日本時間の9月17日。iPhone 17シリーズの先行レビューが各メディア等で解禁された。SNSやYouTubeにも多くのレビューが溢れているなか、その多くがAppleの発表に倣う形でiPhone 17 Proに「光学8倍望遠」という表記を用いている。しかし、この表現には大きな違和感を覚える。
果たして、iPhone 17 Proに搭載されたカメラは本当に光学8倍なのか。スマホライターとして300台以上の端末を使い込んできた立場から言えば、答えは「NO」である。表記のニュアンスを見直すべきだと強く思うのだ。

8倍望遠の実態はインセンサーズームであり、あくまで「8倍相当」
まず、iPhone 17 Proの8倍望遠は、光学4倍のレンズと4800万画素のセンサーを活用したインセンサーズーム(デジタルズームの一種)によるものだ。
つまり、高画素なセンサーの中央部分を切り出すことで1200万画素相当の写真として記録しているに過ぎない。レンズそのものが物理的に動いて8倍の焦点距離を実現しているわけではない。
スマホの世界では、こうした仕組みを「ハイブリッドズーム」や「ロスレスズーム」と呼ぶのが一般的だ。焦点距離を可変させる事による光学式のメカ機構とデジタル処理を組み合わせたものと区別して説明している。
このため、インセンサーズームの多くは1200万画素前後で保存することを前提に「光学◯倍相当」と表記することが多い。

つまり、光学望遠とはあくまでレンズのメカ機構で実現した倍率を意味し、センサー切り出しによる補完は「別枠」として扱うのが業界の共通認識なのだ。これはカメラでも同様だ。
そのため、iPhone 17 Proの「光学8倍望遠」という表現は、実態を正しく表しているとは言い難い。Appleと同じ理屈ならXiaomi 15 Ultraは光学で4.3倍だが、5000万画素相当で記録できる8.6倍、はたまた1250万画素相当で記録できる17.2倍までも「光学」となってしまう。

英語表記は「optical-quality zoom」、日本語表記は「光学ズーム」大事な部分が訳されていない
さらにややこしいのは、Apple自身の表記が国や地域によって異なる点だ。アメリカなど英語圏の公式紹介文では「optical-quality zoom」という表現が使われている。直訳すれば「光学相当の品質」や「光学品質のズーム」となり、光学式ではないが、それに匹敵するクオリティを持つという意味になる。
一方で、日本向けの公式サイトでは「光学8倍ズーム」と明記されている。これだとニュアンスとしては大きく異なり、ユーザーには「物理的に光学8倍のレンズが載っている」と誤解させかねない。


この差は単なる翻訳の違いに見えるかもしれないが、実際には大きな問題だ。英語版は“相当”であることを暗示しているのに、日本語版は“断定”のニュアンスになってしまっている。これでは消費者に誤った期待を抱かせるリスクがある。
光学8倍の真相はAppleの誤訳。カメラ性能に誤解を生む点が落とし穴に
実を言えば、Appleの意訳や誤訳は今回が初めてではない。過去にも直訳ではうまく伝わらない表現を日本向けに独自解釈してきた経緯がある。公式サイトでは誤解を招く物も少なからずあった。
確かにマーケティング的な観点からすれば「キャッチーで分かりやすい」表現を優先するのは理解できる。しかし、カメラのように数値と仕組みが絡む分野では、誤解を招かない正確さこそが重要だ。
消費者にとって大切なのは「どう撮れるのか」であり、そこに誇張された表記があれば混乱を招くだけと考える。今後のAppleには「光学8倍」ではなく「光学8倍相当※」といった形で、きちんと注釈を付けることを求めたい。世界的な企業である以上、どの地域向けにも意味が崩れないような正確な表現を通じて、ユーザーに正しい理解を促す責任があると考える。
