電気自動車(EV)の競争が航続距離や加速性能だけでは語れなくなりつつある中国市場。車内で過ごす時間をどれだけ快適に演出できるかが、クルマの価値を決めつつある。Xiaomi初の大型SUV「YU7」は、その答えを明確に示したモデルだ。
ここではスペックや動力性能よりも、インテリアとインフォテインメントという視点から、実際に触れて感じた魅力をレポートする。


落ち着いたインテリア空間 SUVらしい広い車内
乗り込んだ瞬間に伝わるのは、素材と仕立ての上質さだ。シートには本革や高品質な合成皮革が採用され、ステッチも緻密。センターコンソールやドアトリムにはソフトタッチ素材が多く使われていて、触れるたびに心地よさを感じる。
一方でコスパマシンでもあるので、あまり目に触れない部分には樹脂素材が使われていたりと、ある程度のコストカットは行われている。






またホイールベース3,000mm超という余裕あるサイズのおかげで後席の膝周りや頭上空間が広く、パノラミックルーフから降り注ぐ光が開放感をさらに際立たせる。アンビエントライトの柔らかな演出もあり、夜間はまるでラウンジにいるような雰囲気だ。

“スマホ感覚”を極めたインフォテインメント
ダッシュボード中央には、16.1型の高解像度ディスプレイを配置。OSは同社スマートフォンと同じ「Xiaomi HyperOS」を採用し、動作の軽快さやUI構成はまさに“スマホそのもの”だ。
ジェスチャー操作や音声アシスタントに対応し、ナビ・メディア・車両設定などを直感的に操作できる。分割画面によるマルチタスクにも対応し、運転中の視線移動を最小限に抑えられる点も好印象だ。
さらに、5G通信対応やオンラインアップデートにもしっかり対応。地図データや機能が自動で更新され、スマートフォンのように「購入後も進化していく」体験を味わえるのは、まさにスマホ屋のXiaomiらしい。


物理スイッチという“安心感”を残した純正オプション
タッチパネル主体の車が増える中、YU7は純正オプションで物理スイッチ類を選べる点は嬉しい。例えばエアコンの温度調整を直接操作できる物理スイッチ、LEDムードライト、専用スマホスタンドを後付けできる。
これらのオプションは、ガジェットを買う感覚で追加できる点もユニーク。マグネット端子や簡単なねじ締めだけで装着可能で、ユーザーが自分好みに車内をカスタマイズできる。
これらのオプションは吸盤などによる位置調整の煩雑さだけでなく、面倒な電装系の配線なども不要な点は嬉しい。手軽ながら「タッチパネルだけでは不安」という声に応えた設計思想が光る。




競合EVと比べた優位性は「ソフトウェア」に。走行性能もパワフル
Tesla Model Y、奇端 LUXEED R7などミニマル志向のEVと比べると、Xiaomi YU7はスマホライクなUIと物理スイッチの両立が秀逸。
欧州メーカーのプレミアムEV(BMW iX、Audi Q8 e-tronなど)に匹敵する内装質感を持ちながら、価格は中国市場で約25万〜33万元(約350〜460万円)と大幅に抑えられている。走行性能も高く、上位モデルは100Whオーバーの大容量バッテリーや高い急速充電性能など、EVとしても価格以上の満足感を提供している。
EVは充電中や長距離移動など、車内で過ごす時間がガソリン車より長くなる。だからこそ、空間の快適性とインターフェースの分かりやすさは何より重要だ。
Xiaomi YU7は、スマートデバイスの進化とアナログな操作感を絶妙に融合させ、「過ごしたくなる車内」を実現している。
特に純正オプションによる物理スイッチやスマホスタンドの追加は、他社にはない明確な差別化要素だ。EVに「快適さ」や「ハイテク性」を求めるなら、Xiaomi YU7は間違いなく注目すべき一台である。

