日本でも発売されて注目を集めるソニーのXperia 1 VI。画面解像度やアスペクト比の変更に加え、多くの機能が改善、強化されたことで大きな注目を集めている。
今回はオープンマーケット版をを入手しての実機レビューだ。Xperia 1シリーズとしては6作目となるこの機種。筆者も初代からずっと使ってきているので、今作も期待して購入した。
写りも操作性も大きく進化したカメラ!新機能のテレマクロ撮影が楽しい!
まずは、Xperia としても力を入れているカメラ性能についてチェックしていく。このXperia 1 Vのカメラについて簡単に書くと、以下のようになる。
超広角16mm f2.2
広角 24mm f1.7 Exmor T for mobile
望遠 85-170mm f2.3-2.8
特徴は前作同様のExmor T を冠するメインカメラだ。このカメラに採用されたイメージセンサーは「2層トランジスタ積層型画素」を採用したもので、従来の積層型CMOSイメージセンサーをさらに発展させたものだ。
仕組みとしては従来は画素内に並列配置されていた「トランジスタ」と「フォトダイオード」を積層化し、それぞれを最適化、大型化させることに成功。限られたスペース内で性能を向上させることが可能になった。
Xperia 1 VIのセンサーは5200万画素(有効画素4800万画素)、1/1.35型のものとなっており、従来からセンサーサイズも大型化している。それ以外の構成はXperia 1 IVと同じく超広角カメラ、換算85-170mmの間でフレキシブルに可変できる機構を採用した望遠カメラだ。レンズにはXperia 1 Vに引き続き、反射を抑えるZeiss T*(ティースター)コーティングも抜かりない。
特徴的な3眼カメラのXperia 1シリーズ

Xperia 1 Vと比較してもカメラユニットが大型化している
Xperia 1 VIのメインカメラでは、秒間30コマの連写及び高精度なトラッキングが可能だ。これは、他社のカメラ性能特化のスマホでも備わっていないものであり、Xperiaが持つ唯一無二の特徴だ。
そして、今作最大の特徴のひとつが「カメラアプリの一新」だ。従来はPhoto Pro、Video Pro、Cinema Proの3つに別れていたカメラアプリがXperia 1 VIではひとつに統合された。従来のアプリが分かれていて「どれを使っていいのか分からない」という声に応えた形だ。
操作画面は一般的なスマートフォンのカメラアプリの表示に近づき、スマートフォンとしては使いやすくなった印象だ。従来までのPhoto Pro的な要素はプロモードに内包されており、Xperia 1 Vで注目されたクリエイティブルックなどの機能はこちらに含まれている。

写真モードは一般的なスマホと同じだ

プロモードは従来のPhoto Proの機能が内包されている
一方で、撮影設定の呼び出し(表記MS)モードがなくなっており、基本的にはオートモードで撮影しつつ、必要に応じでマニュアル撮影を行う方向にシフトしたと考える。
動画撮影はかなりスッキリし「動画」モードのみになった。商品撮影モードやクリエイティブルックなどの機能は引き続き備える。動画では撮影中の露出やフォーカスの調整はもちろん、24fpsでの撮影やS-Cine Toneでの撮影、ライブ配信も行える。シューティンググリップやV-log Monitorと言ったXperia向けの周辺機器も利用できる。
一方で最も削がれた点もこの部分で、Video Proのプロ向けカメラを意識した操作画面やファンクション設定、入出力音声ゲインレベルの設定はできない。また、Cinema Proに備わるフィルター(LOOK)や色温度をカスタムしてプリセットにするモードも利用できない。

動画撮影モードはシンプルになった。こちらではクリエイティブルックのほか、映画のような質感で撮影できるS-Cine Toneが利用できる。
動画撮影は4K 60fpsまでの設定であれば全レンズ撮影中に切り替えが可能だ。一方で動画撮影時のズームの挙動がカメラのズームのようにじわじわと動作するチューニングがされている。iPhoneやGalaxyではキビキビと動作するため、この辺りは好みが分かれそうな印象だ。
以下、Xperia 1 VIでいくつか撮影してみた。基本的にオートモード、もしくはマニュアルモードの「P」モードにて撮影している。従来よりもアプリ周りは一新され、撮影するのはとても簡単になっている。







標準カメラでは過度に彩度を盛ったりすることなく、Xperiaらしい「黒がはっきりとした」印象で出てくる。こちらは前モデルからほとんどイメージが変わらない点は感心させられる。
特にイメージセンサーの有効画素が4800万画素となったことに加え、インセンサーズームも利用できるようになった。これによって従来よりも2倍望遠時でも解像感をしっかり残せるものになった。





2倍望遠もよりきれいに撮影できるようになった
望遠カメラに関してはXperia 1 Vと比較してより望遠域が強くなったことはもちろん、夜間でもピンポケや手ブレしにくくなった印象だ。
望遠端が170mm相当へ伸びたこともあり、より遠くの被写体への撮影には強くなった。加えてAI超解像ズームの性能が向上しており、花弁を撮影したもの(10倍望遠)でも条件が良ければ劣化をあまり感じない。

85mm

170mm
それぞれの倍率だが、光学式の連続ズームのため劣化はほとんどない




望遠カメラの解像感も向上した。近年の機種では光学170mmクラスの画角を持つスマホはなく、クローズアップして切り取るような作例も簡単に撮れる



連写性能を活かして飛行機などの高速で移動する被写体の撮影も行いやすくなった



超広角撮影に関しても、以前よりHDR処理が適切に作用してくれるようになった。ハードウェアは同じでも、プロセッサの性能が上がるとしっかり反映される形だ。
夜間でも以前に比べ綺麗に撮影できるようになっている。夜間モードは写真モードとプロモードで設定から「コンピュテーショナルフォト」の項目をオンした場合のみ利用できる。夜間モードはかなり暗い場面でしかオンにならないこと、メインカメラ以外では利用できない点には注意が必要だ。




夜間モードは引き続きかなり暗い場面でしか作用せず、都市夜景程度の明るさでは切り替わらなかった。この辺りをせめてiPhoneのように手動調整できたり、強制ONにできるようになるとより良い製品になるはずだ。
マクロ撮影は新たなアピールポイントだ。望遠カメラを用いて被写体に4cmまで寄ることができる。今まで撮影できなかった小さな被写体もクローズアップして撮影できるなど、スマートフォンの撮影の幅が広がる機能だ。
一方で専用設定で撮影するため、通常の望遠カメラの使用方法ではここまで被写体に寄ることはできない。フォーカスもマニュアルとなるため、撮影するのは比較的難しい。この辺りはこだわりを持って追い込んで使っていきたいところだ。


被写体にここまで寄れるテレマクロ撮影だ





撮影してみると、スマートフォンとしては異次元レベルでクローズアップができる。カメラ特化でも他社の製品ともしっかり差別化できている。
現時点でマクロ撮影が強い機種は海外メーカーをみてもvivo X100 UltraやHUAWEI Pura70 Ultraなどに限られる。これらの機種と体験的にはいい勝負ができる反面、挙げた機種はオートフォーカスでかつ、AI補正もがっつりかけてくる。
特にHUAWEIのPura70 Ultraは恐ろしくシビアな条件でも簡単に撮影できるなど、総合面ではまだ上がいることもまた事実だ。Xperiaもまだまだ進化の余地がありそうだ。