
最近増えてきましたね。高音質なスマートフォン。そんなものを通り越したとんでもないのが出てきました。ONKYO DP-CMX1 GRANBEATのレビューです。

見た目は音楽プレイヤーだ

端子は3.5mm以外にも2.5mmバランス端子を搭載

ボリュームはロータリーボリュームとなる

操作系は独立したスイッチで、誤操作防止のHOLDスイッチも備える

スマートフォンなので、電話もできちゃうし、Google Play入ってるのでゲームもできます!
バランス出力対応の音質特化お化けスマホ
なんと、このスマートフォンは音響用の基板がディスクリート仕様となっている。いわゆる、オーディオ回路は別回路っていうものになる。音響的に考えるとスマートフォン自体が常に電波を発するのでノイズの原因となる。なので、このノイズを減らそうと色々各社工夫するわけです。
このGRANBEATでは ノイズシールドに加え、オーディオ基板の別回路化でクリアな音を実現している。本来なら販売価格10万円クラスの高級音楽プレーヤーが行ってる手法なので、スマートフォンでオーディオ専用ディスクリート基板は変態とも言える。
音響ハードウェアの核となるDAC、アンプをそれぞれ各チャンネルごとに2機搭載している。DACはESS社製の「ES9018C2M」アンプは「SABRE 9601K」をそれぞれ採用しているのだ。正直言ってこれは音楽プレイヤーと同じと言うか、ハイエンドポータブルプレイヤーに近しいシステム構成だ。
この構成もあってPCMは32bit/384Khz、DSDは11.2MHzのネイティブ再生が可能だ。特にDSDのネイティブ再生はハイエンドプレイヤーでなければできないもの。スマホにはオーバースペックとも言える変態構成。なぜDACとアンプを2機ずつ積んでるかは、バランス接続をするためにあるのだ。
実は世界初のバランス接続対応スマホとなるのだが、一般のスマートフォンにはまずない端子だ。バランス駆動はGNDを持たない駆動方式となり、一般の接続(アンバランス接続)はL ch R ch GNDとなっている。GNDには若干ながら左右の信号が入り混じった状態となるので、クロストークノイズが発生し、ステレオ感が低下する。
これがバランス接続ではL+ ch L- ch R+ ch R- chの構成となる。これで左右の信号が完全に分離するので、よりステレオ感のある定位となるのだ。加えて、駆動力も上がることからハイインピーダンス機。音量の取りにくいマルチBA機や、ハイブリッド型でも扱いやすくなる。
バランス端子は2.5mmとなり、数多くのメーカーで採用されている規格。音楽プレイヤーとしての推しが強い本機。搭載しているボリュームは異例の63段となる。加えてボタンではなく、ロータリーボリュームとなっている。スマートフォンでは数少ない構成だ。
標準プレイヤーはハイレゾ音源でなくても楽しめる構成だ。この機種にはアップサンプリング機能が付いており、ハイレゾ相当に拡張して聴くことができる。ハイレゾ音源のラインナップが増えたとは言え、CD音源には及びません。そんな音源もハイレゾ音源相当にアップスケーリングする機能だ。どちらかと言えば、ウォークマンやXperiaで馴染みがある方はDSEEに近いものと考えましょう。
音質最強スマホ!スマホのレベルを超える高音質に驚く
ここからが本題です。GRANBEATの音を聴いた第一声は「しゅごい」だった。「これがスマホの音なのか」と思わせるくらい音が良いのだ。音の良さをアピールする並のスマートフォンなんかとは別次元。さすが高級プレイヤーと同様の設計なだけある。
ピアノの鍵を叩く音、フットペダルを踏む音がしっかり出てきます。安価な機種では再現できずに潰れてしまう部分なのだが、DP-CMX1ではしっかり聴き取ることができた。スマホでこの解像感はちょっと普通じゃない。EDMは低音域が潰れたりせずローまでしっかり出てくる。
感想は「音の洪水」まさにリッチモードな音質だ。アンバランス、バランス共に分解能が強いタイプだが、決定的に違う点は、普通のスマホより遥かに音量が出る。具体的にはハイエンドポータブルヘッドフォンなら問題なく鳴らせる。
アンバランス 75mV バランス 150mV(いずれも16Ω)の出力は強く、鳴らすのが難しいマルチBA機も問題ない。また、アップコンバートで既存音源がより魅力的に仕上がるこの機能はホントにありがたいものだ。特にハイレゾがまだ少ない打ち込みジャンルなどでは助かる。
スペックはミッドレンジ。スマホとしてもそこそこ使える
GRANBEATのスマートフォンとしての基本的なスペックは以下のようになる。
SoC Snapdragon 650 6コア
RAM 3GB
ROM 128GB
画面 液晶 5インチ 1920×1080 FHD
カメラ フロント 800万画素 リア 1600万画素
バッテリー 3000mAh
スマートフォンとしてみればいたって普通。プロセッサはSnapdragon 650、メモリは3GBと音楽プレイヤーとしては高性能。スマートフォンとしても思ったより性能は悪くない。おおむね2015年ごろのハイエンド機並の性能と言える。
カメラは1600万画素となる。イメージセンサーははソニーのIMX298を採用し、チューニングは富士通ということもあり比較的マトモだ。ネットワークはDSDSにも対応しており、2枚のSIMを用いた排他運用も可能。いまだとZenfone 5(2018)やP20 lite並の性能でしょうか。
GRANBEATのメリット、デメリット
メリットととしては、スマホ史上最高音質であることだ。加えて、バッテリーが3000mAとあるため、バランスで20時間という脅威のスタミナを実現している。ワイヤレスオーディオもaptX HDという高音質コーデックに対応してる。
デメリットはOSバージョン、アップデートは消極的な点だ。これについては、先日のポタフェスでONKYOの担当者さんに聞いてみたのですが、後継機やアプリアップデートの予定は今のところないとのこと。ただ、GRANBEATが好調であるのは確かであるので、メーカーは「今後も期待して欲しい。」とのことだ。
OSアップデートは安定性向上のため実施しないと公言されているため、期待はできない。ただ、スマホである以上は、セキュリティパッチの配布はしてほしい。
実はGRANBEATはワイヤレス機器との相性が悪い。これは音質特化のフルメタルボディが仇になっていると考える。この界隈では割と有名な話で、そもそもこの機種でワイヤレスで聴くのが間違いとも思いますが…
スマホとしては物理的に重い点もマイナスだが、これは考え方次第だ。スマホとして見たら234gは重量級だが、音楽プレイヤーやポータブルアンプをスマホとだき合せたらどうでしょう。恐らく、こちらのほうが軽いですし、アンプの雑多なケーブルなんかは無いのでシンプルにいけます。なお、ソニーのXperia XZ2 Premiumがそれより重い236gとか…触れてはいけないようだ。
GRANBEATは異次元のサウンドを楽しめる唯一無二のスマートフォン
まさにこいつのポジションは唯一無二の言えるものだ。LGやZTE、ソニーから「音」にこだわった機種は確かにあった。ただ、ここまで「音」にパラメータを極振りしたスマートフォンは存在すらしないものだった。そしてこれを迷機や変態で片付けていいのか分からないくらい、高い完成度にまとめ上げている。
一般にみてもおかしいスペックであることは間違いないが、この手の変態端末はとがってるが故に、携帯電話としての何かを失っている機種のほうが多い。たとえば、史上初のWindows 7ケータイことF-07Cはスマホのさきがけ…というかロマンの塊のような携帯電話がある。PCモードではメーカー公称で2時間しかもたないのがそれを物語ってます。
2画面端末のZ-01Kはアプリの最適化が追いつかない、電池持ちが悪いなど…何かに変態的に特化してしまった結果。携帯電話として使いにくくなってしまったものが多いのだ。そんな中でも、このGRANBEATは普通に音楽プレイヤーとスマートフォンを1台にまとめたい方にオススメできてしまう。
そして、電池持ちのよい音楽プレイヤーとしてもおすすめできる端末に仕上がっている。スマートフォンに音を妥協したくない方はベストバイと言える機種となるはずだ