近年のファーウェイのスマートフォン、タブレット、ラップトップPCでは米国制裁の関係からAndroidやWindowsではなく、中国向けは独自OS「HarmonyOS NEXT」の採用を進めている。
2024年にHarmonyOS 5として登場してからはやくも1年。最新バージョンの「HarmonyOS 6」ではシステム言語として日本語が正式に追加されたことを確認した。
これまで中国語・英語のみで中国専用だったHarmonyOSが、ついにグローバル市場にも視線を向け始めたことになる。ファーウェイ端末を愛用してきたユーザーにとっては大きな一歩だ。

中国独自OS「HarmonyOS NEXT」の最新バージョンは「日本語」に対応!設定メニューから選択可能に
HarmonyOS NEXTを採用するスマートフォンやタブレットは原則中国国内のみの販売ということもあり、登場時はシステム言語が中国語と英語に限られていた。
このため、日本語で利用するにはかなり使いにくい状態であった。独自OS採用端末となったことで、Androidスマホでもなくなってしまったので、ギークユーザーにもお勧めしにくい状態だった。しかしHarmonyOS 6では、システム全体で日本語表示が可能になったというので、ギークユーザーには吉報だろう。
今回は手元にあるHuawei Pura80 Ultra並びにPura XをPublic Betaにアップデートして試してみた。手元に2台しかないのでこれ以外の機種の日本語化度合いは不明だ。
アップデートした後、実際に設定画面を開くと、「Language and Region」項目に「日本語」が追加されており、選択するだけでメニューや通知、純正アプリのUIまでしっかり日本語化される。翻訳の質も自然で、Androidベースの頃と比べても違和感が少ない。




また、日本語の他にもアラビア語、スペイン語、フランス語、ベトナム語、ロシア語、韓国語も追加された。この辺りは中国人の渡航が多い地域、今でもファーウェイのスマートフォンが販売されている地域が多いものと見られる。
最新の中国独自OS。実際に触れて感じた“日本語でも使える”レベルの完成度
さて、HarmonyOS 6.0の日本語UIでの操作は非常にスムーズだ。設定メニューや通知センター、カメラアプリ、カレンダーなど主要アプリはすでに翻訳済みで、違和感を覚える箇所は少ない。





基本的なアプリケーションは概ね日本語化されており、しっかり作り込まれているように感じた。フォントはどうしても中華フォントになってしまうが、HarmonyOSもフォントの入れ替えが可能なので、今後は日本語もうまく表示できるフォントが登場するものと思われる。
日本語入力についても、標準搭載のキーボードアプリでひらがな・カタカナ・漢字の変換が問題なく行える。文字入力の予測変換も自然で、実用レベルに達している。これまで外部IMEを導入し、記号でひらがな入力しかできなかった時期を考えると、大きな進化だ。
一方でApp GalleryからインストールできるアプリはHarmonyOS NEXTが事実上の中国専用OSという背景もあったため、マルチランゲージ化はほとんど進んでいない。これは日本語対応どころか、英語表記にすらならないアプリもある。
また、中国版のスマートフォン同様に音声アシスタントのマルチランゲージ化はできない。音声アシスタントのCeliaやAI関連項目には英語、中国語の表記が残るが、日常利用で困るレベルではない。
アプリの少なさも解消傾向。Androidアプリも使いやすくなったHarmonyOS NEXT
HarmonyOS NEXTではAndroidアプリの実行環境が削除され、完全に独自のアプリ基盤「Pure Harmony App」へ移行する方針だ。
当初は中国で必須のWeChatすらなかったアプリ環境も今や10万以上に増え、主要なアプリはほぼ全て使えるようになった。課題と言われたゲームなどの対応も原神、鳴潮などの人気コンテンツはHarmonyOS版が配信されている。当初懸念された「アプリ不足」は払拭されつつある。

一方で、中国内ではなんとかなるものの、ファーウェイユーザーが海外に渡航する際はかなり不便なのは事実。ファーウェイでは「卓易通」「出境易」というAndroidアプリを動かせる仕組みを用意し、海外での利便性向上を図っている。
試した範囲では、LINEやInstagramなどの定番アプリも動作した。UIが日本語になっていることで操作性も格段に向上している。
また、従来はできなかった出境易内のアプリから撮影した動画や写真へ簡単にアクセス可能となり利便性が向上。さらにはシステム側に出境易内のアプリを認識させる事も可能に。画面分割やポップアップウィンドウ、音楽再生アプリのアイランド表記、Bluetoothイヤホンのアプリ認識もできるようになった。(これは出境内アプリ側のアップデートかもしれませんが…)




ただしGoogle関連アプリはChromeなどの一部アプリが英語表記になるものが見られた。中身の表示は日本語で利用できるので、中華スマホを輸入して使うようなギークユーザーにはそこまで苦にはならないだろう。
いよいよ「日本語で使える」HarmonyOS NEXTへ。日本にも再展開して欲しい
これまで中国語や英語でしか操作できなかったHarmonyOS NEXTが、ついに日本語で自然に扱えるようになった。これはAndroidのマルチランゲージ化ではなく、独自OSの日本語化という点が大きな違いとなる。
ファーウェイスマホの販売地域でも、西側諸国の制裁を受けている地域でもない日本の言語にここまで対応してきたのは衝撃。中国人の渡航が多い地域とはいえど、Androidスマホでも日本語対応しないメーカーは少なくない。ファーウェイは明確な目的を持ってHarmonyOSの日本語対応を進めたというわけだ。
HarmonyOS NEXT採用端末の日本発売という淡い期待を抱けるようになったこと。いちマニアとしては、日本でもより使いやすくなって、ギーク層に勧められるようなスマートフォンやタブレットになる事は非常にうれしい。選ぶ際のハードルがひとつ解消されたのだ。
そんなHarmonyOS NEXTを採用したスマートフォン、タブレットは中国国内ですでに2000万台以上がアクティベートされている。グローバル版が登場すれば「AndroidでもiOSでもない第3の選択肢」として存在感を強めていく可能性は高そうだ。
現時点では中国版端末での利用が中心だが、グローバル向けないし日本向けモデルが登場すれば、ファーウェイ端末の復活が現実味を帯びてくる。
HarmonyOS 6.0は10月22日に正式発表され、Mate 70/60シリーズ、Pura80/70シリーズをはじめとした機種を対象に、本日以降希望者にPublic Betaアップデートが提供される見込みだ。
また、Huawei Mate XTなどの三つ折りスマホ、ミッドレンジスマホに関しては11月以降の提供予定としている。中国専用の印象が強かったHarmonyOS NEXTが、ついに日本ユーザーの手に馴染む日が近づいているようだ。


