BYD軽EV「ラッコ」は「安さだけ」じゃない。開発担当者が語った安全性優先設計。気になる充電性能は?

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 BYDが日本市場に投入を予定している軽EV「ラッコ」が新潟市で開催されているイベント「新潟EV CARフェア」にて展示されている。

 イベントではラッコ開発担当の田川氏も来場しており、気になる点について興味深い情報を共有いただいた。それはBYDの軽EVは単なる「価格重視の軽EV」ではなく、日本市場のニーズを相当に研究した上で仕上げられていることがうかがえる内容だった。

新潟市で行われてる「新潟EV CARフェア」にてラッコの展示並びに開発担当の田川氏による説明が行われている

目次

BYDの軽EV「ラッコ」の航続距離は2グレード構成。装備も明確に差別化

 まず、BYDの軽EV「ラッコ」の航続距離グレードは2種類を用意する予定とのこと。これに加えて内装や安全装備も複数グレードで展開される見込みだ。

 これまで日本向けのBYDの車両は内装グレードはひとつしかなかったが、ラッコでは複数用意されるとした。

 上位グレードではレザーシート、アラウンドビューモニター、さらにはカップホルダーのヒーターまで用意されるという。軽自動車とは思えない装備内容だ。

上位グレードはクルーズコントロールをはじめ、各種先進運転機能を備える
中央にあるドリンクホルダーは保温機能を備える

 充電性能では上位グレードでは6kWの普通充電にも対応。対応する充電器ではより早く充電できる。急速充電は最大50kWを予定しているものの、システム電圧は高めの設定ということもあり、さらなる高出力の受け入れもテスト中とのこと。

航続距離の長い上位モデルは6kWの普通充電にも対応するという。急速充電は50kWの予定
試作車両は75%の残量で226kmの表示。バッテリー容量の多い上位グレードとしている

 ラッコを2グレード構成とした理由を田川氏は「多くの方に電気自動車を届けたい」という狙いがあるとした。現在の日本向けBYDの車両は内装や装備面は全て最上位グレードであるものの、「ここまでいらない」と思う方もいること。そのようなニーズにも柔軟に応えられるようにしている。

 さらに注目すべきはシステム電圧。田川氏曰く車格としては比較的高めの設定となっており、現在は受け入れ能力強化のテストも進行中とのこと。軽EVだから控えめではなく、充電性能をしっかり実用域に持っていく姿勢が見える。

ヒートポンプ非搭載の理由は実に合理的だった

 熱を効率よく回収する仕組みのヒートポンプシステム。電気自動車ではいかにエネルギーを回収できるかに焦点を当てるので、電費改善のためにも搭載して欲しいところ。

 一方でBYD ラッコではヒートポンプ非搭載の選択としたことが、ネット上では賛否を分けた。これは特に寒冷地で暖房をつけると、航続距離に大きく影響するからだ。

 今回採用しなかった理由について田川氏は、車両コストと衝突安全性の確保、実用面を考慮した結果、今回は採用しない方向とした。

 衝突安全性については、軽自動車のトールワゴンはノーズ長を確保できないため、前面衝突時の安全確保が構造上不利になる。

 田川氏によるとラッコでは前部に駆動系のみを配置し、ECUやDCコンバーターは車体下部へ配置。クラッシャブルゾーン確保を優先した設計思想としており、日本のEV軽自動車として衝突安全性は最高ランクを目指しているという。

 この決定には「価格を抑えるため」だけでなく、「安全のため」という明確な意思決定があるのは評価したいポイントだ。

車両のボンネット部には駆動系のみを配置する設計

 また、田川氏によるとヒートポンプシステムによる電費改善効果は約10%前後だという。バッテリー容量が大きい車両では40〜50kmの航続距離向上につながるが、軽クラスではせいぜい20km程度の改善にとどまる。

 この「20kmの航続距離」のために追加コストをかけ、衝突安全性を犠牲にするべきなのか?という問いの中、衝突安全性を選択したというわけだ。

ラッコは競合よりも容量の大きいバッテリーを採用していることもあり、コストや衝突安全性とのバランスを考慮し、総合判断としてヒートポンプ非搭載を選択したという。軽EVの実用域を冷静に見極めた判断と評価できる。

ディスプレイは10.1型。やや小さめで表示が見にくい場面も

 車載ディスプレイは10.1型。他のBYDの車両から見るとやや小ぶりだが、これは視界確保を優先した結果とのこと。軽自動車はパッケージングが極めてシビアであり、安全視界とのトレードオフがある。

 その一方でUIは他車種と共通設計のため文字サイズはやや小さめ。田川氏もその点は認識しているが、ターゲット層はスマホ世代の若年層を想定しているという。

インフォテイメントディスプレイは10.1型
メーターパネルはさらに小さい6型前後

軽EVを「安さ」だけで作らない姿勢に納得

 今回の話を総合すると、ラッコは単に中国メーカーが作った「安い日本向け軽EV」ではない。衝突安全性を最優先した設計、実用域を意識した充電性能、日本の軽自動車の利用層を分析した車内空間を備える。

 日本の軽自動車市場は成熟しており、安さだけでは勝てない。そこに本気で挑もうとしている姿勢が見えてきた。これは今までの海外メーカーではどこも手をつけてこなかった大きなチャレンジだという。

 現在、ラッコは中国・内蒙古で-20℃環境下で寒冷地での最終評価テストを実施中とのこと。寒冷地での航続距離、充電性能、乗り心地の最終調整をしている段階。今年中の日本への発売に向けて最後の追い込みというわけだ。

 今後、詳細スペックや価格などは順次公開予定とのこと。軽EV市場に本格参入するBYDの次の一手を、楽しみに待ちたい。

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