中国では折りたたみスマートフォンのイノベーターは大手のサムスンよりもファーウェイの方が印象が強い。今回は、制裁下ながら印象的なハードウェアで世界中に強い印象を与えた「Huawei Mate X2」を実際に手に取れる機会があったので、レビューを残したい。
隙間なく折りたためる衝撃的なスマホだったHuawei Mate X2
Huawei Mate X2は2021年のQ1に発表された折りたたみスマートフォンだ。同社初の内折タイプのスマートフォンだったが、あらゆる世界初を詰め込んで業界に衝撃を与えた。スペックは以下の通り
SoC:HiSilicon Kirin 9000 5G
メモリ:8GB
ストレージ:256/512GB
ディスプレイ
カバーディスプレイ:6.45インチ 2700×1160
メインディスプレイ:8.0インチ 2480×2200
90Hzリフレッシュレート対応
カメラ
メインカメラ:5000万画素
超広角カメラ:1600万画素
3倍望遠カメラ:1200万画素
10倍望遠カメラ:800万画素
フロントカメラ:1600万画素
バッテリー:4500mAh
55W急速充電
OS:EMUI 11→HarmonyOS 4.2
重量:295g
Mate X2のメインディスプレイは8インチの大画面を採用しているため、動画視聴や複数アプリを展開した際の操作が快適だ。当時、このサイズの端末がなかったため、かなりの存在感を示した。
閉じた状態のカバーディスプレイは21:9比率で6.45インチ。今でこそ当たり前になった比率だが、当時はGalaxy Z Fold2が縦長すぎる画面で使いにくいという意見があった中、一般的なスマートフォンのように利用できることで話題になった。

画面は普通のスマートフォンのようだ

画面を展開すると8インチの大画面。この手の製品の中でもかなり大きい部類だ
本機種はカバー画面、メイン画面のどちらも90Hzのリフレッシュレートに対応したことも印象的だった。当時はどちらかの画面が高リフレッシュレート対応だったりと不揃いなものが多かった。
そして衝撃を与えたのが「画面がピッタリ閉じられる」という点だ。この手の機種としては世界初で、ヒンジ部のメカ機構内には液体金属を採用するなどかなり攻めた仕様だった。今でこそ当たり前のヒンジ側に画面を雫型に引き込む機構が採用され、画面の折り目もかなり抑えた仕様だ。


画面をピッタリ閉じられる

画面の折り目もGalaxy Z Foldシリーズよりも目立たない
また、本体重量が295gと重量級ながら意外にも「重くない」と感じる。その理由は本体がくさび型になっており、プロセッサのある本体側と折りたたむ側の重量と厚みが大きく異なるのだ。
この方式によって、右手で持った時に重心が腕によるので展開した際は数字よりも重量感を感じないのだ。当時は折りたたみスマートフォンの薄型軽量化がまだ難しく、大型のものは300g超えるものも珍しくなかった。
ファーウェイはその難点を、巧みな設計で可能な限り軽減しようとした。単純な薄型化が難しかったことによるこの辺のせめぎ合いは、やはり黎明期の折りたたみスマートフォンと感じる部分だ。

本体は飛行機の翼のようになっており、写真では左側ほど薄くなっている。最薄部は4mmだ

画面は90度曲げられるが、フレックスモードには非対応だ

本体はガラス製の背面を採用。カラーはレビューで紹介するブルー以外にブラック、ホワイト、ピンクがある
プロセッサはHiSilicon Kirin 9000 5Gを採用。2021年Q1の時期を考えればかなり高性能なプロセッサだ。制裁が本格化した関係で、チップの供給ができなくなったこともあり、Mate X2は本プロセッサを採用する最後の端末だ。
現行機種は5G通信に対応しているのか明記されていないため、Mate X2はファーウェイのスマートフォンで「5Gに対応」した現状最後の機種だ。

高負荷な学マスも高画質で遊ぶことができる。フォルダブル端末なので発熱面で不利な点はあるが、それでも快適な部類だ。
ライカ監修4眼カメラを採用した驚異的なカメラスペック
Mate X2はカメラ性能は当時の折りたたみスマホの中では群を抜いて高性能な機種だった。メインカメラには5000万画素、1600万画素の超広角カメラ、1200万画素の3倍望遠カメラ、800万画素の10倍望遠カメラを備える。
この手のスマホでは初のペリスコープ方式の望遠を含めた4眼カメラを採用し、ハードウェア的には同社のP40 Pro+などに近い高性能な仕上がりだ。
当時の折りたたみスマートフォンはカメラ性能がフラグシップ級でないものが多かったが、ファーウェイはここも妥協しないのだ。もちろん、同社のハイエンドスマートフォンらしくライカ監修のカメラだ。

フォルダブルスマートフォンとしては充実したカメラ構成だ








標準域はきれいに撮影できる。折りたたみスマートフォンとは思えない高いカメラ性能だ


10倍望遠も光学望遠なのできれいに撮影できる



昼間はもちろん、夕暮れや夜間でも綺麗に撮影できる
55Wの急速充電に今でもアップデートが提供されるHarmonyOS
Mate X2の本体バッテリー容量は4500mAhと当時としては大容量。独自規格の55Wの急速充電にも対応している。急速充電に関しては、速度が抑え目な機種が多い折りたたみスマホの中ではしっかりと差別化されているポイントだ。

55Wの急速充電に対応する
OSはEMUI 11だったが、アップデートによってHarmonyOSが採用されている。今現在もアップデートが提供されており、最新バージョンのHarmonyOS 4.2が利用できる。
最新バージョンでは各種機能が追加され、マルチタスクの使い勝手も洗練されてきた。近年はアプリ側もフォルダブル端末に対応しはじめ、海外メーカーの機種でも利用しやすくなった

画面分割やマルチウィンドウも問題なく可能だ

HarmonyOS 4.2が利用できる


HarmonyOSの強みとして、複数端末との接続を簡単に管理できる「スーパーデバイス」もバッチリ利用できる
折りたたみスマホの「トレンド」を変えたゲームチェンジャー
今回、改めてHuawei Mate X2を触ってみて、3年以上とは思えない完成度の高さと共に、今の折りたたみスマホのハードウェアの進歩をまざまざと感じさせられた。
ある意味世界初の「全部載せ」の折りたたみスマートフォンの衝撃はすごいもので、当時は一度でも使ってみたいと思わせてくれるものだった。
さて、Mate X2は折りたたみスマートフォンにおける第一のゲームチェンジャーと評せるスマホだ。本機種の登場によって、折りたたみスマートフォンのトレンドがガラッと変わったのだ。
特に中国メーカーの折りたたみスマートフォンは本機種の登場以降は「全部載せ」と示せる構成になった。基本性能も、カメラ性能も、画面性能も。何ひとつ妥協のないフラグシップシップのさらに上の「プレミアム」なスマートフォンとして君臨したのだ。
このプレミアムラインという立ち位置を作った意義は非常に大きく、当時は試作品みたいなものから実用的な機種に進化したという意味で「折りたたみスマホ1.5」の時代が来たと感じさせられた。
今ではHONOR Magic V3、Xiaomi MIX Fold 4、vivo X Fold3 Pro、OPPO Find N3が性能に妥協のないプレミアムなスマートフォンとして君臨する。もちろん、Huawei Mate X5もこのポジションにいることは言うまでもない。
そんなHuawei Mate X2は17999元(約29万円)で販売された。今の視点で見ても群を抜いて高価な本機種は、高価ながらも中国では人気を博し、供給も少なく品薄になった。発売当初は50万円を超える価格で取引されるなど、かなり注目を集めた。
今でも中古相場は10万円〜15万円前後とGalaxy Z Fold2と同じ世代と考えれば高価だ。これは数が出ていないことに加え、中華圏のファーウェイ人気も後押ししている。
特に「5Gが利用できるファーウェイのスマホ」は中国製チップを採用したMate 60シリーズが登場しても注目されており、Kirin 9000 5Gを採用した機種の中古価格は高止まりしたままだ。Mate X2は折りたたみスマホということもあり、高価になっているのだ。
どうしてもソフトウェア、ハードウェアに古めかしさはあるが、今使ってみてもゲームなどをしなければ動作に不満を感じない程度の性能は有している。今から買うのであれば、どちらかと言えばこの機種の場合、普段使いよりもはコレクターズアイテム的な要素が強い。お勧めはしないが、ファーウェイの技術力の真髄に触れてみたい方は、ぜひいちど手にしてみて欲しい。