Xiaomiが3月13日に日本でも発売した新型ワイヤレスイヤホン「Xiaomi Buds 5 Pro」。最新の技術を多く採用した機種であり、中でも4.2Mbpsのロスレス伝送に対応したWi-Fi版の注目度がかなり高い。今回は最上位のWi-Fi版をレビューしてみよう。
- Wi-Fi対応で4.2Mbps伝送可能!Xiaomiの最上位イヤホンをチェック
- 圧倒的な情報量はもはや有線級。4.2Mbps XPANでワイヤレスイヤホンの新次元を体験
- 音だけじゃない!ノイキャンに外音取り込みも魅力。ボイスレコーダーという独自機能も
- 2万円台で最強クラスの音を奏でるイヤホン。難点は対応機種の少なさか
Wi-Fi対応で4.2Mbps伝送可能!Xiaomiの最上位イヤホンをチェック
市場競争が過熱するワイヤレスイヤホンの市場。今年も新機種が目白押しなのだが、そんな中、スマホメーカーとして日本でもお馴染みになりつつあるXiaomiから登場したフラッグシップイヤホン「Xiaomi Buds 5 Pro Wi-Fi」がすごいと話題だ。


今回レビューするものはトランスルーセントブラック。Wi-Fi版のみに用意されたカラーだ

ケースへの収まりも悪くない。本体形状はAirPods Proのようなもので、取り出しにくいといったこともない。
Xiaomi Buds 5 ProシリーズはXiaomiのイヤホンではフラグシップに当たる商品。高いノイズキャンセリング性能はもちろん、高音質ハードウェアやハイレゾ対応コーデック対応などの要素をしっかり押さえている。
Xiaomi Buds 5 ProはSBC/AACに加え、最大2.1Mbpsで伝送できるaptX Adaptiveに対応。ハイレゾ相当となる24bit/96kHz再生も可能なコーデックだ。ここで「最大2.1Mbpsで伝送できるaptX Adaptive」にピンときたアナタはかなりツウ。Xiaomi Buds 5 ProはLE AudioをベースとしたaptX Adaptive LEを採用しており、これが2.1Mbps伝送を可能にした理由だ。
また、最上位のXiaomi Buds 5 Pro Wi-FiはWi-Fiを用いたQualcomm XPANにも対応する世界初のイヤホンでもある。XPANとは「Qualcomm Expanded Personal Area Network Technology」の略称であり、クアルコムが2023年に発表した伝送方式。
ここではWi-Fiの電波にBluetoothの音声プロトコルを載せて伝搬させることで、従来のBluetoothでは難しかった大容量かつ低遅延の通信が可能。筆者もバルセロナで、最初に試した時は驚いたものだ。
XPANに対応するXiaomi Buds 5 Pro Wi-Fiでは、最大4.2Mbpsで伝送できるとしており、LDAC規格のワイヤレスイヤホンの約4倍の情報量を伝送できることになる。伝送レートだけで言えば、有線イヤホンと何か変わらないところまで来ているのだ。

アプリからも4.2Mの表記が確認できる

XPANの実測値はMWCのデモンストレーションでも確認できた。条件が良ければ平均3Mbps以上でリンクするという。
コーデック面ではトレンドの最先端を押さえるが、核となるオーディオ面についても妥協はない。ハードウェアも強化されており、独立したアンプシステムを備える3ドライバー構成を採用。
低域は11mmのダイナミック、中高音域を平面ドライバーと6mmのPTZ(ピエゾドライバー)が担当する。低域用のダイナミックドライバは強力なマグネットを採用し、高い駆動力を持たせることで量感の低域を再現できるという。メーカーいわく、Xiaomi Buds 4 Proと比較して、低周波パフォーマンスが200%向上としている。この組み合わせによって15~50kHzの超広帯域の再生が可能となった。
サウンドチューニングについては、Harman Golden Ear Teamによるマスターチューニングを採用。同社は「深い低音とより満足感の高い音楽の表現を可能にし、真に高品質なサウンドを実現」としている。
圧倒的な情報量は有線級。4.2Mbps XPANでワイヤレスイヤホンの新次元を体験
音に妥協はないと触れ込みのXiaomi Buds 5 Proを早速聴いてみることにする。今回の試聴環境はスマートフォンにXiaomi 15 Ultraを使用し、aptX Adaptive LE XPAN(4.2M)の環境で使用する

Xiaomi Buds 5 Pro Wi-Fiのサウンドクオリティを評価すると、ワイヤレスイヤホンでは「新境地」と言える高い仕上がりと感じた。2.1Mbpsで伝送できるaptX Adaptive LEでも想像以上のサウンドであり、ワイヤレスイヤホンの中ではかなり上位のサウンドと感じる。
4.2MbpsのXPAN接続では、サウンドステージの表現と細かい音の再生が得意なように感じた。情報量の多さや低域の再生能力も従来モデルと比較すると大きく向上しており、このモードで使った時は別格の域にいるようだ。従来機のXiaomi Buds 4 Proと比較するのはあまりにも差が大きいレベルの進化だ。
その一方で2.1MbpsのaptX Adaptive接続とWi-FiモードのXPANでは、同じイヤホンでもサウンドチューニングが変わる印象を受けた。この辺りの一貫性の無さは気になるところであり、メーカーが目指した「最高の音」が分かりにくいと感じた。
特にボーカルの滑らかさや低域の表現、量感、レスポンス共にワイヤレスイヤホンでは高いレベルと感じた。この辺りは高い伝送レートで音源の情報を劣化なく送れていることが大きい。
特段どこかの音域に極端なトゲやピークを感じることもなく、非常に耳当たりの良いサウンド。ワイヤレスでここまで上手く鳴らせるのであれば上出来だ。
Xiaomi Buds 5 Pro Wi-FIのサウンドクオリティはかなり高く、スマホ屋のイヤホンとしてはかなり上位のサウンドと感じる。サウンドハードウェアはもちろん、新技術による圧倒的な伝送容量でカバーする辺りコストパフォーマンスの高いXiaomiらしい仕上がりだ。

Xiaomiらしいコスパの良さは健在
ここで気になるのは競合となるHuawei FreeBuds Pro 4(LHDC 4.0 2.3Mbps)やサムスンのGalaxy Buds 3 Pro(SSC UHQ 2.3Mbps)の存在。
筆者としてはXiaomi Buds 5 Pro Wi-FiはGalaxy Buds 3 Proよりワンランク上のサウンドと感じ、同じ中国勢最強の一角であるFreeBuds Pro 4とは好みの差と感じた。
正直、ファーウェイの方がハードウェア性能だけで見たら引けを取るところはあるものの、チューニングの巧さはさすがと言ったところ。この辺りは別途詳細をまとめたい。

この辺りの比較もいずれ行いたい
音だけじゃない!ノイキャンに外音取り込みも強力。ボイスレコーダーという独自機能も
さて、音質についてはこの辺りにして、ここからはノイズキャンセリングやマイクの品質についてチェックする。
今回このイヤホンを利用して良いと感じた点がノイズキャンセリング性能の高さ。筆者も多くのイヤホンを利用してきたが、ここまで効きの良い機種はそう多くない。Xiaomiもかなり高い次元に持ってきた。
ノイズキャンセリングの感度はかなり強力。3つのマイクを使って最大55dbの騒音をカットすることができる。フルオートはもちろん、アダプティブモードも備える。手動である程度の調整も可能だ。
電車の走行ノイズから街の喧騒といった場面でも音楽を再生していればほとんどわからない。5kHzという比較的高い領域まで低減してくれることもあって、同社のイヤホンの中では群を抜いて高性能だ。
通話音質も良好。通話時は3つのマイクに加えて、独自のプロセッサを備えることで風切り音などを高度に抑制する。高度なAIアルゴリズムも用いて高音質な通話を可能にしている。
このほかの特徴として、IP54相当の防滴対応にマルチポイント接続がある。マルチポイント接続は2つの端末との同時接続が可能で、両方の端末からの着信待ち受けを常時を行うことが可能だ。
個性的な機能として、イヤホン本体にボイスレコーダー機能を備えている。最大4時間までの記録が可能であり、イヤホンケースのボタンを3回押すと起動することができる。
また、本体は連続8時間の再生が可能となっており、ケース併用で30時間の再生が可能。ワイヤレス充電や急速充電にも対応しており、10分間の充電でも4.5時間利用できる。

フィット感は良好。よく見るあの形状だが、やはりこの形状は人間工学的にもよくできている。イヤーピースは専用品のため、社外品への交換は難しそうだ
2万円台で最強クラスの音を奏でるイヤホン。難点は対応機種の少なさか
さて、Xiaomi Buds 5 Proを使ってきて、音質やノイズキャンセリング性能には納得の商品と感じた。特にXPANオーディオについては有線接続と大差のない伝送容量を持っていることから、ワイヤレスイヤホンにおける新境地を体感できることだ。
一方で、最新規格を詰め込んだがゆえに、最高音質で利用できる環境が非常に限られていることは惜しい。aptX Adaptive LE(2.1M)とXPAN(4.2M)の対応機種は現時点でXiaomi 15 UltraとXiaomi 15 (アップデートで対応)の2機種となっており、他社のスマートフォンで利用することはできない。
仮にXPANが他社でも利用できるようになっても、スマートフォン側のプロセッサにSnapdragon 8 Eliteが必須であることを考慮すると、やはり対応機種は片手で数える程度しかないのが現状だ。
このため、Xiaomi Buds 5 Proは事実上のXiaomi 15 シリーズ専用のイヤホンと化しており、対応機種が極めて少ない点が惜しいのだ。

高音質で楽しむなら、Xiaomi 15シリーズが必須のイヤホンだ
筆者としてもXiaomi 15シリーズを買ったら何も考えずにセットで買え!と言いたいものの、他のスマートフォンと使うならコーデックの相性を含めて決定打になりにくい。
Xiaomi Buds 5 Proを他社のスマートフォンと組み合わせる場合、レガシーBluetoothのaptX Adaptiveの上限である1.2Mまで制限される。LDACに対応しないため、スマートフォンは機種を選ぶ点も惜しいところ。
そんなXiaomi Buds 5 Proの価格は標準モデルで2万2800円、Wi-Fi対応版で2万7800円の設定とAirPods Proより安価なラインとしている。どちらかというとライバルはAirPodsよりもHuawei FreeBuds Pro 4(2万8600円)になる。
スマホ屋のXiaomiが本気で作ってきたワイヤレスイヤホン。コスパの名に恥じない高いサウンドクオリティは素晴らしいものであった。興味がある方はぜひチェックしてみてはいかがだろうか。