どうもこんにちは。これまで使ったスマホは300台以上。生まれはギリギリZ世代のライター はやぽんです。さて、今回は買わないとか言いつつ。結局買ってしまったGoogle Pixel 9 Pro XLのレビューといきましょう。
高級感もアップ!ハイエンドスマホらしくなったGoogle Pixel 9 Pro XL
8月に最新モデルのPixel 9シリーズが発売となった。いつもより早い時期の発売はiPhoneなどを意識したものと思われる。日本市場では円安の影響をモロに受けてしまい、価格は大きく高騰してしまった。それでもなお、魅力的な製品なのかチェックしていきたい。
今回も標準モデルのPixel 9とに加え、上位モデルのPixel 9 Pro、Pixel 9 Pro XLの3種類が展開される。これらの違いは基本的にメモリ搭載量、カメラ構成、画面性能、端末サイズだ。


今回筆者はPixel 9 Pro XLをチョイス。望遠カメラを備える大画面の上位モデルだ。スペックは以下の通り
SoC:Google Tensor G4
メモリ:16GB
ストレージ:128/256/512GB
画面:6.8インチ WQHD+ OLED
LTPO技術を用いた可変リフレッシュレート
カメラ
メイン:5000万画素 f1.68
超広角:4800万画素 f1.7
望遠:4800万画素 f2.8
フロントカメラ 4200万画素
バッテリー:5060mAh
ワイヤレス充電、リバース充電に対応
Pixel 9 Pro XLは基本的に純粋なPixel 8 Proの後継機に当たる。今作では6.3インチのPixel 9 Proが展開されていることもあり、iPhoneでいう「Pro Max」に相当するポジションだ。
特徴として後述する強化されたカメラ性能が挙げられる。Tensor G4という独自チップを使ったAI 処理をはじめ、高度な画像処理を駆使したまさに本気で作ったスマートフォンを感じる。
上位モデルのPixel 9 Pro XLは、6.8インチのOLEDパネルを採用。Super Actuaディスプレイと呼ばれるもので、最大輝度が2000ニト、ピーク輝度は3000ニトと画面がかなり明るい高品質なディスプレイが採用されている。
スムーズディスプレイと称する1〜120Hzの可変リフレッシュレートにも対応しており、消費電力も抑えられたとしている。
Pixel 9 Pro XLでは 6.8インチの大画面となっており、持った時のサイズはGalaxy S24 Ultraなどに近い。

ディスプレイはフラットディスプレイになり、トレンドに沿った形だ
指紋センサーは従来までの光学式から超音波式へ変更された。この方式によって認識速度や精度が従来よりも上がり、より快適に利用できるようになった。
その一方でガラスフィルムとは相性が悪いことが多く、フィルムを選ぶ際には「指紋認証対応」といった表記のあるものを選ぼう。

指紋センサーは超音波式が採用された
OSにはAndroid 14を採用。今回は端末の発売が早かったことでAndroid 15をプリインストールしての登場ではなかった。ローンチデバイスという特成上、最新OSはアプリによってはうまく動作しないものもあるが、この辺りは時間が経つに連れて改善されていくものだ。
望遠性能とAI機能がより強化。AI補正で綺麗に撮れるPixel 9 Pro XL
今回も引き続き印象深い点はカメラ性能だ。筆者も近年のスマホを買うなら、まずカメラ性能からというくらいには注視している。
Pixel 9 Pro XLは前作同様の3眼構成となるが、イメージセンサーが新型のものとなり、レンズ構成などが一部変更されている。超広角カメラを含めた全カメラでオートフォーカスが利用できるなど、この辺りの仕様はコンパクトなPixel 9 Proでも同じだ。

Pixel 9 Pro XLでは3眼カメラを採用する。カメラ部の意匠はGoogleの検索バーをイメージしているという









何枚か撮ってみたが、AI処理が入るので必ずしも「見たまま」には映らないが、非常にきれいに撮影できる。
もともとPixelは高度なAI処理を得意とすることもあり、Pixel 8aなどの安価な機種でもそこそこ写ることで知られている。今回のPixel 9 Pro XLでは他社のハイエンドスマホでも採用される大型センサーを採用しているため、ハードウェアの基本性能の高さも関係しているようだ。



Pixel 9 Pro XLでは超広角カメラのスペックが向上している。これによって撮影できる幅が広がることはありがたい。







Pixel 9 Pro XLでは光学5倍相当のペリスコープ望遠レンズを搭載。最大30倍望遠まで可能だ
ズーム性能が高いだけでも今までのスマホとはまた違った写真が撮れる。ここに関してはXiaomiやvivoが海外で販売しているような製品と比較しても高いレベルで追従している。日本では販路も広く、比較的高い知名度をもつPixelでこのような商品が展開されることは嬉しい限りだ。





Pixelシリーズらしく夜景モードもしっかりと備えている。一部シーンで夜空にノイズが乗る場面が見られたが、多くのシーンできれいに撮影できる。三脚検知で自動的に切り替わる星空撮影モードもあるので、興味があるようなら使ってみると新たな発見もありそうだ。


夜間の望遠性能もかなり高い。国内で販売されている機種ではXiaomi 14 Ultraに匹敵するレベルだ
独自SoCはTensor G4になってAI処理が進化。ゲームパフォーマンスは微妙
Pixel 9 Pro XLに採用されるTensor G4ではAI処理の高さを売りにしており、恩恵として高精度な文字の書き起こしやリアルタイムで出力される翻訳機能、写真の画像処理エフェクトなどが挙げられている。
リアルタイムの文字起こし、翻訳と言った機能は、取材や海外渡航時に大いに役立っている。精度も前作より向上しており、多少早口でしゃべった内容もうまく読み取れるようになっていた。
新機能の「音声消しゴムマジック」は喧噪下でも特定の人間の声を強調し、それ以外をカットする機能だ。名前もさることながら、ボイスレコーダーとしてはとても有用すぎる機能だ。取材のお供にはもってこいだ。
写真撮影についても、前述の通り高度なAI処理によって綺麗な写真を撮影できるようにしている。今作ではズームによって劣化したディティールを生成AIを用いて「補正」する機能も備わった。
「ズーム画質向上」をタップすると、生成AIを用いた補正機能が利用できる。今回は以下の画像を20倍望遠相当に切り出してみた。

元画像
切り出し
ズーム画質向上(生成AIを用いた補正)
確かにズーム画質向上機能を用いたほうが、塗りつぶした感はあるが、ノイズなどが抑えられているように感じる。その一方で、必ずしも上手くいかない作例もあるので一長一短だ。また、この機能はGoogleフォトに備わる機能のため、他のスマートフォンで撮影した写真でも利用できる。

屋外の看板を補正したところ、細かい文字が正常に補正されなかった。この辺りは生成AIを用いた弊害だ
イチオシ機能の「一緒に写る」機能は複数人で撮影した際に、撮影者も集合写真に加えることができる。手順としては一方が撮影し、もう一方の人が構図を合わせて合成するというもの。以下の投稿が撮影した作例だが、思ったよりもきれいに合成されている。
問題
これはPixel 9シリーズに備わる「一緒に写る」機能で撮影したものだ。
この3人のうち、誰か1人が後から合成で追加されている。
さて、誰が追加されたのかわかるかな? pic.twitter.com/ZS8WtIHJeH— はやぽん (@Hayaponlog) 2024年9月5日
この投稿では3名のうち、左右の人の写真を撮影。右側の筆者が入れ替わり、最初の写真を撮影した方が真ん中に入った状態でもう一度撮影した。そのため、合成したのは真ん中に立つ方になるが、右側の筆者も立っている位置が動いており複数の人間がいてもある程度最適化されているようだ。
このほかの画像編集についてもフィルターや簡単なエディターのみならず、通行人を削除したり、手ブレしてしまった写真の簡易補正、ポートレートにおける光量補正といった「失敗すらリカバーできる機能」が備わっている。
Pixel 9 Pro XLでは前作同様に手ぶれした写真をAI補正する機能が搭載されている。これはPhotoshopなどにも同様の機能が実装されているが、スマホで簡単にできるという点ではこちらの方が分かりやすさで有意だ。
引き続き大きくアピールしている消しゴムマジック、モーションフォトも非常に面白い機能だ。Pixelの消しゴムマジックはより直感的にわかりやすく人物検知を行い、簡単に編集できるという点では編集アプリを利用するより分かりやすいものだ。
従来から備える「ベストテイク機能」「編集マジック機能」「動画ブースト機能」といった新機能も機能面のすごさ以上に「何ができるか」にフォーカスされて、利用者にとって分かりやすくなっている。
ベストテイクはフェイスグルービング機能を利用し、横を向いてしまった顔を正面に向けたりすることができる。編集マジック機能は被写体を切り抜いたり、拡大縮小が可能だ。消しゴムマジックとは異なり、生成AIを用いて切り抜いた部分を塗りつぶしたりできる。
動画ブースト機能は暗所で撮影した動画をクラウドベースで、再度ノイズリダイレクションや HDR 補正をかけるものだ。スマートフォン単独では負荷のかかる処理をサーバーに担当させることで、負荷を分散させるといった目的がある。まさにAI時代のスマートフォンだ。
編集マジック機能はより踏み込んだ編集が簡単にできる

Pixel 9 Proシリーズは放射温度計を備えており、簡易的ながら温度の測定が可能だ
従来から指摘されるパフォーマンスの低さは、Pixel 8世代からは幾分か改善している。 これはチップセットの改善、ベイパーチャンバーと呼ばれる冷却機構を搭載したことがプラスに作用している。
Pixel 9 Pro XLにはGoogle が設計したTensor G4プロセッサが採用される。サムスンの4nmプロセスで製造されるこのチップはGoogleの意向が強く反映されている。プロセッサのコア構成は以下の通りだ。
Cortex-X4コア×1 @3.10GHz
Cortex-A720コア×3 @2.60GHz
Cortex-A520コア×4@1.95GHz
Tensor G4は近年のハイエンド向けプロセッサでよく見かける3クラスター構成となっているが、従来の物理9コアから8コアというよく見る構成に戻った。全体的に動作コアの周波数が低いことから、省電力を狙ったものと考える。
GPUはARM Mali-G715を採用。前作のTensor G3と同じGPUを採用するものの、動作クロックが微増しているので性能自体は向上している。

Tensor G4は独特構成のプロセッサだ
一方で同じ価格帯のスマートフォンと比較すると、パフォーマンス不足であることに疑いはなかった。実際にいくつかゲームをプレイしてみたが、3D表現を多用するゲームは苦手と感じた。
ゲームでは原神が最高画質だとせいぜい45fps。最高画質の最低要求が「Snapdragon 8 Gen 3」という超高負荷コンテンツの「学園アイドルマスター」では1220p描写で平均35fps前後、MV再生時で45fpsとかなり厳しい様相を見せた。
ベイパーチャンバーを搭載したことで比較的高い性能を維持できるが、本体が熱を持ちやすいことが印象的だった。筆者も学園アイドルマスターを10分ほど遊んだところ、表面温度が44℃と高温になったのでやはり設定を落とす等の対策は必要だ。

原神は画質を落とす等の対応が必要だ


学園アイドルマスターも最高画質は厳しいように感じた

端末が比較的熱を持ちやすいのか、ゲームプレイ時は表面温度が44℃前後と熱くなる
既出のベンチマークでは、Snapdragon 8+ Gen 1より少し下程度の結果が出ている。最新ハイエンド機に対してベンチマークスコアが劣る理由をGoogleは「アンビエントコンピューティングに力を入れているため」としている。
これは、単なるベンチマークスコアだけではなく、写真撮影の体験をより良いものにしたり、動画視聴やウェブ閲覧時の快適な動作やバッテリー消費を抑えるといった、日常的な動作を快適にするものを指している。同社としてはベンチマークアプリのスコアだけでは数値化できない体験も、より良いものにしていく考え方だ。
確かにこのような体験は「ベンチマークアプリ」では数値化しにくいものであり、Google のアピールする「アンビエントコンピューティング」も理解できなくはない。

Geekbench 6のスコアも昨今のハイエンド端末と比較するとさほど高くない。
このようなスペック不足な点は廉価な機種であれば多少目をつぶれるが、このスマートフォンは128GBモデルでも18万円に迫る機種であることを忘れてはいけない。この価格であればGalaxy S24 Ultraや新型iPhoneの上位モデルも視野に入ってくる。これらの機種からするとPixel 9 Pro XLは大きくパフォーマンスが劣ることになってしまう。
使い勝手よし!スペック微妙!サポート長し!Pixel 9 Pro XLに17万円の価値はあるのか
まとめになるが、Pixel 9 Pro XLは単独でみれば非常によくまとまったスマートフォンだ。高いカメラ性能やAIを用いた高度な画像処理、リアルタイム翻訳や文字起こしをはじめとした強みを持ちながら、分かりやすさを重視した構成となっている点は評価できる。
今のPixelシリーズは日本でのマーケティングに特に注力しており、テレビコマーシャルにおいても「編集マジック」をはじめとした機能面をかなりアピールしている。
消費者に対して「この機能が使えるスマホ」での知名度アップを狙っている。 ここまでの部分は筆者としても非常に高く評価したい部分だ。
これ以外に強みと呼べる部分は、7年間というOSアップデート期間の長さだ。Pixel 9シリーズでは7年間のOS アップデート、セキュリティパッチ提供を明言しており、製品寿命はさておき「7年間は安心して利用できる」としている。これは中古市場での価値向上などにも影響してくる。
日本向けにもiCreackedが正規代理店としてバッテリー交換等の修理サービスを展開するなど、長く安心して利用できるような仕組みを整えている。このような意味で選ぶ価値は大いにある。
IP68の防水防塵にもしっかり対応し、日本で需要の高いFeliCaにも対応する。販路についても、直販以外に大手3キャリアが取り扱う。家電量販店やキャリアショップで実機を触って検討しやすいスマートフォンだ。
ただ、価格上昇はセンシティブな話題となった。Pixelのブランディングの変化もあり、コストパフォーマンスの高いスマートフォンから「iPhoneやGalaxyにも引けを取らないスマートフォン」へ変化した。北米ではPixel 9 Proの登場もあって本機種は実質100ドル値上げの1099ドルとなった。これはiPhone 15 Pro Maxと何ら変わらない設定だ。
その影響は日本市場にも現れる。Pixel 9 Pro XLの価格は128GBモデルで17万7900円〜と旧モデルに+2万円とより高価になった。安価なイメージが付いていたところに現実を突きつける形だが、円安の為替に加えてメーカーのブランディング変更となれば仕方ない。
Google公式ストアでは購入特典で5万100円分のストアクレジットを付与するため、実質的に12万円台で購入できる。それでも、このやり方で納得のいく方は少数だろう。
これに加えて、前述のスペック不足な点が不満点として挙げられる。確かに18万円のスマートフォンを購入するとなれば、ある程度のスペックを求めてくる方も少なくない。
Pixel 9 Pro XLは競合他社の製品に比べると体感性能で明らかに劣る。スマートフォンに対して基本的な性能の高さを求めるのであれば「Pixelはあまり選ばない方がいい」という結論に至る。
よく有識者は「最適化されていない。」「最新OS だからアプリ相性は仕方がない」と評価することもあるが、消費者からしたらそんなことは関係ない。特に前項の最適化について、Googleはハードウェア、ソフトウェア共に荒削り感ある状態で製品を出していることは否めない。
今回はハードウェアこそ高級感のある仕上がりとしたが、ソフトウェアには不安が残る。品質向上や荒削り感を抑え、全体的な完成度を高めていけば、より多くの消費者にとってプラスの方向に進化していくはずだ。


チタン製のフレームで高級感を備えた
筆者としては今のPixel 9 Pro XLに17万7900円の価値があるのか?と問われたら「否」と答える。正直なところ、iPhone 15 Pro MaxやGalaxy S24 Ultraのような「この価格でも欲しいスマホ」には至れていない。
スペックも一段劣り、ハイブランドのイメージも希薄。Pixel 9 Pro XLはストアクレジット付与後の12万7800円が妥当かと筆者は考える。そもそもこのように思われる時点で、Pixelのハイブランド化戦略はある意味失敗にも思える。
最後になるが、価格に目をつぶればPixel 9 Pro XLは長期のOSサポートと高度なAI 処理を売りにした体験重視の「Google にしかできないスマートフォン」に仕上がったと感じる。筆者も過去に色々なスマートフォンを使ってきたが、Pixel はかつての「アプリ開発者向けのリファレンスデバイス」から「AI性能を駆使した新たな体験を提供するGoogle のスマートフォン」に変わった。
単純な基本性能では他社のハイエンドスマートフォンに劣るところも多いが、それを超える音声文字起こしの精度や「音声消しゴムマジック」といった付加価値がある。動画ブースト機能も場面によっては魅力的だ。これらの機能に価値を見出せるのであれば、買いだと思えるスマートフォンだ。
長く愛着を持って使いたいスマートフォン。その1台としてPixel 9 Pro XLを検討してみてはいかがだろうか。