パソコンと言っても一筋に多くのジャンルの製品がある。今回はACEMAGICのミニPC「S3A」を提供いただいたのでレビューしていきたい。
小さくてもデスクトップPC並の性能を確保。縦置きデザインと拡張性を両立したミニPC
今回提供いただいた製品は「ミニPC」と呼ばれるジャンルの製品。従来の省スペース型PCよりもコンパクトながら各種カスタマイズが容易な点をアピールしたもので、コンシューマー向けのみならず、法人向けや各種組み込み機器向けにも採用される製品だ。
Intelが展開していたベアボーンキット「NUC」が著名な事から、このジャンルのPCのことをNUCと称することもある。
今回の「S3A」は一般的なミニPCとは一線を画す縦置きスタイルを採用した製品。ファイター機をイメージした宇宙船のようなデザインが特徴的で、デスクの上で存在感を放つユニークな外観となっている。高い拡張性とコンパクトなサイズを両立しながら、RGB照明や独自の3段階モード切替スイッチなど、使い勝手にも配慮された製品だ。
一方で、ミニPCは性能が高くないと思われがちだが、その点は心配ご無用。S3AではAMD Ryzen 7 8745HSという高性能プロセッサを搭載することで、高い性能を確保。独自のデュアルファン冷却機構を採用して、コンパクトなボディながらもしっかり冷却が行える。スペックは以下の通り。
CPU:AMD Ryzen 7 8745HS(8コア16スレッド、最大4.9GHz)
GPU:AMD Radeon 780M(RDNA 3アーキテクチャ、2600MHz)
メモリ:32GB DDR5-5600MHz(最大96GBまで対応)
ストレージ:512GB / 1TB NVMe PCIe 4.0 SSD(M.2スロット×2、最大4TB)
インターフェース:
USB4 Type-C ×1(40Gbps、8K@60Hz DP対応)
USB3.2 Gen2 Type-A ×2(10Gbps)
USB3.2 Gen1 Type-A ×4(5Gbps)
DP 2.0 ×1、HDMI 2.0 ×1
2.5G LAN端子、イヤホンジャック
Wi-Fi 6、Bluetooth 5.2対応
OS:Windows 11 Pro
今回提供いただいたモデルはAMD Ryzen 7 8745HS、メモリ32GB、ストレージ1TBのSSDの構成。標準的な構成となる。

本体は縦置き前提の設計
さすがはミニPCなだけあって、縦置きの個性的なボディながらフットプリントは小さい。縦置き専用設計のため横置きやVESAマウント取付に対応しない点は注意が必要だ。
本体のインターフェースはサイズを考えると豊富だ。USB4 Type-CポートやUSB-A端子、HDMI、DPポートを備える。本体背面にはRJ-45端子(2.5G対応)やUSB-A端子を備える。縦置き設計のため接地面積が小さく、省スペース設計となっている。なお、パソコン本体はUSB PDでは動作しないため、付属の電源アダプターが必須となる。


AMD Ryzen 7 8745HS採用。小さくても8コア16スレッドの高いスペックを備えるミニPC
ACEMAGIC S3AにはAMDのRyzen 7 8745HSプロセッサが採用されている。Zen 4アーキテクチャを採用したTSMC 4nmプロセスの製品で、最大4.9GHzで動作する。ベースクロックは3.8GHz、16MB L3キャッシュを搭載し、ノートパソコン向けとしてはミドルハイクラスに位置する。なお8845HSからNPUを省いた構成となっているが、CPU性能自体は8845HSとほぼ同等だ。
このプロセッサはZen 4コアを8コア16スレッドの構成で、マルチスレッド性能の高さが特徴。TDPは35W~54Wの範囲で動作するが、本機種は本体上部のスイッチにより3段階のパフォーマンスモードを切り替えることができる。
グラフィックスには「AMD Radeon 780M」を採用している。RDNA 3アーキテクチャを採用した統合グラフィックスとしては現行最高峰クラスの製品だ。画面出力は最大3画面に対応し、USB4経由で8K出力や4K解像度での複数画面表示にも対応するなど、マルチモニター環境の構築にも適している。




グラフィック性能ついてはIntelの統合グラフィックスより一段上の性能を持つRadeon 780Mが搭載されているため、軽量な3DゲームであればフルHD解像度でも比較的快適に動作する。
Intel Iris Xe Graphicsと比べても明らかにグラフィック性能は高く、このクラスのミニPCではゲーム用途でも有力な選択肢となる。AMD Radeon 780Mの内蔵GPU性能はおよそ3.8TFLOPSに達するとしており、これはGeForce GTX 1650に匹敵する数字となる。
メモリは32GBのDDR5-5600MHzの構成のため、一般的なデスクワークはもちろん、動画編集などの負荷の高い作業にも対応できる。必要に応じて最大96GBまでの換装・増設も可能だ。
ストレージは512GBを基準として最大4TBまで設定可能。高速なPCIe 4.0接続のSSDを採用しており、理論値で最大7000MB/sの転送速度を誇るため、動作にもたつき等を感じさせることは少ない。
高いグラフィック性能を誇るミニPC。デスクトップと変わらぬ性能は魅力
実のところ、筆者としてもミニPCは「さほど性能も高くなく、価格も高価で中途半端な製品」という印象が強かった。確かに、拡張性はフルタワーのデスクトップPCに劣り、ノートパソコンと大して変わらない性能ならあえて選ぶ必要はないのではと考えていたくらいだ。
今回はAMD Ryzen 7 8745HS搭載の構成。ACEMAGIC S3Aを実際に使ってみると、まず基本性能の高さに驚かされる。ミニPCは性能が低いという概念は覆りそうだ。ノートPC向けとは言え高クロックの8コア16スレッドのプロセッサとなれば、もはや並のデスクトップPC顔負けの性能だ。
CINEBENCH 2026で計測するとシングルコアで402,マルチコアで2971というスコアを計測。こんなに小さい筐体で、数年前のデスクトップ向け上位CPUと遜色ない性能を持っているのだ。

一方で、GPU性能にも注目したい。Radeon 780MはIntel Iris Xe Graphicsと比べてグラフィック性能が明らかに高く、オンボードGPUとしては最強クラスといっていい。GPUエンコードについてはAMDのAMF(Advanced Media Framework)を活用することで、動画編集も比較的スムーズにこなすことができる。
ゲームでは崩壊スターレイルのフルHD解像度、画質「中」設定でも60fpsをキープできる水準にある。Iris Xe Graphicsに比べてワンランク上の快適さを実現しており、ライトゲーマーには十分な性能といえるだろう。
こういった性能を引き出せる背景には、デュアルファンによる銅製ヒートシンク冷却システムがある。2本のヒートパイプとデュアル排気ベントを組み合わせた構成で、最大54Wの発熱に対応。3段階のパフォーマンスモード(サイレント35W・オート45W・パフォーマンス54W)を本体上部のスイッチで切り替えられるため、用途に応じた冷却と静音性のバランスを取ることができる。

近年ではノートPC向けプロセッサの性能も上がり、高いマルチスレッド性能やグラフィック性能を備えるものが一般的になりつつある。ここまで高性能であれば、家庭での利用はもちろん「仕事」「軽いゲーム」でも不満なく利用できる製品と感じた。
特にS3AはAMD Ryzen 7 8745HSとRadeon 780Mの組み合わせにより、3DCADや動画編集、楽曲制作といったクリエイティブワークも難なくこなせる。GPU処理の恩恵を受けやすい場面では特に頼もしい存在だ。
そしてコンパクトな事がプラスになる場面もいくつかあった。例えば、机を広く使いたい環境やそもそも本体を置くスペースがない場面ではこのような機種が重宝する。AC電源が使える環境であれば、どの部屋にも持ち運んで使用できる携帯性の高さも特徴だ。縦置き設計で接地面積が小さいため、デスクのスペースを有効に活用できる点も嬉しい。
また、通常のデスクトップPCに比べて静粛性に優れており、サイレントモード時はファン音量38dBまで抑えられるという。高負荷時もゲーミングノートPCよりも静かな印象だ。基本的にノートパソコン向けプロセッサを採用することで低消費電力となっており、静粛性も生かしてホームサーバーといった用途にも活用できる。
商品の特性上、他社との差別化が難しいものであるが、S3Aは縦置きデザインという独自性が光る。ディスプレイ出力がUSB4、DP 2.0、HDMIの3系統に対応し、最大3画面の同時出力が可能な点も自由度が高い。また、RGB照明がサイドの排熱口から漏れ光る演出は、ゲーミングPCらしい雰囲気を演出してくれる。

セールで約9万円!AMD Radeon 780Mの高いGPU性能が光るコスパ良好のミニPC
さて、今回レビューの「S3A」は高性能ながら比較的お求めやすい価格な点もありがたい。Amazon.co.jpでの販売価格はRyzen 7 8745HS・メモリ32GB・ストレージ1TBの構成で11万5980円(記事公開時点)。クーポンやタイムセール等でお得に買えることもあり、公開時点ではタイムセールで9万1959円の設定。このスペックとしては十分にコスパが高い。
搭載しているAMDのZen 4プロセッサはハイクラスのため、十分すぎる性能と評価したい。正直このスペックのパソコンが10万円前後で購入できるだけでも破格の性能と考える。
USB端子や映像出力等のインターフェース類も充実しており、一般的な利用シーンにおいて「不足」と感じる場面は少ないはずだ。
強いて惜しい点は、USB Type-C端子が本体前面側にしかない点。ハブなどを使って画面出力を行う用途には使いにくく感じた。画面出力は背面のHDMI端子などを主に使うとよさそうだ。

加えて、この価格はメモリやストレージを搭載してWindows 11 Proがインストールされた仕様の価格となっている。購入してすぐ利用できる点はありがたい。
筆者としては普段使いのパソコンとしても長く利用できる製品だと感じた。普段のネットサーフィンはもちろん、オフィスワークからクリエイティブワークまで幅広くこなせる性能の高さはプラスに作用している。高画質なゲームや高負荷なGPU作業を除けば、ストレスを感じることはほぼなかった。
また、IntelプロセッサのミニPCと比較した場合、AMD Ryzenはグラフィック性能で優位な場面が多い。近年ではAMD 7000・8000番台のRadeon 780Mを採用する機種がミニPCのジャンルでも増えており、本機はその中でも競争力のある構成といえる。一方で、ソフトウェアの最適化はIntel Coreシリーズが優位な場面もあるため、このあたりは利用用途で選んでも良さそうだ。
必要に応じてメモリの換装やストレージの増設を工具不要で行えるなど、拡張性の高さもうれしいところ。そんなハイスペッククラスのミニPCが10万円前後で購入できるチャンスだ。興味がある方はぜひチェックしてみてほしい。

