ゲオで販売されている「スマートウォッチに完全ワイヤレスイヤホンが付いた」という商品。アイデアとしては非常に面白く、この手の製品を本気で作ってしまったHuawei Watch Budsと言った製品も存在する。
Huawei Watch Budsのヘビーユーザーである筆者としては、それに近いコンセプトの商品がゲオで販売されているとなれば一度手に取ってみたくなるのは自然なこと。今回は「TWS SMART WATCH」実際に使ってみて、Huawei Watch Budsのサブとして使えるのか実際に試してることにする。
ゲオで税抜き5980円で買える「ワイヤレスイヤホン」を内蔵したスマートウォッチをチェック
ゲオでは近年、廉価なスマートウォッチやワイヤレスイヤホンを多く展開している。多くの製品が販売される中、今回紹介するTWS SMART WATCHのようなゲテモノも存在する。

パッケージは…安っぽい。製造元はゲオの製品ではおなじみのGREENHOUSEだ


付属品はウォッチ本体、充電ケーブル、イヤーピースのSサイズ、取り扱い説明書だ

充電は背面のマグネット端子にて行う。2時間半でフル充電できる。
このウォッチの画面解像度は240×240ドット、画面サイズは1.39インチだ。液晶画面かつ、かなりドット感を感じるので、安物感は拭えない。視野角や画面輝度は比較的良好だが、競合する同価格帯の製品の品質も向上しているので、この画面の品質は惜しいと感じる。

画面解像度は240×240ドットとかなり荒い。6000円という価格を考えても近年では荒い分類だ

バンドは安物感のあるシリコンバンドだ。22mm幅のバンドが別途使用できる

イヤホンの挿入口周りは普通のイヤホン同様だ
スマートウォッチとしては1000円並みのおもちゃ。アプリも使い物にならない。時刻と通知確認に使おう
さて、こちらのスマートウォッチだが、正直に書いてしまうと「スマートウォッチとしては最低限」すら満たせていない。同じ価格帯の製品並の機能を備えると考えで購入すると痛い目を見る。
その理由として、機能がとにかく少ないことが挙げられる。搭載機能は運動(どこまで正確に使えるのか不明)、通知履歴表示、ストップウォッチ、スマートフォンを探す、心拍数測定、血中酸素濃度測定(機能しない)…だけである。
機能の少なさは、本体設定内の項目をアイコンの量で“かさ増し“してるように感じる。アプリ欄を見ていくと、メイン項目に「日付時刻設定」「MAC」という謎の項目がある。
日付時刻設定はその名の通り、日付や時刻の設定ができる。本来は設定メニュー階層の奥底にあるような機能だ。スマートウォッチの場合、スマートフォンの時刻と自動的に同期されるため、そもそもこの機能自体が必要ないのではないかと感じる。
MACはワンタップでこのスマートウォッチのMACアドレスを表示することができる。もちろん、メイン階層には必要のない項目だ。スマートフォンで言えば、工場出荷時のホーム画面ウィジェットに、端末のIMEIが表示されるだけのものが鎮座する状況だ。

スマートウォッチのメイン画面にはおおよそ不要な項目が並ぶ
このような”かさ増し”しているアプリ項目はさておき、筆者がスマートウォッチに求める機能としては、スマートフォンとの連携性、健康管理機能(フィットネス機能)のふたつに分けられる。
スマートフォンの連携性では、本機種は電話の着信、アプリ通知の受信、スマートフォンを探すといった機能が利用できる。一応、スマートウォッチとして求められる最小限の連携性は備えていると評価したい。
一方で健康管理機能は「運動」というアクティビティリングのようなものと心拍数測定、血中酸素濃度測定が利用できる。「運動」という機能からは歩数などの測定、概算カロリーなどを表示できる。試しにXiaomi Smart Band 8を装着した状態で同じ動きをしたところ、歩数や概算カロリーの数値にばらつきがあった。正確な値を記録するという意味では信用できない。
心拍数については概ね正確な値が出たものの、他社のような常時計測はできない。測定にも時間がかかるので、あまり実用的とは言えない。血中酸素濃度については全く当てにならないクソ機能で、木の板の上に本体を置いても数値を計測していた。虚無を測定できる。

心拍数はある程度まともな数字が出る。他機種と比較しても数値的な変化はない
血中酸素濃度測定はなんと機能していなく、虚無を測定できる。Xiaomi Mi9の箱の血中酸素濃度は97%だった
スマートウォッチとしてはIP65の防水、防塵に対応しており、理論上はシャワー等であれば問題はない。実際に着用してシャワーを浴びてきたところ、時計のディスプレイはタッチを検出して派手に誤作動した。
一方で、イヤホンは取扱説明書を見ても防水の記載がなく、口を覗けばユニットが丸見えの「防滴」を有する機構も見られない。
気になってテクニカルサポートに問い合わせたところ「説明書に記載のない機能は備えていない」という。これはイヤホン単体は防水性能を有していないことを意味する。
ここで筆者はスマートウォッチにイヤホンを付けたままじゃぶじゃぶと水をかけ、シャワーを当てたことに後悔した。いまのところイヤホンは出音含め問題なく利用できているが、水辺の場面ではイヤホンを外して利用した方が良さそうだ。もはや機能そのものが本末転倒である。
ここはウォッチ本体に防水性能を備えないHuawei Watch Budsに勝る唯一の利点だ。仮に破損させても5980円であれば、「まぁそんなもんだ」と気持ちの切り替えになる。

スマートウォッチ本体を装着してのシャワーは問題なさそうだが、イヤホンの品質は保証できない
電池持ちは半日で100%から60%ほど減っていたので、実働で1.5日だ。イヤホンの充電があればもっと減っていくため実働1日と考えた方が良さそうだ。かなり持ちは悪いだろう。
スマートウォッチを管理するアプリも、本当に機能は最小限だ。特に重要な健康管理の記録はなぜか1日分しか表示できず、アプリの累積データも1週間より前のものは自動削除されるなど「健康管理」「アクティビティトラッカー」という意味では機能を放棄している。
機能もスマートウォッチ上でできることがほとんど。筆者が今までに使ってきたスマートウォッチの管理アプリの中では最も使いにくく、過去最低のクオリティと評価してもいいぐらいだ。


専用アプリ「Brand Fit」の機能は最小限。データの共有や長期保存はできない

取り扱い説明書にも「エクササイズ記録は毎週削除されます。」とある。スマートウォッチの「スマート」要素の半分くらいを放棄している
ワイヤレスイヤホンとしてはアリ?致命的な問題も
このようなスマートウォッチを見てきたが、イヤホンはどうだろうか。ここまでの様子を察すると不安になってくる。
本機種のイヤホンはスマートウォッチのアプリから特別な操作を必要とするものではない。普通のワイヤレスイヤホン同様に別途ペアリングが必要だ。スマートウォッチとイヤホンはそれぞれ別の端末と思った方がよさそうだ。

取扱説明書には別途接続が必要と記載がある
ひとまず、スマートフォンに接続して音をチェックしてみると、思った以上にまともな音が鳴っていることに驚く。サウンドバランスは低域と高域を盛った「ドンシャリ」に近いが、明らかに低域の方が強く抜けの良さはない。
それでも下手な3000円前後のワイヤレスイヤホンよりはまともなサウンドであり、スマートウォッチの付属品のイヤホンと考えれば、予想以上のクオリティだ。
正直、このスマートウォッチで評価できる部分はこの点だけであり、カタログ上ではSBCにしか対応しないコーデックも、Androidスマートフォンに接続してみたところ、なぜかAACで接続されていた。

イヤホンは小型、軽量だ。

説明書では対応しないと記載のあるAACコーデックに何故か対応する
イヤホン本体にはタッチセンサーが備わっており 再生停止などの操作ができる。センサーの感度はあまり良くないが、過度なストレスも感じない。本体が小さいため装着感は非常に良好だ。その一方、イヤピースはMとSサイズしか付属しないため、耳穴が大きい方は低域が抜けてスカスカな音になってしまう可能性がある。
イヤホン本体での音量調整はできないが、これはスマートウォッチ側で行うことができる。バッテリ持ちは2時間前後(公称2.5時間)と、Huawei Watch Buds並みだ。音量調整機能さえ備わっていれば、この部分だけは文句なしの商品だった。
その一方で、イヤホン側にも致命的な難点がふたつある。ひとつは、接続時のガイダンス音声の音量が通常のイヤホンに比べて大きめであること。もうひとつがイヤホン本体に左右の表記がなく、ウォッチに収容する際に左右逆にしても物理的に収容、充電ができてしまう点だ。
1つ目のガイダンス音声の音量の大きさはかなり気になった。筆者は通常の人よりも大きめの音量で音楽を聴く傾向にあるが、それでもうるさいと感じるレベルの音量だった。一般の方からしたら、あまりのやかましさにイヤホン外してしまうような音量だ。
しかも ガイダンスの音量はアプリで調整できるものを除いて、原則調整することができない。こればかりは、ガイダンス音が鳴ってから耳に挿入する運用面での対策が必要だ。
もう一方の「イヤホンの左右の表記がわからない」点は意外にも致命的だ。基本的にイヤホンは左右の表記があるものが大半だ。Huawei Watch Budsには左右の表記がないが、この機種はイヤホン内にセンサーを備えており、左右の区別を自動認識してくれるので、表記は必要ないのだ。

この辺りはファーウェイの方が洗練されている
本機種の場合、技適マークのある面を文字盤側に合わせ、上側が左、下側が右のイヤホンとして認識される。これを覚えれば問題なく運用できる。
慣れてしまえば困らないが、初心者にはかなり分かりにくい。筆者もこれに気付くまで幾度か左右の区別が分からなくなってしまい、その都度アイドルマスター ミリオンライブのジュリアの楽曲「プラリネ」を再生して左右を確認する始末であった。

イヤホンは文字の記載があるかを文字盤側にし、上が左下が右として認識される

プラリネは冒頭のギターが右チャネルのみから再生されるので、イヤホンの左右の区別を判別するのには適している
前述の通り、イヤホン側はIP65の防水、防塵に対応していない。ただ、メーカー仕様にはないコーデックに対応していることを踏まえ、「もしかしたら防滴性能を備えているのではないか」という希望的観測をしたい。実際にシャワーを当てた筆者的にはそうであってほしい。
これはスマートウォッチではない。腕に巻ける画面付きワイヤレスイヤホンだ
まとめになるが、筆者としてはこの商品をスマートウォッチと評価するにはかなり厳しいと感じた。精度が悪く、ログの保存が1週間しかできない健康管理機能、おそらく使えるであろう心拍数測定、虚無を測定する血中酸素濃度測定と…これをスマートウォッチとして評価していいのか微妙なラインだ。
ワイヤレスイヤホンが付属しているとは言え、スマートウォッチの機能としては中華通販で50元前後で売っている激安謎スマートウォッチ…のような何かと変わらない。
筆者はこの商品を「腕に巻ける画面付き完全ワイヤレスイヤホン」と評価したい。収容ケースにディスプレイ備えた完全ワイヤレスイヤホンはJBLの製品を始めいくつか存在している。
筆者も、この手の機種を実際に使ったことがあるが、ワイヤレスイヤホンに画面があると意外と便利で、アプリを利用できない環境でもイヤホンの設定がグラフィカルでわかりやすい利点があった。
スマートフォンの通知表示機能などを備えたものもあり、用途によってはスマートバンドの代替えに近いこともできるのではないかと感じたぐらいだ。
今回の商品は、まさにそんなところを突いたと考える。スマートウォッチとしての機能は絶望的にダメでも、スマートフォンの通知を受け取るサブディスプレイを備えた完全ワイヤレスイヤホンと考えれば納得できる部分も多い。むしろそう使うのが理にかなっている。
筆者としては「スマートバンドとの併用」が良さそうだ。頭のおかしいことを書いたかもしれないが、スマートフォンの2台持ちがあるなら、スマートバンドの2台持ちだってあってもいいだろう。使い物にならない健康管理機能は他社のバンドに任せ、イヤホンを腕に巻くと考えれば少しはスマートに使えるかもしれない。

これが筆者なりの最適解だ。
筆者としては今回のゲオのワイヤレスイヤホン内蔵スマートウォッチは「買わない方がいい」の部類に入る。腕に巻けるワイヤレスイヤホンが欲しい方を除いて買う必要はないだろう。
別途スマートバンドを用意して「分担」して使う2台持ちという使い方がオススメだが、こんなことをしてまで使う必要はないだろう。素直にスマートバンドとワイヤレスイヤホンを買ったほうが良い。
こんな2本巻をして機能面を補うとやっとHuawei Watch Budsの背中が見えてくる。それでも接続性や端末、アプリの完成度を踏まえると、決して追いつくことのできない差を感じる。
ゲテモノコンセプトながら驚異的な完成度を誇るHuawei Watch Budsの代替えとして、5980円のTWS SMART WATCHを使うのはかなり難しいと思った方が良い。筆者としては「無理だ」と言っておこう。
それでも税抜5980円という価格なら、まぁ許せてしまうところもある。Huawei Watch Budsの1/10以下の価格だが、機能は1/20と言ったところ。ここを踏まえた上で、血迷って買うならアリだろう。使えないのではない。この手のゲテモノ要素の強いおもちゃの使い方は使用者が考え、楽しいと思えるプラスな使い方を見つけてみよう。