1L/200円に迫る勢いでガソリン価格の高止まりが続いている。イラン情勢の悪化による原油の仕入れコスト高騰が主な要因で、本日より始まった政府の1Lあたり30.2円の補助金を投入してもなお1L/170円前後での推移が続く見込みだ。これでは、家計への影響は無視できない水準である。
日本の場合、ガソリンの原料となる原油はほぼ輸入頼みで、主力の火力発電に使う天然ガスも同様。国際情勢が仕入れコストに直結し、ガソリン代や電気代に跳ね返ってくる構造は変わらない。
こんな状況だが、全ての会社が通勤手当を値上がり分だけ増額してくれるわけでもない。自衛できる環境にある人は、今こそ動き時かもしれない。
そこで改めて注目したいのが、電気自動車(EV)という選択肢だ。「高い」「不便」というイメージで敬遠している人も多いと思うが、いちEVオーナーとして実態を整理してみたい。

EV最大のメリットは燃料費の安さ。自宅充電ベースならかなり安くなる
EVの最大のメリットは燃料コストの低さだ。自宅充電をベースにすれば、1回の満充電にかかるコストは600円〜3,000円程度。バッテリー容量の大きさで変わるが、一般的な目安単価の31円/kWhで計算した場合、40kWhクラス(航続距離300km)の車両なら満充電でおよそ1,240円ほどになる。
長距離移動も苦にならない80kWhクラス(航続距離400km以上)の車両でも2,000円台に収まるイメージで、ガソリン満タンと比べるとその差は歴然だ。
年間1万km走行した場合、自宅充電メインのEVは約4万6,000円、ガソリン車(燃費15km/L・170円/L)は約11万3,000円と、年間で約6万7,000円の差が出る計算になる。燃料費が高騰している今、長距離を日常的に走る人ほど恩恵は大きい。

さらに一歩進めて、自宅に太陽光発電や蓄電池を組み合わせれば、エネルギーコストの変動に対してより強い立場になれる。自家発電分でEVを充電すれば電気代の値上がりを相殺でき、ガソリン代の変動リスクからも切り離される。新電力への切り替えやEV向けの夜間割安プランを活用すればさらに圧縮できる。
また、V2H(Vehicle to Home)対応の機器を導入すれば、EVのバッテリーを「走る蓄電池」として自宅に電気を戻すことができる。深夜の安い電力でEVを満充電にして昼間の電力需要をまかなったり、太陽光で発電した余剰電力をEVに溜めて夜間に活用したりと、電気代の削減効果は一段と大きくなる。
さらに、地震や台風による停電時には家庭への非常用電源として機能し、冷蔵庫・照明・エアコン・スマートフォンの充電といった生活に最低限必要な電力を数日にわたって確保できる。日本の自然災害の多さを踏まえると、防災面でのメリットは見逃せない。
価格が高いと言われたEV。補助金・税制優遇の合わせ技で運用コストも下がってきた
購入コストの高さがEVの弱点だったが、補助金制度が強化されている。2026年1月以降に登録する普通乗用EV(軽を除く)の国のCEV補助金上限は130万円に増額された。これに自治体独自の補助金を組み合わせれば、総額100万円以上の支援を受けられるケースも出てくる。
自宅用の充電器設置に関しても、販売メーカーの特典による工事費の優遇や自治体補助が受けられる場合があるため、導入の支援は手厚い。
税制面の優遇も見逃せない。EV新車購入後の翌年度分の自動車税はおよそ75%軽減され、エコカー減税による自動車重量税の免税、購入時の環境性能割の非課税も適用される。
長期保有で試算すると、ガソリン車と比べて税金だけで100万円超の差が生まれるケースもある。車両価格の差を補助金、燃料費の節約と税制優遇で取り戻せるかどうか、トータルコストで考えることが重要だ。
車両についても、国内勢で魅力的な候補が増えてきた。トヨタはbZ4Xのリニューアルで刷新し、ツーリングワゴンのbZ4X Touringも投入する。プラットフォームを共有するスバルも新型のソルテラとトレイルシーカーを投入予定だ。
日産はフルモデルチェンジしたアリアと新型リーフを投入。ホンダは中国のe:Nシリーズをベースに右ハンドル化・日本仕様へ改良した「インサイト」を限定3,000台で国内投入する。スズキもeビターラで参入するなど、選べる車両は増えている。
これら国内メーカーの車種は購入補助金の設定も高額になりやすく、アフターサービス面を含め、初めてのEVを選ぶなら無難な選択肢と言えるだろう。
また、豪雪地では強い支持を受ける4輪駆動(AWD)の車両も選べるようになった点は大きい。特にスズキのeビターラはAWDでも競合と比較して安価な設定となっており、非常に魅力的だ。

意外な落とし穴。急速充電は「安い」とはもう言えなくなる
車両も選べて運用コストも安いEVだが、注意しておきたいのが外出先での急速充電コストだ。これまで時間制課金が主流だったが、kWh制(従量課金)への移行が進んでいる。
国内最大の充電ネットワークであるe-Mobility Power(eMP)は、2026年4月1日からビジター利用者向けにkWh課金制を導入する。高速道路SA・PAでの料金は143円/kWhと設定されており、これは自宅充電単価の4〜5倍に相当する。
充電器の使い方によってはガソリン車とコスト差が縮まるため、EVのメリットを最大化したいなら自宅充電を基本にする前提は崩せない。急速充電カードへの加入や、利用するネットワークの料金体系を事前に把握することも重要になってくる。
一方、FLASHのように44円/kWhという格安単価で利用できるサービスも登場してきており、外出先での充電の選択肢は広がりつつある。


正直なところ、EVはまだ不便な点も少なくない
EVオーナー視点でメリットばかり並べても意味がないので、デメリットも率直に書いておこう。
まず自宅で充電できない環境では、正直話にならない。マンション・集合住宅の駐車場への充電器設置は合意形成の壁が高く、急速充電が主体だと前述のように高コストになりやすい。自宅付近や通勤経路に安価な充電器があったり、通勤先・外出先で拠点充電が可能といった環境がない限りはお勧めできない。
そのような意味では、今のEVは実質的に戸建て+駐車場持ちの乗り物に近い。意外にもこの要件は、都市部よりも郊外・地方のほうが条件が整っていることも多い。
冬場は航続距離が落ちるのも難点だ。EVのリチウムイオンバッテリーは4℃未満になると性能が低下しやすく、暖房使用による電力消費も加わって航続距離が通常より短くなる。
豪雪地帯では夏場の8割程度を想定しておいたほうが良いとされており、実際に運用した際も大体8割くらいの航続距離に落ち着いた。これはガソリン車も暖機運転等で航続距離は短くなるので、車に乗る上では当たり前の認識と考える。
早くなったとは言っても、車の充電にはそれなりに時間がかかる。150kW級の高出力急速充電器でも実用的な充電量を入れるのに15分はみておく必要があり、高速道路や道の駅での休憩と組み合わせる前提になる。
さらに充電器のタイプ(ブースト型・蓄電池アシスト型など)や車両ごとの充電曲線を把握しないと、思ったより充電できなかったという場面も起きる。上手に使うには、考えることが多いのが実態だ。
また、無人設置が多い充電器にトラブルが生じた場合も厄介だ。故障などのトラブルだけでなく、冬場にはコネクタが凍り付いて外れないという事例も実際に報告されている。管理者が常駐しないこともあって、不具合に気づくのが利用者ということも少なくない。
EVは全般的に車両を手放す際のリセールバリューの低さも見過ごせないデメリットと捉える方もいることだ。EVのバッテリーは経年で容量が低下するため、中古市場での評価がガソリン車やハイブリッド車と比べて低くなりやすい。
たとえば日産リーフ(初代)は、同価格帯のハイブリッド車が3年後も残価率70%前後を維持するのに対し、40%程度まで落ち込んだとする例もある。
これは中古バッテリーの健全度を客観的に評価する基準が業界全体でまだ整っていないことが背景にある。現在は車両の性能向上、バッテリーの寿命値を適切に評価できる環境が整い、少しずつ改善傾向にあるものの、依然として悪いことに変わりはない。購入時に補助金を受け取った場合は保有義務期間もあわせて、売り時を慎重に見極める必要がある。
このほか、連続500km以上を休憩なしで走りたい人、高速道路での長時間の高速巡行中のロスを気にしたくない人には向かない。また、マニュアルトランスミッションをはじめとした操縦する感覚を求める人には、現時点では向いていないと言わざるを得ない。
なお、運転の楽しさという意味ではIONIQ 5Nのように超個性的で刺激的なEVも存在する。「EVは楽しくない」は必ずしも正しくない。

全員にすすめるつもりはないが、条件が合えばEVは検討する価値がある
EVを過度に推し進める向きもネット上では見受けられるが、いちオーナーとしても、EVはすべての人の答えではないと考える。
ただ、戸建てで駐車場を確保でき、保管場所に充電器を設置できる環境なら、導入を真剣に考えてみる価値は十分ある。筆者はこの要件にぴったりとはまったこともあって、今では次にガソリン車を選ぶ理由がなくなるくらいには生活に溶け込めている。
特に日常的に車の走行距離が多い人、エネルギーコストの上昇に対して何らかの手を打ちたいと考えている人にとって、EVと太陽光発電・蓄電池・V2Hの組み合わせは個人できる月、現実的な「エネルギー自衛」の選択肢になりつつある。
一概に「EVは高いから無理」と決めつける前に、今の補助金・税制優遇・燃料費削減の三重の効果を踏まえてトータルコストを計算してみると、意外な答えが出るかもしれない。

