電気自動車(EV)に乗り始めて2ヶ月。BYD SEAL AWDを購入してから5000kmを走行した。改めて乗り換えての感想や運用コストを連載としてまとめていきたい。最初は運用コストからまとめたい。

中国製EV「BYD SEAL」で5000km走行!気になる充電回数は?
BYD SEALで5000km走っての充電をしたのは以下の通り。基本的には遠出の直前以外ではフル充電せず、概ね90%前後で調整した。また、BYDの車両は納車時にバッテリー100%状態となっている。
自宅充電:10回
普通充電器:2回
急速充電器(50kW以下):9回
急速充電器(50kW以上):10回
意外にも。自宅に充電設備を用意しながらそこまで使っていなかった。実のところ筆者の生活エリアには無料の急速充電スポットがあるため、時間に余裕がある時はこちらを利用していた。上記に示す50kW以下の急速充電器は全てこちらが該当する。
そのため、自宅の充電は遠出前のフル充電、出先から深夜に帰ってきてバッテリー残量が少ない場面での充電が多かった。夜間電力を用いての充電もあり、それ以外の時間帯は基本的に充電していない点も大きいと思われる。


50kWを超える急速充電器は主に大阪、東京方面のドライブで使用。基本的に高速道路上のeMPネットワークの充電器を使用しており、トイレ休憩間の15〜20分ほどの利用が多かった。バッテリーはSOC上、15分の充電時間では90kW級で18%、150kW級(現状のSEALの受け入れ上限の105kW)で25%ほど回復する。90kW以上の充電器なら休憩程度の短時間の充電でも100km以上の走行距離を稼げる計算となる。
このうち、30分間みっちり充電したのは4回。いずれもパーキングエリアや道の駅といった休憩施設での食事、買い物をしている間の充電であり、充電を主目的とした寄り道はなかった。また、eMP以外の高出力充電器ではFLASHを3回使用している。高出力が売りの充電器のため、こちらは15分以下の短時間利用だった。
また、BYD SEALの充電曲線は0から64%までは105kWで受け入れ、そこから84%までは80kWでの受け入れ、99%までは50kWで受け入れる。特に80%を超えてもゴリゴリと電気が入っていくため、充電予測を計算しやすく安心感を覚える場面が多かった。参考までに、105kWの出力が可能な充電器なら1時間20分ほどで充電が完了する。


EVで5000km走った電気代は好条件で〇円。ただし安くならない「落とし穴」も
5000km走った電気代をまとめると以下の通り
eMPネットワーク:12350円
超高速「FLASH」充電:2,070円
イオンの充電器:500円
自宅充電:6236円
無料充電スポット(eMPの50kW、ビジター料金換算で14450円相当)
これらの合計で、5000kmを走ったコストは2万1156円。これはガソリン価格が160円/Lと仮定した際、実燃費が39km/Lの車両とほぼ同じ扱い。1kmあたりの走行コストは4.23円となる。これは一般的な燃費15km/Lのガソリン車と比較すると半分以下のコストで走行できることになる。
自宅充電や日常生活内に安価に使える充電スポットがある場合はかなり安く抑えられる。実燃費40km近い車両もそう多くないことを踏まえれば、自動車をかなり安価に運用できている。
筆者の場合、自宅充電は夜間電力プランを契約しており、22時から翌8時までの単価は1kWhあたり27円。今回の消費電力量は約230kWhで、金額にして6236円。この電力量はSEAL AWDを概ね1600kmほど走行できる電力であり、ガソリン比較ではかなり安いが、割引期間外の昼間に充電すると高コストになる可能性がある。
自宅充電は太陽光発電や家庭用蓄電池の有無によって、電気自動車の運用コストが大きく変わってくる。電気料金も夜間電力プランやオクトパスエナジーなどの新電力をうまく使うことで、よりお得に利用できる。
これ以外には生活圏内の無料充電器の存在も大きい。筆者はこちらでも累計で230kWほど充電しているので、かなりお得に利用させてもらっている。一方で、無料のスポットは利用者も多く、充電待ちで長時間待つ場合も多い。待ち時間や充電時間を有効に使えるか否かで、利用者の満足度も変わってくると考える。
筆者はこのようなスポットの待ち時間、充電時間は最寄りのコンビニへの買い物、原稿の執筆、オンラインの打ち合わせに割り当てていた。スマホゲームで遊んだり、動画やテレビ番組を視聴するのも良いだろう。
一方で、上記の無料充電スポットを有料としてカウントした場合は3万6006円となる。これは上記と同じガソリン価格と仮定すると実燃費22km/Lの車両と同じ扱い。1kmあたりの走行コストは7.2円となる。
今回の筆者の利用例のうち、無料充電スポットを有料として考えて計算してみると、走行コストは驚くレベルには安くならない。これは自宅充電なしに近い環境での計算となるわけだが、ここでは電気自動車でアピールされる「燃料費が安い」は必ずしも当てはまらないことを意味する。
実燃費が22km/Lの換算ではハイブリッド車とあまり変わらない燃料費となり、充電環境によって運用コストは大きく左右される。
安価な電力が使える自宅充電や安価に利用できる公衆充電スポットがない場合、EV運用における電気料金はダントツで安いわけではない。ここに落とし穴が生まれるのだ。
もちろん、急速充電器をメインで使うならお得に使える充電カードの手配、eMPの急速充電プランを使うなどして、コストを抑えて利用する工夫も必要になる。あとは低コストで利用できる公衆充電器を生活圏で見つけることも運用面では重要となる。イオンをはじめとした低価格で提供している充電スポットで目的地充電すると効率よく使えそうだ。

有料の充電器ではイオンが圧倒的な低コストだが、SEALのような高出力の受け入れに対応する車両なら、条件次第では時間課金のeMPネットワークでもそこまで割高感はない。
EVで5000km走行するとガソリン車と比で2万円以上安価に移動できる!1kmあたり4.23円と経済性の高さは優秀
同じ5000kmをガソリン車で走るとどうなるだろうか。仮に実測燃費15km/Lの車両と仮定すると、必要なガソリン量は約333L。ガソリン価格が160円/Lと仮定すれば合計で5万3280円となる。
今回のEVの電気代2万1156円との差額はガソリン車で約3万2124円の節約となる。コスト差は依然として大きく、距離を走れば走るほどEVの経済性は際立つのだ。ガソリン車であれば燃料費で5万円以上かかる距離を、半額以下で走れるのはEVならではの強み。
もっとも、充電インフラの課題や設備の信頼性といった現実的な問題も存在するため、必ずしも「毎回この金額で済む」とは限らない。また、電気自動車とはいえ、急速充電器をメインで使用すると高コストになりやすく、場合によってはハイブリッド車並みの運用コストになる。必ずしも安いわけではない点には留意が必要だ。
この場合は周囲に無料で利用できる、安価に利用できる充電スポットの有無がEVの運用コストを大きく左右する要素となる。車両メーカーによってはお得に利用できる充電プランを提供したり、eMPネットワークでは急速充電プランを契約してコストを抑えることもできる。自宅に充電気を設置できない場合は、チェックしておきたい部分だ。
それでも、自宅充電や安価に利用できる充電スポットを軸にすればランニングコストは確実に下がり、自宅充電を主とすれば、給油の手間から解放されるという体験はガソリン車にはないメリットと考える。EVは単なる「安い移動手段」にとどまらず、生活スタイルを変えるプロダクトであることを、5000km乗ってみて改めて実感した。


追記:計算方法に間違いがあったので、修正しました。