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防水でも実は「水をかけてはいけない」- 折りたたみスマホにおける防水性能の”ワナ”を解説

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 折りたたみスマホの防水性能は、近年は目覚ましい進化を遂げている。一方でその性能には「ワナ」がある点はあまり知られていない。今回はそんな”ワナ”について解説していこう。

目次

シャワーを含め、実は「水をかけてはいけない」折りたたみスマホの防水性能の”ワナ”とは

 折りたたみスマホの防水にはワナがある。そのワナとは、防水等級が「IPX8のみしか有していない」ことだ。一見数字が大きいから性能は高いと思われがちだが、これには防水等級表示がかかわってくる。

 防水等級はIP等級の第二数字でその性能が示され、ここには0〜8までの数字が入る。この数字は1〜6が主に対象物に水滴や水流を噴射する試験を行うに対し、7と8は対象物を水没させる試験を行う。実は6までの数字と7、8の数字では全く意味が異なる。防水等級は簡単にまとめると以下のようになる。

 IPX0  保護なし
 IPX1  垂直に滴下する水によっても有害な影響を受けない
 IPX2  左右15°以内で傾斜したとき垂直に滴下する水によっても有害な影響を受けない
 IPX3  垂直より左右60°以内の噴霧水による水によって有害な影響を受けない
 IPX4  いかなる方向からの水飛沫によっても有害な影響を受けない

 IPX5  いかなる方向からの直接噴流水によっても有害な影響を受けない
 IPX6  いかなる方向からの暴噴流水によっても有害な影響を受けない

 IPX7  規定の圧力および時間で浸水しても有害な影響を受けない
 IPX8  IPX7より厳しい条件下で継続的に浸水しても有害な影響を受けない

 一般にIPX等級の1から4までは主に水滴を滴らせたり、噴霧状態(ミスト)や水しぶきに対する試験であり、主に防滴性能と言われる部分の試験。5と6は流水とある通り、水をかけた状態での防水試験。そして7と8は浸水に対する防水試験であり、数字によって意味が大きく変わってくる。

 そのような中、多くの折りたたみスマホにおいて、防水性能はIPX8しか有していない。そのため、水没に耐える性能は有しているものの、対象物に水流を噴射する場面での防水性能は保証できない。つまるところ、端末を水風呂に沈めるのは問題ないが、端末にシャワーを含めた流水をかけるのはダメということになる。

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Galaxy Z Foldシリーズは、2021年の機種以降でIPX8等級を取得している

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Galaxy Z Fold6のオンラインマニュアルにもIP48(IPX8)の防水性能を有するとある

 この等級の差はよくよく考えれば不思議なもので、水没に耐えられるのに水をかけるのはダメなのか。水中に沈められるのに、なぜ砂塵に対処する防塵性能はないのかと疑問に思う方も少なくないはずだ 。その理由は次項で触れていこう。

流水性能が記載されていない理由は折りたたみスマホ特有の機構。いつもの「防水スマホ」と同じ感覚で使う場合は注意

 折りたたみスマホにおける防水等級を水没のみとする理由は、本体の構造にあると考える。確かに防水性能があるのなら「水中に沈めるのは問題なくて、シャワーはダメ」と言われてもピンとこないかもしれない。折りたたみスマホでシャワーのような流水がダメな理由として、折りたためるディスプレイが大きな要因と考える。

 この手の機種のディスプレイやヒンジは外部から強い力を与えることは非推奨とされており、稼働部がある以上、なんらかの外力がかかると破損する可能性を否定できない。このため、仮に水没による防水は保証できても、水流を当てた場合は製品の正常な動作を保証できない可能性があるのだ。このような理由から、防水は水没のみのIPX8の認証を取得しているのではないかと考える。

 また、IPX8等級はあくまでIPX7等級で要求される防水テストよりも部分的に厳しいことを内容に示せば、取得することができる。この内容には厳密な基準がなく、仮に水没テストが水深1mでも、2mでもIPX8等級となる。同じIPX8等級といえど、その試験内容はメーカーや機種によって異なる。

 また、防水試験では水中に沈めることは前提としていても、水中での使用(折りたたみ動作)や電源を入れての使用は考慮されていない可能性がある。このため、折りたたみスマホは一般的な「防水」スマホと同じように使用することはできない可能性がある。このような部分が折りたたみスマホの防水における表記の”ワナ”だと感じている。

 最後になるが、2024年のGalaxy Z Fold6が初めてこの手のスマホでIP4Xを取得した。固形物の侵入を防ぐ意味の第一数字が入ったことは大きな進化だが、これは厳密に言うと「防塵」ではない。IP4Xは「1ミリ以上の物体が侵入しない構造」で、粉塵等のある環境で利用した場合の動作は保証できない。そのため、細かい砂などの侵入は保護しきれないものと思ってもらって良い。

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IP48の防塵、防水性能を持つGalaxy Z Fold6

 近年ではOPPO Find N5がIPX6に加え、スチームジェット噴水流に耐えるIPX9等級を取得しており、一般的なスマホと同等レベルの流水に耐える機種も存在する。防塵面ではvivo X Fold5がIP5Xの防塵に対応しており、防塵面でも一般的なスマホのように使える機種も登場している。

 実用的な機種の発売から6年の期間を経て防水、防塵性能も備えて一般のスマホのように使いやすくなった折りたたみスマホ。最初に防水性能を付与したのはサムスンのGalaxy Z Fold3であり、。それ以降 はXiaomi、vivo、Huawei、HONOR、OPPOが続いており、フラグシップの折りたたみスマホにおいて、防水性能は当たり前に備えるべきスペックのひとつとなった。

 それでも、折りたたみスマホは今までのスマホと比べ、同じような防水性能を持ちながらも、多くの機種においてその性能で劣る事は事実だ。折りたたみに限らずスマホを大切に使うことに越した事はないが、防水性能の”ワナ”を頭の片隅にでも置いておくと、この夏はより安心して利用できるはずだ。

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