DDR4-25600
最大64GBまで対応
ストレージ:512GB/1TB/2TB
M.2 2280 PCIe
インターフェース
USB2.0 ×1
USB3.2 Gen.2 ×2
USB4 Type-C ×2(シングルレーン、DP対応)
HDMI ×2
LAN端子、イヤホンジャック
Wi-Fi6やBluetoothにも対応
OS:Windows11 Pro
今回提供いただいたモデルはAMD Ryzen 9 7940HS、メモリ32GB、1TBのSSDを採用したものだ。
パッケージはシンプルなデザインだ
本体のインターフェースはサイズを考えると豊富だ。本体前面にType-A端子が2つ、イヤホンジャックが備わる。
本体裏面はRJ-45端子やHDMI端子、USB-C端子などを備える。間隔はやや狭めだが、一般的なケーブルであれば端子間の干渉もなく利用できる。
背面にもType-A端子が2つあることから、キーボードやマウスに割り当ててもポート不足は感じない。

本体側面にはSDカードスロットを備える

付属品の電源アダプタのコードはアース付きのものだ。通常のコンセントで利用するための変換コネクタの購入も合わせてオススメする。またパソコン本体はUSB PDでは動作しないため、付属の電源アダプターが必須となる。

さすがはミニPCなだけあって、コンパクトなボディだ。サイズは奥行き117mm、幅111mm、高さは38.5mmだ。
第7世代AMD Ryzen 9採用。小さくてもAAA級ゲームが遊べるミニPC
Geekom AE7には第7世代のAMD Ryzenプロセッサが採用されている。プロセッサはRyzen 9 7940HSを採用しており、最大5.2GHzで動作する。これはノートパソコン向けの製品では同世代で最上位ものだ。
グラフィックスには強化された「Radeon 780M」を採用している。ゲーミングをアピールする製品などでも採用されている高性能なものだ。画面出力は最大で4画面、解像度も最大で8Kの出力にも対応する。また、4K解像度でも複数画面に表示できるなど、4Kモニターの恩恵も最大限に生かすことができる。
オンボードグラフィックだが、近年のRyzenプロセッサはかなり高性能な仕上がりだ。 Ryzen 9 7940HSに搭載されているRadeon 780Mは最大8.8TFLOPS(FP32)のグラフィック性能を有しており、これはGeforce RTX3050(1.55GHz 9TFLOPS)に匹敵する数字となる。
浮動小数点演算性能だけならGTX1070tiの数字を上回っており、一昔前のゲーミングPC並みの性能持っている。ウェブコンテンツはもちろん、3DコンテンツもフルHD画質である程度快適に動かせる印象だ。
今回のモデルではメモリは32GB(16+16)のため、ゲームはもちろん一般的なデスクワークであれば何ら問題なく利用することが可能だ。必要に応じて64GBまでの換装、増設も可能。ストレージも512GBを基準として最大2TBまで設定可能だ。高速なPCIe接続のSSDを採用しており、動作にもたつき等を感じさせない。本体の起動速度もかなり速く、ストレージ周りでストレスを感じる事は少ないはずだ。
ミニPCの売りの一つはコンパクトであることに加えて、メンテナンス性、拡張性が高いところだ。今回レビューの「AE7」も内部へは容易にアクセスできる。一方で、ゴム足を外したり、蓋を開けた後に内部のカバーを外さないとメモリやストレージにアクセスできないなど、外す部品やねじの数は多い。ここは同社の「XT12 Pro」に比べると惜しいポイントだ。

本体背面のゴム足の下にある4本のねじを外すと内部にアクセスできる。金属製のプレートが1枚入っているが、これのおかげで冷却性能を向上させている
最強クラスのスペックを持つミニPC。Ryzen 9採用でゲームを遊ぶには魅力的な選択肢
実のところ、筆者としてもミニPCは「さほど性能も高くなく、価格も高価で中途半端な製品」という印象が強かった。拡張性はデスクトップPCに劣り、性能的にはノートパソコンと大して変わらないのならあえて選ぶ必要はないのではと考えていたくらいだ。
今回はデスクトップPC顔負けのRyzen 9を採用する上位構成。Geekmon AE7を実際に使ってみると、まず基本性能の高さに驚かされる。ミニPCは性能が低いという概念は覆りそうだ。
ノートPC向けとは言え8コア16スレッドのプロセッサとなれば、もはや並のデスクトップPC顔負けの性能だ。Cinebench 2024で計測すると、少し前のデスクトップ向けCPUであるRyzen 7 5800Xと大きく変わらないベンチマーク結果が出る。こんなに小さい筐体ながら、数年前のデスクトップ向けの上位CPUと大きく変わらない性能を持っているのだ。

CINEBENCH 2024のスコアではシングルコアで99、マルチコアで872を計測した。
Geekom AE7の強みはRyzen APUらしく、グラフィック性能の高さだ。オンボードグラフィックスとはいえ、約8TFLOPS(FP32)の性能を確保。この性能は、同世代のAPUに当たるRyzen Z1 Extremeを採用するROG Ailyなどとほとんど変わらない。ひと昔まえのゲーミングPC並に高性能なのだ。
もちろんゲームパフォーマンスでは外部GPU搭載のゲーミングPCよりも劣ってしまうが、ゲームを遊ぶという点では十分すぎる性能だ。一方で、AMDプロセッサでは一部の3DCADや動画編集ソフトをはじめ、Intelプロセッサ以外ではうまく動作しないものも見受けられる。この辺りは用途に合わせて選びたい。
前回レビューした同社の「GT13 Pro」と比較すると原神はより快適だ。これはAMDのAPUを採用したことで、内蔵グラフィック性能がIntel Core i9の倍以上あることが理由だ。ゲーム性能を求めるならAE7のほうがよさそうだ。

ゲームでは原神のフルHD解像度、画質「中」でも60fpsをキープできる。GPUの使用率は80%台で推移し、ある程度の余裕も感じさせる。大半のコンテンツはフルHD解像度ある程度画質を落とした状態であれば快適に動きそうだ。

崩壊スターレイルはフルHD解像度、設定は高画質でも不満がないくらいに動作。最高画質では少々引っ掛かりを感じたが、高画質であれば60fpsでなんら問題なく動作した
ゲームなどが快適に利用できる理由は独自開発の「IceBlast 1.5」という冷却機構を採用しているからだ。このシステムには、追加のヒートパイプ、拡大されたヒートシンク、より大きなファンブレード、強化された冷却材料が統合されており、発生した熱を効果的に分散し、各部品の最適なパフォーマンスを維持できるという。
さらに、ファンモーターとブレードに特定のノイズ最適化が施され、運転時のノイズが従来比で40%低減されるなど、小さいボディながらしっかりと排熱設計と静粛性な両立を行っていることが分かる。
近年ではノートPC向けプロセッサの性能も上がり、高いマルチスレッド性能やグラフィック性能を備えるものが一般的になりつつある。ここまで高性能であれば、ゲームといった家庭での利用はもちろん「仕事」でも不満なく利用できる製品と感じた。
特にAE7は高性能なRyzen 9プロセッサを採用したことで、ゲームはもちろん、3Dモデリング、動画編集、楽曲制作といったクリエイティブワークも難なくこなせる。AMDのプロセッサなので、動画編集やCADといった一部のソフトはうまく動作しない可能性がるが、大容量のメモリ設定ができたり、USB端子の数もノートパソコンに比べれば多いため小型のワークステーション的な存在のミニPCだ。
そしてコンパクトな事がプラスになる場面もいくつかあった。例えば、机を広く使いたい環境、足元を広くしたい環境はもちろん、そもそも本体を置くスペースがない場面ではこのような機種が重宝する。VESAマウントアダプタを用いれば、ディスプレイの裏側に本体を固定できるため、一体型PCのようにも利用できる。デスクも足元も広く使えるのだ。
AC電源が使える環境であれば、どの部屋にも持ち運んで使用できる携帯性の高さも特徴だ。同等スペックのノートパソコンは1Kgを優に超え、2kgに迫るものもあるが、Geekmon AE7では約550gと軽量に抑えている。
また、通常のデスクトップPCに比べて静粛性に優れており、ファンの騒音も小さい製品となっている。前回レビューしたGT13 Proに比べると同等レベルの音量だが、高負荷時はゲーミングノートPCよりも静かな印象だ。基本的にノートパソコン向けプロセッサを採用することで低消費電力となっており、静粛性も生かしてホームサーバーと言った用途でも利用できる。
商品の特性上、他社との差別化が難しいものであるが、ディスプレイ端子がHDMIだけでなく、USB Type-Cで出力できる点は自由度が大きい点と感じた。ミニPCながらHDMI端子が2つある点もマルチモニター環境を構築しやすく、別途変換ケーブル等を購入する必要がない。耐久性テストなども自社でしっかり行っており、安心して利用することができる。
クーポン使用で9万円台!競合製品に比べて高いスペックでコスパ良好のミニPC
さて、今回レビューの「AE7」は高性能ながら比較的お求めやすい価格な点もありがたい。価格については、今回レビューしたAMD Ryzen 9 7940HS、メモリ32GB、ストレージ1TBの仕様で直販ストアは9万9900円の設定。ゲームも遊べる高性能なパソコンと考えれば意外と安価な設定だ。
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筆者としては搭載しているAMD Ryzen 9プロセッサがハイクラスのため、一般的な用途では十分すぎる性能と評価したい。正直このスペックのパソコンがこの価格で購入できるだけでもかなり安価と考える。
USB端子等のインターフェース類も比較的充実しており、一般的な利用シーンにおいて「不足」と感じる場面は少ないはずだ。加えて、この価格はベアボーンキットではなく、メモリやストレージを搭載してWindows 11がインストールされた仕様の価格となっている。購入してすぐ利用できる点はありがたいものだ。
筆者としては普段使いのパソコンとしても長く利用できる製品だと感じた。普段使いはもちろん、オフィスワークからクリエイティブワークまで幅広くこなせる性能の高さはプラスに作用している。高いグラフィックス性能を生かして高画質なゲーム、GPUエンコードを必要とする場面といった高スペックが求められる環境でも利用できる。
また、安定性やソフトウェアの互換性を必要とする場合はIntelプロセッサを採用した機種を選ぶと良さそうだ。近年では高い性能を持つIntel Core i9を採用する機種が、ミニPCのジャンルでも登場している。
必要に応じてメモリの換装やストレージの増設を行えるなど、拡張性の高さもうれしいところだ。そんなフラグシップクラスのミニPCが10万円以下で購入できるチャンスだ。興味がある方はぜひチェックしてみてほしい。
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