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スマホのシャッター音は「盗撮防止」に効果はあるのか?検挙数のデータをもとに考える

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 日本ではキャリアの自主規制で行われているスマートフォンの「シャッター音」だが、実際に盗撮防止の効果はあるのだろうか。今回は警察庁の公表しているデータをもとに見ていこう。

目次

盗撮検挙数は増加傾向。スマートフォンでの犯行が実に8割

 さて、日本では自主規制とされているスマートフォンのシャッター音には、本当に「盗撮防止」の効果はあるのだろうか。実際に大手キャリアに問い合わせた記事では、ほぼ全て「盗撮防止」との回答をしているようだ。

なぜ日本のスマホカメラはシャッター音が鳴るのか “自主規制”緩和の動きはあるも、見直しを議論すべきでは(1/3 ページ) – ITmedia Mobile

 ここで警察庁が公表している令和5年度(2023年4月~2024年3月)における盗撮被害の検挙数をみていこう。
 令和5年度のデータより同年度に施行された「性的姿態等撮影罪」(以下:撮影罪)の件数が別途加算されたため、過去年度との正確な比較はできない。数字で見ていくと撮影罪で1203件、迷惑防止条例違反によるものが5730件。それぞれ検挙されている。

 このデータには盗撮行為に使用した機器も記載されており、最も多いものがスマートフォンを含む携帯電話だ。検挙数のうち携帯電話によるものが撮影罪で975件(81.0%)、迷惑防止条例違反では4499件(78.5%)だった。

 実に8割近くが携帯電話による盗撮行為ということに加え、検挙数では前年度の迷惑防止条例違反によるものが5738件だったことを踏まえると、撮影罪の分だけ増加した形だ。

https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/bouhan/chikan/R05-1chikan.tousatsu.pdf

 正直、この数字だけ見ると「スマートフォンのシャッター音」が盗撮防止として機能しているとは思えない。実態は音の鳴らない「無音カメラアプリ」や撮影時には無音になる「動画撮影」といった手段で行われることが多く、仮にスマホのシャッター音が鳴る仕様だとしても、盗撮防止にはあまり効果的ではない。

 このような現状に対し、日本経済新聞は「無音カメラアプリの悪用」を指摘した。スマホ無音カメラアプリで盗撮横行 シャッター音の存在意義は – 日本経済新聞

 このアプリは本来、前述のアンケート結果にもあった「静かな場所」「子供やペットを撮影する場面」といったシャッター音が鳴ってほしくない場面で使用するものだが、これが盗撮行為に悪用されているという。

シャッター音は「盗撮防止」への効果は薄いが、鳴ったことで検挙につながった例も

 検挙数の増加と携帯電話による犯行率の高さからみると、スマホのシャッター音と「盗撮防止」はあまり関係がないと感じるかもしれない。

 実際、シャッター音が鳴る設定が大半ながら検挙数が増えていることから、効果は薄いのではないかと考える。

 一方、世間の多くの方はスマートフォンのシャッター音に対し、オフにできる設定を求めている。その理由の多くは、シャッター音を強制されることによる「使い勝手の悪さ」に起因している。

 ITmedia Mobileが行った「スマホカメラのシャッター音」に関する読者アンケートでは、90%の方が「オフの設定」(任意でシャッター音を鳴らなくする設定)を求めている。

「スマホカメラのシャッター音」は75%が不要、90%が「オフの設定」欲しい:読者アンケート結果発表:ITmedia Mobile読者に聞く(1/2 ページ) – ITmedia Mobile

 これは盗撮防止の目的でシャッター音が鳴る安心感やメリットよりも、静かな場所で雰囲気を壊す、子供やペットの撮影で支障となるというデメリットを感じる方が多いという結果に。

 大体数の方からしたら、盗撮行為を企むごく少数の犯罪者に対応するため、普段の撮影時シーンで不便を強いられるという見方だ。

 そもそも盗撮行為を行うような人は、無音カメラや動画撮影機能を悪用して行為に至るといった指摘もある。いくら規制したところでアプリ等で回避できることから、結局は利用者の「モラルの問題」といった意見もみられた。

 実際、無音カメラアプリを悪用されてしまうと、自主規制のシャッター音はほとんど効果をなさなくなる。

f:id:hayaponlog:20250128225619j:image

無音カメラの検索サジェストには多くのキーワードが並び、利用者の注目度は高い

 筆者としてはシャッター音の鳴らない仕様で市場に出すことはできても、盗撮被害の増加=「携帯電話が原因」としてキャリアやメーカーに矛先がいかないようにする意味もあると考える。

 正直、利用者のモラルにかかわる部分だが、販売側としても「あらかじめ対策している」という立ち位置を表明しているといったところだ。

 その一方で、撮影時に「シャッター音が鳴った」からこそ被害者が認知、通報し、検挙に至った例もある。実際に掲示板やコミュニティサイトでは、不意にシャッター音が鳴り、振り向いたら既に撮影されていたという趣旨の報告。これによる悩み、不安などを第三者に相談する投稿が確認できる。

【至急】学校の後輩に盗撮されました。シャッター音は聞こえたので確実に撮… – Yahoo!知恵袋

 また、シャッター音が鳴ることで、盗撮行為に対して、一定の抑止力があるのではないかと考える方もいる。そのような意味では、半ば強制化されているシャッター音も、盗撮防止よりも盗撮行為の現認、被害拡大の防止という意味である程度の効果があるように感じる。決して無意味ではないのだ。

盗撮行為は10代、20代の検挙数が増加傾向。結局は利用者のモラルの問題

 最後になるが、盗撮行為の検挙数は近年10・20代といった若い世代が増えているという。読売新聞では令和4年度の兵庫県のデータを用いて「同地域の10代による盗撮行為の摘発数が7年前と比較して3倍近くに増加している」と報じた。

盗撮の加害者、10代が増加…日常的にスマホで撮影し「罪悪感薄れる」 : 読売新聞
 2022年にはNHKのクローズアップ現代でも『盗撮 “安易に手を出す”10代・20代の若者たち』という題で特集が組まれ、加害者への取材も行われている。この話題への社会的関心度も高い。

盗撮 “安易に手を出す”10代・20代の若者たち – クローズアップ現代 – NHK

 共通して手元にあるスマートフォンで行った隠し撮り行為に「罪の意識が薄い」と指摘しており、簡単に行なえる点も検挙数の増加につながっていると分析している。

 これについて、『他人の姿を勝手に撮ると犯罪になる』(読売新聞)といったことを周知させるなど、学校や家庭等で適切な教育機会を与えるべきだとしている。

 キャリア各社は、未成年の利用者に対してフィルタリングによって、アプリやウェブサイトの利用に制限をかけた状態で販売している。それでも、カメラなどの日常的に使うアプリは制限されていない場合が多い。

 今はまだそれほどでなくても、上記の課題が社会的に大きくクローズアップされると、特に未成年の利用者向けの規制や制限等がより強固になるのではないかと考える。

 実際に加害者の年齢別データが出てしまっている以上、社会的な問題になってくれば、キャリア等も販売するスマートフォンに対して対策が必要に迫られる。

 筆者としては、スマホのシャッター音はシーンに応じて利用者がオンオフを切り替えられることが望ましいと考える。

 一方、スマートフォンによる盗撮被害の検挙数が増加傾向にあることを考えると、ニーズがあるとは言えキャリアも簡単に「やめます」とは言えない立場なのかもしれない。

 近年ではシャッター音をオフできる機種もオープンマーケットにていくつか販売されている。どうしても気になる方はこれらを選ぶと良さそうだ。もちろん、悪用は厳禁だ。

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