待望の大型センサー採用の望遠性能はまだまだ「荒削り」でも、描写の良さは健在
AQUOS R9 proのズーム性能はデジタルで最大20倍。補正は弱めで実用域は明るい場面で10倍前後、暗い場面では6倍前後の印象。3倍望遠カメラは大型センサーを採用したことで背景ボケも大きく、被写体を引き立てることもできる。また、暗い場面でもくっきりと写すことができる。







望遠カメラもきれいに撮影できる。ペリスコープ型の望遠カメラで目にする「不自然な形の玉ボケ」をソフトウェア処理で円形に近づけるような処理も見受けられる。
AQUOS R9 6倍望遠。デジタルズームの補正は弱め


スペクトルセンサーのおかげで料理は綺麗に。望遠カメラのおかげでゆがみを抑えて撮影できる

物撮りにも使えるが、背景ボケが大きくフォーカスはシビア。テレマクロが使えないので、気合で被写体を狙い撃つ必要がある


超広角カメラも綺麗に撮影できる。AQUOS R9と同じセンサーだが、レンズ構成が違うという
AQUOSにシャッターボタンはうれしいが、ソフトは「改善してほしい」ところも
AQUOS R9 proでは撮影体験を高める目的で、物理的なシャッターボタンが採用された。撮影体験を高めるパーツとしては確かなもので、カメラのようなフィーリングで撮影できる。
シャッターボタンには実際のデジタルカメラと同じ部品を採用した。感覚はXperiaよりもしっかり押し込む必要はあるものの、体験としては良好だ。半押し操作もしっかりできるため、この部分の使い勝手は良い。

シャッターボタンを備える。位置やサイズ感も悪くない
一方で、Xperiaのような挙動を想像して使うと「思ったものと違う」と感じてしまう。速写のXperiaに対してAQUOSは「構図を決めて最高のワンショットを狙う」ような方向性だ。
ある意味かつてのAQUOS R6のようなピーキーな部分もあり、使っていく上で慣れが必要な部分と感じた。この辺りは店頭で試してほしいところ。
AQUOS R9 proには超高速なオートフォーカスなどはないため、近いイメージのXperia PRO-Iの後継機だと思って購入すると後悔するかもしれない。
最後にカメラ周りの惜しい点だが、筆者としてはいくつか感じられた。ひとつはズーム操作の挙動が通常のスマートフォンと逆な点。通常の機種ではタッチ操作でのズームはズーム倍率を長押しして”下スワイプ操作”でズームするのだが、AQUOSでは逆の操作が割り当てられている。これが操作しにくいのだ。
また、ワンタップでの28mm/35mm切替はおろか、2倍望遠のワンタップ項目すらない。これは競合他社の機種にはほぼ全て備わっているので、やはり使いにくいと感じてしまう。

ズーム操作にはもう一工夫ほしいところだ
いままでのAQUOSには「ズーム性能」を求める場面が少なかったので、これらの操作性が気になる場面は少なかった。ただ、高性能な望遠カメラを持つAQUOS R9 proでは望遠カメラをよく使うだけあって気になるところ。今後のアップデートに期待したい。
もうひとつは、撮影後の処理レスポンスがあまり良くない点だ。AQUOS R9のような「処理中」と表示される時間が長いことはないのだが、いかんせんズーム時の挙動(カメラの切り替え)があまり良くない。のだ。特に夜景撮影時や連写した際は顕著に現れる。
プロセッサはSnapdragon 8s Gen 3とグレードはひとつ下でも、最上位のSnapdragon 8シリーズのひとつ。ISP性能などは大きく変わらず高性能であることは変わりないため、現時点ではチューニング不足と評価したい。
ここまでAQUOS R9 proのカメラ機能を中心にファーストインプレッションをお届けした。正直あのAQUOSがここまでのカメラスマホになるとは思わなかったくらいの進化に驚いており、「やればできる子」なんだと感じた次第。
Xiaomi 14 Ultraなどと勝負しても引けを取らない高いクオリティに加え、FeliCa採用をはじめとした日本で使う上でほしい機能もしっかり載せている。この冬注目のカメラスマホの一角にふさわしい商品だ。
ソフトウェア面はまだまだ追い込みが甘い部分があるが、AQUOSシリーズは例年カメラ周りの大きなアップデートを幾度か配信している。ここでの改善とさらなる伸びしろに期待したい。
AQUOS R9 proのスマートフォンとしての基本機能などの使い勝手をまとめたレビューは別途掲載予定だ。