スマートフォンのバッテリー容量は、ここ数年で急激な進化を遂げている。2023年ごろまでは「5000mAhあれば十分」という空気が支配的だった。しかし2025年は大容量化が進みつつ、ついに常識的なサイズのスマートフォンでも10000mAhという大台に到達した。
常識をぶち壊す!10000mAhの大容量バッテリーを積んだHONOR WINシリーズ
象徴的だったのが、2025年初頭に発表されたrealmeの10000mAhコンセプトモデルだ。通常サイズの筐体に超大容量バッテリーを収めるという挑戦は話題を呼んだが、あくまで「コンセプト」に留まっていた。
後に15000mAhクラスのコンセプトも公表されたが、こちらはバッテリーに全個体電池が採用されるなど、商用化の段階に来るにはもう少し時間がかかりそうだ。

もちろん、これまでも10000mAh級のスマホが出ていなかったわけではないが、ほぼ全て300gを軽く超える「鈍器」のようなタフネススマホの専売特許だったからだ。
しかし、その常識を真正面から覆したのがHONORである。同社が中国向けに12月26日に投入したHONOR WINシリーズは、10000mAhという大容量バッテリーを現実のものとした。
上位モデルのHONOR WINは、Qualcommの最新プロセッサのSnapdragon 8 Elite Gen 5を搭載。価格は3999元(8.6万円〜)とフラグシップのMagicシリーズとは異なる立ち位置のスマホだ。
競合はiQOO 15やREDMI K90 Pro Max、realme GT8 Proといった「性能重視」の中国ハイエンド勢。フラグシップ以上に競争が激化しているラインだ。
その中でもHONOR WINは防水対応の空冷ファン、高音質スピーカー、185Hz駆動のディスプレイ、そして10000mAhバッテリーという尖った構成が目を引く。競合にはカメラ性能などで劣るものの、性能と電池持ちを最優先するユーザーに刺さる仕様だ。

さらに驚かされるのが下位モデルのHONOR WIN RTだ。望遠カメラやワイヤレス充電をオミットしつつ、SoCは2024年の最上位であるSnapdragon 8 Eliteを維持。
その他の基本仕様は上位モデルとほぼ共通で、価格は2599元(約5.7万円)。両機種ともに10000mAhを積みながら重量225g、厚さ8.3mmという常識的なサイズ感に収めてきた点は、もはやコンセプトが現実のものになった。
一方で、バッテリー特化路線をさらに推し進めるのがHONOR Powerシリーズだ。初代HONOR Powerは初の8000mAhクラスの機種として話題をさらったが、後継となるHONOR Power 2はその上を行く。
リークされた情報では、6.79型ディスプレイにMediaTekのDimensity 8500を採用し、バッテリー容量は10080mAh。それでいて厚さ7.98mm、重量216gというのだから、もはや数字だけ見ると従来の5000mAh級のバッテリーを備えるスマホと大差ない。
バッテリー「10000mAh」の時代が来る。HONOR WINでその確信を経た
振り返れば、便利なアシスタントなどをはじめとしたAIタスクが常時バックグラウンドで動作し、ゲームや映像表現が高度化する中で、大容量バッテリーの需要が急増したのはある意味必然の流れだった。
同時に、バッテリーの方も負極のシリコン含有率を高めて高密度化や実装技術の進化が進み、わずか2年でスマホの標準容量は5000mAhから7000mAh級へと引き上げられた。
これは中国だけでなく、日本でもOPPO Find X9やnubia Z80 Ultraなどの7000mAhクラスの機種が販売されており、3万円台の廉価モデルでもXiaomiのREDMI 15 5Gがある。
そして2025年、ついに「実用サイズ」の10000mAhがHONOR WINで現実のものとなった。筆者としても予想以上に早く実現したと驚いたもの。
この流れを考えれば、2026年には8000mAhが新たな基準となり、10000mAhクラスのスマートフォンも決して珍しい存在ではなくなるだろう。
スマホは「5000mAhで大容量」という時代はもう終わり、いまやバッテリー性能そのものが差別化要素となる新しいフェーズに突入している。消費者もそろそろ認識をアップデートしなければならない時期に来たと考える。




