USB-Cケーブルだけで充電できる乾電池型リチウムイオンバッテリー(1.5V定電圧型セル)は、充電器を持たなくても手軽に繰り返し使えるのが魅力の商品。直近ではダイソーでも購入できることで注目を集めている。
ただし内部には昇降圧回路を備えたリチウムイオンセルが組み込まれており、通常のニッケル水素電池やアルカリ電池とは異なる性質がある。ここでは長く安全に使うために知っておきたいポイントをまとめる。

乾電池と異なる電気的な特性に注意。相性の良い機器、悪い機器とは?
乾電池型のリチウムイオン電池は、放電中は1.5V前後を安定して出力する。筆者がダイソーで購入した製品も1.5V前後の出力であり、定格出力が1.2Vの充電式乾電池よりも安定して使える。
一方、この手の電池は残量が少なくなると終盤で一気に1.1V付近まで電圧が落ちる特性がある。このため以下のような機器では注意が必要となる。
例えば、デジカメやストロボなど、電圧が一定以下になると即停止する機器。残量警告を早めに出してほしい機器(マウス、無線機器など)をはじめとした製品ではバッテリーの残量把握が難しく、突然電池切れになるような挙動をする。じわじわと電圧が落ちてくる一般的な乾電池とは明らかに違う挙動であり、電池残量が確認できる機器では「突然電池が切れる」ような挙動をするものもある。

このようなバッテリーが向いている製品としてはリモコンや各種コントローラ、フラッシュライトや懐中電灯、電動シェーバー等の製品が挙げられる。
逆に向かない製品はデジカメ等の電池残量の確認が逐一できたほうがいい製品、後述するノイズに弱い製品、アクティビティトラッカーをはじめとした高温多湿な環境で使用される製品などだ。この点は使う側も「突然電池切れになる」ことを想定して、余裕を持って交換・充電する習慣を付けると便利に利用できる。
機器に入れたままの充電は厳禁。カバンの中で充電も感電するため注意
この手のバッテリーはUSB-Cポートがら直接充電できるのが魅力だが、機器に入れたまま充電することは想定されていない。
充電時はリチウムイオンバッテリーの定格である3.6Vがバッテリーに印加されるだけでなく、この電力を電池の端子から取り出せてしまうことが問題。ダイソーのものでは電池内の出力も合算された最大で4.7Vの出力を確認でき、これらは接続中の機器に負荷や誤電圧をかけてしまうリスクがある。
ダイソーのバッテリーはプラス極にUSB端子がある仕様なので、充電しながらの使用は物理的にできない構造になっている。それでも、製品によっては本体側面に端子があり、電池を機器から外さなくても充電できるものがある。危機を壊すならまだしも、最悪の場合感電の恐れもある。
この特性を理解しつつ、充電時は水気のある場所や金属製のものと隣接する環境で行わないようにしてほしい。モバイルバッテリーと同じ感覚でカバンの中に入れて充電することも、カバンの中で端子がショートし感電、発火等の思わぬ事故の原因になりかねない。これはバッテリーセルが端子むき出しの状態のまま充電しているのと同義なので、充電時は周囲をクリーンにした状態にし、安全を確保したうえで行ってほしい。

ノイズに敏感な機器では要注意。保管方法も乾電池より慎重に
乾電池型のリチウムイオンバッテリーは内部にリチウムイオン電池の定格である3.6Vから、乾電池で主流の1.5Vに落とす降圧回路を備えており、これがスイッチング動作を行うため、微小ながら電気的ノイズ(リップル)が発生する。
このため、FM/AMラジオや無線機器、ポータブルアンプなどのオーディオ機器、テスターなどの計測器をはじめとした電磁ノイズに敏感なものとは相性が悪い。このような場面では乾電池やニッケル水素電池を選ぶのが無難だ。
また、保管方法は乾電池よりも注意が必要。バッテリーはリチウムイオンセルを内蔵しているため、保管・取り扱いも乾電池以上に慎重にならなければならない。水気のある場所を避けることはもちろん、高温になる車の中はもちろん、お子様の手に届く位置には絶対に置かないこと。
バッテリーの長期保管は完全放電による故障の可能性が高くなるため、非常用の長期保管には向かない点は注意。これらはスマートフォンやモバイルバッテリーといったリチウムイオン電池を内蔵する機器と同様の注意事項と考えてよい。

乾電池型バッテリーは特性と危険性を理解して、正しく使うのがベスト!
乾電池型リチウムイオンバッテリーは、USB-Cケーブル1本で充電完結する手軽さと、乾電池互換の汎用性を兼ね備えた便利な電池だ。
一方で、容量が少なくなった時に電圧急落する特性、スイッチング回路ゆえのノイズ、充電や管理に関する危険性といった「乾電池にはないクセや危険性」を理解せずに使うと、思わぬトラブルを招く可能性がある。
このようなバッテリーも適材適所を押さえた上で使えば、日常のちょっとした電池が必要な場面で頼れる選択肢になるでしょう。
