中国の電気自動車「BYD SEAL」も日本での発売から1年が経ち、待望の大型システムアップデート(バージョン1.4.0)が配信された。
SDVこと「ソフトウェアで定義される車」を体現するこのモデルは、購入後も定期的なソフトウェア更新によって進化し続ける。今回のアップデートでどのような機能が追加され、何が変わったのかを詳しく見ていく。

BYD SEALのアップデート前の注意点を確認アップデート中は走行できない
まず、車のアップデートの注意点を解説する。今回のアップデートには20分ほどかかる。アップデート前は事前にパーキングレンジに入っていること、バッテリー残量が20%以上なことなどを確認しよう。注意点としては以下のものが挙げられる。
・アップデート中は車を移動できない
・アップデート中は車の機能を利用できない(エアコン含む、ドア開閉、施錠は可能)
・充電中はアップデートできない(充電中はアップデートできないと表示される)
基本的にはスマホとやタブレットと同じく、OSのアップデート中は、車を動かすことはできない。自宅などの駐車場で時間に余裕のある場面で行うとよさそうだ。
意外と見落としがちなのが、車の充電中にソフトウェアアップデートできないこと。自宅や出先で充電中にアップデートしておこうと思うと、うまくいかないので注意が必要だ。筆者もここでつまづいた。

操作UIがより直感的に進化、音声入力も実用的なレベルに
アップデートを行ってまず目を引くのが、画面下メニューバーのデザイン変更だ。
従来よりもエアコンやシートヒーターなど頻繁に使う項目へアクセスしやすくなり、操作性が向上している。
メニュー階層も整理され、日本語表示がより自然でわかりやすいものに改善。細かいながらも日常の操作性を大きく底上げするアップデートだ。


個人的には設定のアイコンが車のアイコンから歯車のアイコンに変更され、スマホやタブレットと同じ感覚で利用でき不要になった点は大きい。画面回転が左端に寄ったので、助手席から操作しやすくなった。

音声入力の認識精度も進化。日本語での音声操作が従来よりもスムーズになり、ナビ設定やエアコン操作など、手を使わずに行いたい場面で真価を発揮する。大概の操作は音声でできるので、走行中の安全性向上にもつながるポイントだ。
これ以外には画面分割が使いやすくなったり、一部アプリのパフォーマンスが改善されている。常に改善が行われているのだ。

車に乗ったら自動で電源ON!便利なオートパワーオンがアップデートで実装
新車種のSEALION 7で先行していた便利機能が解禁された。それがの注目機能が「オートパワーオン/オフ」。
ドアを開けると自動的に電源が入り、降車後に車のロックをかければ自動的に電源が切れる。新型のSEALION 7にのみ搭載されていたが、ついにSEALでも利用可能となった。毎日の乗り降りで電源操作を意識せず済むのは大きな快適性向上といえる。

https://x.com/hayaponlog/status/1970818946657030281?s=46&t=9cZ1XBfSo6124MN68IrlUw
SEALも待望のワイヤレスCarPlayに対応。
BYD SEALはこのバージョンにアップデートすることで、ワイヤレスCarPlayに対応する。筆者は先行してシステムインフォテイメントのみディーラーでアップデートしてもらったが、このバージョンで標準対応となる。
こちらもワイヤレスCarPlayアダプタ等で対応していた方が多いと思うが、これが不要になるのは大きい。接続安定性もしっかりしており、安心して使用できた。

純正アプリストアにYouTubeやZoomが登場!
今回はソフト面だけでなく、BYDアプリストアにも大きな拡充があった。YouTube、Zoom、簡単なゲームアプリが追加されたのだ。特にYouTubeアプリが純正対応したことは大きなニュースだ。
これまではATTOCASTなどを用いてCarPlayを上書きする形で視聴していたユーザーも多かったが、今回からは標準機能として利用可能になる。BYDの車両は画面を縦横自在に回転できるため、YouTube Shortsなど縦動画の視聴がしやすいのもポイントだ。


高音質で定評のあるDYNAUDIOスピーカーとの相性も抜群で、急速充電の待ち時間を上質なエンタメタイムに変えてくれる。
一方でデータ通信容量を多く使うアプリなので、長時間の視聴はスマホのテザリングなどが必須。走行中も画面表示してくれるが、運転者の画面注視は当然ながら厳禁だ。
アップデートを通じて車が成熟していく。これが「SDV」で定義された自動車の体験
BYD SEALは、購入後もソフトウェアアップデートで確実に進化することを今回のアップデートで示した。このようなSDVの考え方に沿った車はテスラが強いが、これに追従する中国勢も同じような考えで提供している。
日本向けは同じ右ハンドルのイギリスや香港、オーストラリアなど海外市場より提供タイミングはやや遅れるものの、日本仕様にも順次機能を投入している点は評価に値する。今後はSEALION 7系のUIになる2.0などまでは最低でもアップデートして欲しいものだ。

EVを単なるハードウェアではなく、常にアップデートされる「デジタルプロダクト」と捉える。SDVの考え方にしっかり準拠したBYDの姿勢がここに表れているのだ。今後のアップデートにも期待していきたい。